第79話 買い物の帰り道


さて、生まれた町よりも更に何一つ良い思い出がないこの街だが、まさか、こんなに早く再び来ることになるとは…


まぁ、買い物して直ぐに帰るから滞在する気はサラサラないのでトットと用事を済ませる。


スキルショップで武器に付与する用のスキルスクロールをまず買う。


アゼルの槍用に中級風魔法の〈バースト〉という圧縮した空気を爆発させる魔法で槍と組み合わせて内部からの破壊を狙うらしい。


メリザの杖用には〈集束〉という魔法の効果を一点に集めて打ち出すスキルで、範囲は狭くなるが威力が上がるスキルを杖に付与することにより本人は魔法に集中しながら自動的に威力を上げる様にすることができるらしい、


俺も追加で便利そうだから集束スキルを購入して、並列思考スキルがあるから俺は武器に付与ではなくて自分が取得して使うことにする。


そして、ドラゴン討伐のお祝いに、


アゼルとメリザに


〈テイマー〉と〈アイテムボックス〉のスキルを買ってあげた。


『これで卵が孵化しても大丈夫だろう』


それと、頑張った二人の取り分として予算一人大金貨十枚で好きなスキルを購入することにした。


俺もテイマースキルを取ろうかな?と思ってペアさんに相談すると、インセクトテイマーもテイマーも従魔の枠は共通だから、あまりお得ではないと言われた。


残念、〈ワイバーン騎士〉というフレーズに中二心が騒いだのだが…

まぁ最悪、マサヒロとドッキングして〈ポルターゼット〉になれば飛べるから良いか…という事で我慢した。


今回のビックリ臨時収入は卵の売却も合わせて大体百枚…アゼルとメリザをメインに装備とスキルに半分使って、半分は山の購入に貯金にまわす。


アゼルはペアさんと相談して、何やら真剣な顔で選んでいるし、メリザはアホみたいに強い魔法の棚を物色している。


何を買うかは二人に任せよう。


俺も、目当ての魔法スキルを探し、大金貨五枚のお高いスキル、回復魔法の〈ライフヒール〉と、毒や、麻痺、病気、呪いなどを治す〈クリア〉を買って終了した。


これで、兄弟たちの怪我も病気もガッチリサポートできる。


『あの時メリザにあげた回復魔法を悔やんでいたからではないんだからねっ!

あと、クリアは、ミヤ子の粉を間違って被った時用なんだからねっ!スッゴイ怖かったんだからねっ!!』


という事で、アゼルもメリザも思ったスキルが手に入ったらしくニコニコしている、


この後の予定はガラクタ市場に向かうだけだがアゼルとメリザは、


「早く孵化させたいからクマ五郎と馬車で卵温めとくね…」


と、言っている。


もしも今日辺り孵化しても良いようにガラクタ市場に行く途中で、新鮮で柔らかい生肉でも仕入れとくか…

と、思いながらペアさんと二人で、ガラクタ市場に向かった。


ペアさんの相変わらずの、交渉術に感心しながら、


『あれもスキルとかなら俺も欲しいよ…』


などと思いつつ買い漁った商品をアイテムボックスにしまっていく。


流石に二回目という事で以前の様に置いて行かれそうにはならずに間近でペアさんの、


「親っさん、知ってるんだよ…裏にもっと良いやつ隠してるんだろ?

出せよ、出して楽になりなよ…まとめて買うからさぁ。」


と、良い宝珠を見つけたらしく店主と交渉?をしているのを見学している。


やっぱりペアさんの買い物は見ていて飽きない。


そして買い物も終わり、あとは逃げ…いや、帰るだけだ。


この街に居てもろくな事にならなそうだし、クマ五郎キャンピング馬車で、さっさとミルトの街に戻ることにした。


有難い事に、卵を温めるのに夢中で、アゼルとメリザが、


「観光したぁーい」


とか言わなかったのでスムーズに帰路につけた。


また二週間の馬車旅だ。


特に楽しみもなく俺達は移動、キャンプ、移動、キャンプを繰り返す。


そんなある日のキャンプ中、キャンピング馬車の中で眠っていると外で寝ているはずのクマ五郎が、


〈王さまぁ、起きてぇ、大変だよぉ。〉


と、俺を呼んでいる。


馬車から降りて、クマ五郎を見ると…何かに抱きつかれている様で、


〈やっとみつけた!もう離さない!!〉


と、寝ているクマ五郎にしがみつき頭をグリグリしている灰色の塊。


クマ五郎は寝込みを襲われたらしくて、


〈離してよぉ、〉


と、モゾモゾしながら逃げ出そうとしている。


『もう、何がどうなったているのか?…』


俺が、クマ五郎にしがみついている灰色の腕が四本の熊に、


「あのー、ウチのクマ五郎が、ビックリしていますから、一旦離してお話しませんか?」


と、話しかけると、


そこではじめて俺が居たことが解ったようで、


〈はっ!えっ?王さま…ですか?〉


と、聞いてくる。


『どんだけクマ五郎に集中してたんだよ…』


と、呆れながらも俺は、


「驚くよりも先に、離してあげて欲しいな」


と、改めて言うと、灰色の熊はユックリとクマ五郎から手を離して、そのままのスピードで流れる様に土下座をする。


〈王さま、彼とのお付き合いをお許し下さい!〉


と、頭を下げる熊だが、ビジュアル的には土下座と言うより熊の敷物だ…


『あれだな…クマ五郎も出会った時に土下座してたし、あれかな?フォースアームベアーさんの習性かな??…土下座は…』


とアホみたいな事を考えている俺に灰色の熊は、


〈何年も探し回って初めてなんです…四本腕の熊にやっと会えたんです…

恋の季節になっても私だけ同じ四本腕の熊が見つからずに…私だけ…私…だけ…〉


と、泣き出した。


寝込みを襲われて、慌てていたクマ五郎もようやく〈ベアハッグ〉を仕掛けて来た襲撃者を確認し、


〈仲間だったんだなぁ!〉


と驚いている。


クマ五郎も仲間を探してたし…四本腕の熊はレア魔物なんだろうな…


その後は、若い二人におまかせして本人同士で話し合ってもらった。


結局、二人共に仲良しになったので、


翌朝改めて〈クマ美〉と名付けて我が家の仲間に入ってもらう事となった。


やはり、といえばそうなのだがクマ美も四本腕のシロクマに進化して、我が家は四本腕のシロクマが二頭になっていていて、馬車から起きてきたアゼルとメリザが驚いていたが二人は直ぐに馴れたようで、


メリザは、


「モフモフが二倍だぁー!」


と喜んでいたが…クマ美の加入でセミ千代がヤキモチ焼かないかな?…親びん大好きだから…は

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