第78話 倒した獲物の使い方


とんでもない遭遇戦で俺達は何とか勝利を納めた。


戦果としては、

ドラゴン1体

ワイバーン20体

ドラゴンだった物 1

ワイバーンだった物 40程、

あとは食い散らかされたワイバーンの残骸は…どうしよう?


まずは、ドラゴンとワイバーン20体は持って帰るとして、


〈だった物〉もどうしよう?


そもそも触って大丈夫なの…アレ…


ミヤ子の作戦エリア近くに居た俺も紫色の煙をだして死なないか不安になったので念のためクリーンの生活魔法をかけて暫く様子を見たぐらいである。


『あんな大技を使って疲れて休憩中のところ悪いけど、ミヤ子に来てもらうしかないな』


という事で、ミヤ子を召喚してみると、彼女は一休みしたからか少し元気になっており、


〈王様、何かご用でしょうか?〉


と聞いてくる。


俺は、グニョグニョのドラゴンだった物を指差して、


「あれなんだけど…」


と、聞くとミヤ子は指の差す方向を見るなり、


〈煙が消えたら、食べ頃ですわよ〉


と答える。


『…食べ頃…とは?』


と、俺が首を傾げていると、ミヤ子は〈るんる、るーん〉と鼻歌を歌いながらドラゴンだった物にヒラヒラ飛んで行き、ドラゴンの皮の小さな傷口からホースの様な口を差し込み…


〈ごっくん、ごっくん〉


と…


『 ……?……えっ!イヤァァァァァァ!飲んどるがなぁぁぁぁ!!』


と俺が声にならない心の叫びを出しながら見ていると、


〈ミヤ子先輩、僕も良いですか?〉


と、マサヒロまで〈ごっくん〉しだした。


まぁ、キリギリスもトンボもおっさん食べてたし…解るんだよ…魔物だからお肉くらい食べるって…お口小さいから溶かしてから食べるってのも解るんだけど…

いざ、見せられると…引くわぁ~。


『ガタ郎達も遠巻きに見ているので、流石にあれは食べないみたいだな…』


と、仲間の食の好みについて少し考えていると、どうやらお腹いっぱいになり元気も出たらしいミヤ子に、


「あの皮とか使える?」


と聞くとミヤ子は、


「鱗、角、爪、骨は普通に使えますわ。

皮は防御力は少し落ちますが伸縮性はかなり上がっているはずですわよ」


と、答えてくれた。


たしかに、溶けた中身がしとかりと中にキープされているので、皮は伸び縮みするようだ。


『中身を捨てれば使えるかな?』


という結論に至り〈だった物〉は、皮と爪や角に歯等にクリーンをかけて、アイテムボックスにしまい、食べかけのワイバーンは…


『魔石だけでも抜くかな…』


と軽く解体して回収出来る素材もチョチョイと回収したのだった。


結局、百近い群れは壊滅状態で残ったワイバーンも巣を放棄して飛び去った。


暖める者も居なくなり残された巣にある卵はアイテムボックスに入る物と、孵化寸前でアイテムボックスに入らない物が2つ有った。


仕方ないのでその2つはクマ五郎に抱き抱えてもらい森を出る事にした。


とりあえず、森の入り口まで歩きで移動するのだが、ノーラさんが待ってるかもしれないので飛行ユニットの〈マサヒロ〉とチャイム係の〈セミ千代〉は送喚して、コブンだけは三日間だけ索敵係としてついてきてもらうことにした。


ミヤ子も回復の為に自宅待機で再び送喚して残りのメンバーで森の入り口まで歩いた。


正直なところ、


『ドラゴンを倒したぞぉ!』


といった喜びより、早く帰って暫く休みたい…というのが本音であり、帰り道は俺達だけでなくガタ郎達も口数少なかった。


馬車移動にかわり、アゼルとメリザは、ワイバーンの卵を一人一個抱き抱えてミルトの街まで帰った。


ゴング爺さんに素材を見せると、


「誰がドラゴンを取って来いって言った?!ワイバーンでも凄いんだが…まぁ、よく倒せたな!…」


と、驚き半分呆れも半分で語っていた。


ゴング爺さんは、


「予定変更だ、ドラゴンの皮と鱗、爪と牙、角と魔石、あとその柔らかいドラゴン皮は売らずに持って来てくれ。

ワイバーンの、皮と爪と、柔らかい皮はウチで買い取るからこれも売らずに持って来てくれ。

あと、追加でミスリルを購入するから、ワイバーン皮の支払いと相殺するがいいか?」


と言って来たので、


「了解」


俺はとだけ伝えて冒険者ギルドに向かった。


クレモンズさんに、


「ワイバーンの巣にドラゴンがワイバーンを食い荒らしにきましたので、ワイバーンはもう、一匹も居ません。」


と、報告したら驚いていた。


ギルマスのクレモンズさんは、


「それは無駄足をさせたね…ワイバーン狩りは駄目だったんだろ?」


と申し訳無さそうにしていたので、ワイバーンを沢山倒してきたと告げると、


「ドラゴンのうわまえをはねたのかい…凄いな…」


と感心してくれたので、ついでに倒したドラゴンの素を見せるとクレモンズさんは腰を抜かす程に驚いていた。


解体料を差し引いても、ドラゴン肉に、血や、肝や、心臓…目玉は生憎クマ五郎の爪でえぐられていたが、ワイバーン肉にワイバーンの魔石だけでも大金貨50枚近くになった。


ドラゴンの新鮮な血・肝・心臓は錬金術の素材になるし、肉は貴族がパーティーの主役として買い付け、ワイバーン肉は少し高級な肉として街の肉屋に卸される。


鎧の素材分の皮や鱗等を全て売れば、軽く大金貨百枚以上になっただろう…


そして、驚いたのが卵だ。


特別依頼という枠で、騎士団から〈ワイバーン騎士用のワイバーンの卵の納入〉という依頼があり、


有精卵一個で、大金貨5枚で個数制限無しという依頼が有った。


回収していた10個の卵を売って、アイテムボックスに入らない2つは、アゼルとメリザが愛着がわいてしまい、


「売らないで!」


と言い出したので、売らない事にした。


〈テイマー〉のスキルスクロールがあれば、二人の遠征用の足になるかもしれないし…良いかな…との判断からだ。


凄い買い取り金額をてにして、解体も済んだので素材をゴング爺さんにの工房に渡すと、


ゴング爺さんは、


「他の冒険者が驚くほどの鎧を作ってやる!

タッグのやつも、予定変更で、ドラゴン素材とミスリルの武器にするそうだ。

ペアさんは付与の数が変わるし買い出し前で良かったと言っておったぞ。」


と笑いながら言っていた。


俺は、こっそりビューティーさんに、〈守りの腕輪〉と、〈魔力の腕輪〉を一個ずつアゼルとメリザの為に注文し金貨十枚を預けておいた。


すると、ビューティーさんは、


「ポルタ君のを二人に渡してあげて、

ポルタ君用にドラゴン素材と合わせてえげつないの作るから!」


と張り切っているので、


「預けた金額全部使うつもりでやっちゃって」


と、お願いしておいた。


ペアさんは明日から早速、付与するスキルとビューティーさんからの依頼の宝珠の買い付けに、帝都に向かうらしく、俺的にはあまり乗り気はしないが、品揃えのいい帝都に行かなければ揃わない物も有るので、


「仕方ない…」


と諦めて俺達も、ペアさんと帝都に行くことになったのだった。

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