第77話 ドラゴンとの遭遇戦


出会ってしまったカップルドラゴンさんはドラゴンの中でも弱いとされている、緑色の〈グリーンドラゴン〉だが、勿論ブレスも吐くしちゃんと固い…


多分、メスのドラゴンに良い格好を見せたくて、一匹で全てのワイバーンを相手にしているイキりドラゴンを俺達は可能な限り身を低くし息を殺して空で行われている怪獣大決戦を見守っている。


ワイバーン達もただ殺られている訳ではない、数に勝るワイバーン達は〈強い俺を見とけ!〉とイキり散らかしているグリーンドラゴンに取り付き、翼膜を破き、鱗を剥ぎ取り…命をかけた攻撃を加えている。


攻撃を加えられて怒ったグリーンドラゴンに噛み砕かれ、ブレスで倒され、地面へと落ちていくワイバーン達…


もう一匹のドラゴンは落ちたワイバーンを上で行われている戦いなど気にせずにムシャムシャと食べている。


傷つきながらも、


〈まだ食べるぅ?〉


みたいに余裕の雰囲気で移動しながらワイバーンを落とすドラゴンと無感動にワイバーンを食べるもう一匹のドラゴン…


仲間や家族を殺された何十匹のワイバーンが敵討ちに巣から飛び立つ…


『どうしよう?…逃げるなら今だけど、ワイバーン素材は欲しいし…』


などと考えているとミヤ子が、


〈王様、いつ仕掛けます?〉


と、やる気十分だ…


『えっ?やるの!?ドラゴンだよ…』


と驚きながらも俺が、ミヤ子に


『ドラゴンだよ…大丈夫?』


と心の中で聞くとミヤ子は、


〈麻痺状態にするのは難しいですが、殺す事は容易いです。

その代わりドラゴンの肉もワイバーン肉も利用価値が無くなりますが…〉


と何やら怖い事を言っているがこうなったらヤケクソだ混戦に乗じてドラゴンもやってやる!と腹をくくった俺は、


「ミヤ子は暴れているドラゴンとワイバーンの群れに鱗粉攻撃を仕掛けた後に離脱、

フルアーマークマ五郎は食事中のドラゴンをパニクらせてくれ逃げてくれたら儲けものだ。

ガタ郎はクマ五郎のサポートでワイバーンを羽チョンパして地面に落としてくれ!

アゼルとメリザは落ちたワイバーンの討伐

俺は、ミヤ子のサポートからもう一匹のドラゴンが帰らなかった場合は加勢する。

皆、出来るだけミヤ子の戦闘エリアには近づくな、ヤバイな粉を撒くらしいからな。

死ぬなよ!」


と指示を出して、アイテムボックスから着替えを出してマスクがわりに口元を隠しフード付きマントを羽織ってミヤ子と共に左手の細かい傷だらけのドラゴンへ向かう。


右手奥の食事中のドラゴンはクマ五郎達に任せた。


ワイバーンの巣は、ほぼ空になり幾つかの巣に卵があるだけだ。


『産卵の季節のはしりか?』


と、考えた俺は、


『なるほど、産卵を控えたワイバーンはさぞ油が乗って美味しいのだろう…』


と、討伐にきた時期が悪かった事を理解した。


傷を負いながらも自分の分を確保するためか、攻撃を続けてワイバーンを落としているドラゴンへ向けて、


〈王様はここでご覧になって下さいませ…〉


と言ってミヤ子か空高くを目指して舞い上がる。


そして、ワイバーンに夢中のドラゴンとドラゴンに夢中のワイバーン達の上空でクルクルと円を描くように飛び、キラキラと輝く粉を降らすステンドグラスの様な神々しい羽の蝶々…

キラキラの粉はゆっくりと降り注ぎ、ドラゴンやワイバーンに付着する。


ミヤ子は疲れきりフラフラと離れた俺の元に帰って来て、


〈王様、終わりましたわ…どうか、クマ五郎達の加勢に…すみませんが、拠点に戻りたく存じます…〉


と告げる。


ミヤ子に、


「お疲れ様」


と言って拠点へと送喚して、まだ争っているドラゴンとワイバーンをチラリと見た。


『ミヤ子が終わったと言ってたからこちらは大丈夫だろう…クマ五郎達に合流だ』


と、粉をかぶった奴らを無視してクマ五郎が相手しているドラゴンに向かう。


道中で見たガタ郎とアゼルとメリザのチームはワイバーンを次々と倒しているしこのままで大丈夫だろう。


そしてクマ五郎ーゼットは、セミ千代パニクウェーブをドラゴンに当てながらブレスや尻尾をコブンバリアー回避して飛び回りドラゴンを追い詰めている。


ドラゴンは既に高速で宙を舞うクマ五郎に両目をえぐられてパニックを更に加速させている。


『なかなかエグい攻撃を…』


と、チョッぴり引いてしまった俺は、パニック状態で岩に頭から激突し、何とかその場から逃げようと空に舞い上がり、空中で何かを振り払おうとのたうち回りながらブレスを撒き散らすドラゴンを暫く眺めるしかなかった。


それでもクマ五郎ーゼットの錯乱作戦は続き、ドラゴンは上下すら解らなくなったのか、まっ逆さまに地面に突進してしまったのだった。


舌を出して失神しているドラゴンに、


『舌出し失神KOは藤波ドラゴンでなくて猪木さんなのよ』


と心で呟きながら、相手が動かなくなり錯乱作戦も使えずに、


〈あと、殴って潰せそうなところが無いんだなぁ…〉


と困っているクマ五郎チームに、


「良くやった!あとは任せろ!!」


と、俺は盾と雷鳴剣を構えてドラゴンに走り寄り、フルパワーの飛爪でドラゴンの半開きで舌を出した口の中のそのまた奥を目指して刃を伸ばし掻き切る!!


ゴボリと血を吐き、余りの痛さに目を覚ましそうになるドラゴンに向けて、


「もうしばらく寝とけや!!」


と、雷鳴剣に雷魔法を纏わせてまだダラリとだらしなく出ている舌に剣を突き立てて魔力のかぎり雷撃をお見舞いすると、感電して口や鼻から煙を上げたドラゴンは一度は持ち上げそうになった頭を再び地面に沈め、喉の奥から大量の血をドクドクと流し続け、索敵スキルに映る赤い点が1つ消えてドラゴンが倒された事を告げていた。


さぁ、残るはワイバーン達に傷を追わされていたイキりドラゴンのほうだが…

俺が振り向いた先には既にその姿は空中になく、地面に落ちたドラゴンやワイバーンからは紫色の煙が立ち上ぼり、体はまるで脱ぎ捨てられた衣類の様にダブついた皮が肉が消えて無くなった事を物語っている。


『ミヤ子の粉…怖っ!!』


と、転移もしていないのに玉がヒュンとした俺だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る