第76話 従魔とワイバーン狩りに…


クマ五郎の引くキャンピング馬車で南の森の入り口でキャンプをしている。


ここからワイバーンの巣までは約三日あるらしい。


先にガタ郎を送喚し、


〈明日から狩りをするのに従魔チームを大量召喚します。

マリーとハニーは拠点の防衛に残しますが、いつ召喚するか解らないので、しばらくマサヒロで飛ばない様にお願いします〉


と、マリーにノーラさん達への伝言を頼み今晩キャンプをした後、明日は朝から森に入りひたすら真っ直ぐにワイバーンの巣を目指す予定だ。



ー 翌日 ー


朝から召喚により、マリーとハニーの蜂蜜組を除く正規従魔組が勢揃いした。


クマ五郎とガタ郎とミヤ子の性能はだいたい解るが、マサヒロとコブンとセミ千代は、樹液ーズに分類される以外はあまり良く解らない…


俺は舎弟組に、


「えー、皆さん、日頃の拠点防衛業務お疲れさまです。

これから狩りに出発しますが舎弟組の皆さんの能力を確認したいと思います。

ではマサヒロから順にヨロシク。」


と、いうと〈疾風アゲハのマサヒロ〉は、


〈マサヒロです。合体で飛べます〉


と…うん、予想通りだね。


はい次、〈熊ゼミのセミ千代〉は、


〈セミ千代だよ。前にいる相手に錯乱効果のある音をぶつけれます。あとクマ五郎の親びんと合体して戦います〉


と…ん?指向性のあるパニックボイスか?あと合体って何?…解らん…


そして最後、〈隠密カナブンのコブン〉は、


〈ガタ郎の兄貴の舎弟のコブンっす。

普段は情報収集活動や連絡担当をしてるっす。

あと、クマ五郎の兄貴と合体してバリアーを張って盾になるっす〉


と…


『とりあえず皆、クマ五郎と合体するんだね…』


という事だけは解った俺は、


「クマ五郎と合体ってなに?」


とガタ郎に聞くと、


〈旦那様の妹さん達とクマ五郎が遊んだ時に、ノーラ様の様に〈クマ五郎〉と〈マサヒロ〉の合体を見たがったでやんす。

そしたら、〈セミ千代〉が焼きもちで合体して、妹さん達が、ついでだからと〈コブン〉も連れて来て、〈フルアーマークマ五郎〉が出来上がったでやんす〉


と説明してくれたが…


「う~ん、やはり全く解らん…」


と俺が呟くとクマ五郎が、


〈やってみるんだなぁ。〉


といって、立ち上がり四本の腕を広げる。


そして、


「がう!」


という、クマ五郎の珍しい鳴き声を聞いた途端


舎弟組がクマ五郎にしがみついて、空を飛び、相手を錯乱させ、盾を持ち、残りの腕で殴り倒す…良く解らない合体キメラが出来上がったのだった。


ただ、クマ五郎のふわふわの毛に埋もれて俺の苦手な虫っぽさが隠れた舎弟達には、


『安心して見れるようになる』


という追加効果を発揮している。


…まぁ、やはりよく解らんが、とりあえず、


「うん…空中戦になったらヨロシク」


と声をかけておいた。


そして、俺は最近固くてあまり状態異常にならない敵が多いダンジョンばかりだった為に出番の少なかったミヤ子に、


「ミヤ子、今回のワイバーンの巣を攻撃するのは、素材狩りと合わせて、アゼルとメリザのレベル上げも兼ねているからミヤ子の麻痺鱗粉が頼りだ。

一匹残らず麻痺らせて地面に叩き落として欲しい。」


と声をかけると、彼女はヤル気十分に


〈王様おまかせ下さい。

一匹残らず叩き落として首の骨をへし折ってやりますわ!!〉


と言っていたのだが、


『へし折っちゃ経験値が二人に入らないが…まぁ、良いか…せっかくやる気なんだし…』


と、あえてツッコむことはしなかった。


馬車をアイテムボックスにしまい全員でぞろぞろと森に入る。


森に入ってからコブンの能力が炸裂した。


俺と同じ隠密スキル と索敵スキルを持っているが、物凄いスピードで飛び回れるので、俺よりも広範囲の索敵とついでに肉眼での偵察もして帰ってきて、


〈前方に大型猪魔物が2頭いるっす。〉


などと、詳しい情報をくれる。


飛んでいる敵はガタ郎とミヤ子と合体勇者クマ五郎が倒すし、


集団で襲ってきた敵は、セミ千代の〈パニックボイス〉で混乱している間に全員でボコす…


快適だが、こんな快適なのが普通と思ってしまったらアゼルとメリザの教育上よろしくない…


それぐらいヌルイ…


三日間の移動の後に森の中に急に大きな岩の転がる開けた場所にでた。


石を集めた場所に木の枝で組まれた巣が有り、恐竜図鑑で見たプテラノドンみたいな翼を広げれば5~6メートルも有りそうなトカゲ魔物?が、


「ギャアォ、ギャアォ」


と騒いでいる…


『 まだ、なにもしていないのに警戒されている?』


と、あまりに声をあげているワイバーン達に俺達は一旦進むのを止めて敵の様子を伺う…

既に気付かれて襲って来たのなら迎え撃てるように武器を構えて身を低くして相手のワイバーンを観察するのだが…


しかし、どう考えても俺達に敵意を向けている訳ではない…

だが、依然警戒音を鳴らし空に舞い上がるワイバーン達は森の更に奥の山の方に頭を向ける。


俺は、恐る恐るワイバーン達の目線の先に目をやると…



『おいおい…冗談はやめてくれ…!!』


とボヤく俺の目にはドラゴンが二体こちらに向かって飛んで来ているのがみえた。


最低だ!…ドラゴンを避けてワイバーン狩りに来たのに、ドラゴンの方もワイバーン狩りに来てしまったようだ…二匹でデートなら他でして欲しいものだ…


『うーん?今日はワイバーンが食べたいかなぁ?』


とか彼女さんに言われたか知らんが…何で今日なの?…

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