第73話 本格的な旅に向けて


ノーラさんがパーフェクトノーラさんになり家事に育児に頑張ってくれている。


これで俺の心配事が一つ減って遠征にも出れるようになったが困った事がもう一つ…


それは俺が遠征に出ると買い出し用の馬車が長期間無くなる問題である…田舎で買い出しに出られ無いのはツラい。


最悪クマ五郎は送喚でこまめに返せば良いが馬車自体はどうともならない…


『馬車だけはもう一台作ろうかな?』


と思い、クレストの街の商業ギルドに相談にクマ五郎と馬車で向った。


『えっ、予算は大丈夫かって?』


ふっふっふ…実は大丈夫なのです。


なぜなら紹介状を持った俺を投獄した件で、正式にアルトワ王へ謝罪としてガイナッツ王国から色々有った中に大金貨30枚もあり、アルトワ王から、


「その少年の為に使ってやれ…」


と、ロックウェル伯爵様が預かっていたらしいのだ。


しかし、冒険者の俺の居場所も解らずに困っていたところでダンジョンショップから、俺が現れたとの報告がありエクストラポーションのオークション依頼が舞い込んだという流れであり、


「これだ!」


とばかりに意気込んでくれたらしい。


「本当なら、大金貨30枚迄でなんとかオークションの決着を着けて、預かった70枚に手を付けずに返したかったが…スマン」


と、ロックウェル伯爵様が話してくれ、残った分をローゼッタ様が、


「バカな甥がゴメンね」


と、少し色を着けて渡してくれたのだ。


『…最高に粋だ…もう、皇帝一家と取り替えてこの夫婦に国を統治して欲しい…』


と感じる出来事があり、そんな訳で30枚以上の大金貨が手元にあるのだ。


馬車を新たにお願いしても十分余る金額だろう。


商業ギルドが声をかけてくれて、鍛冶師ギルドの鍛治師の親方と木工ギルド経由で木工職人の親方に来てもらい、ゴング式・衝撃吸収システム付きのキャンピングカー形式の屋根付き馬車を注文した。


鍛治師の親方は商業ギルドの外にある実際の俺の荷馬車を参考にして馬車の土台を作るらしい。


クマ五郎に少し驚きながらも、


「ギルドに有る説明書が難し過ぎて解らなかったが、なるほど…これなら他の奴に説明出来る…」


と、各部品のサイズを計っていた。


木工職人の親方に色々注文を着けていると、


「ほうほう、で…この椅子と椅子の間に背もたれを外してはめ込むと…ベッドになるのか?…斬新だな…」


などと、親方もノリノリになり商業ギルドの職員さんも一緒にキャンピングカーとしての特許を取ろう!となった。


「荷物では無くて住む事に重点をおく馬車…アイテムボックス持ちの冒険者などにウケますよ!」


と商業ギルドの職員さんもノリノリだ。


しかし、馬車の完成に1ヶ月以上かかり、旅はもう少し先になるので、もう一度か二度バラスダンジョンで採掘できそうだ。


『馬車の素材として鍛治師の親方に鉄と魔水晶もゴソッと渡そうかな?…ゴング爺さんに小隊分の鎧を作るつもりか!!と言われた数倍の量がアイテムボックスにあるし…』


と、素材も渡して予算も大金貨十枚程度に収まった。


あとは当面の生活費としてノーラさんに一部は渡すとして、どうするかな…双子に水魔法でも買ってバラスダンジョンでもう少しミスリルを採掘するかな?…などと考えながら、ギルド通りを入り口へと向かいクマ五郎馬車を走らせていると、


「えっ!ポルタ君!!」


と名前を呼ばれた。


〈クマ五郎止まって。〉


と、心の中で指示を出してから、馬車を降りてキョロキョロしていると露店商の女性が俺に近づいてきた。


「お久しぶりです…その節は助けて頂きありがと御座いました」


と言われたが…?となっている俺に、女性は、


「今日はガタ郎ちゃんは?」


と聞いてきた途端に思い出した。


『ゴブリンの巣から助けたライラさんだ!!』


と…俺は驚きながら


「ライラさん!!お元気でしたか?!

ビックリしましたよ、あまり女性から呼び止められた事なんかないから…髪型とか変わってるし…

ガタ郎は今日は自宅待機という名前の樹液を舐めて昼寝する休みの日です」


と答えた。


ライラさんは、


「フフフッ、そうですねポルタさんに初めて会った時は髪も長かったし裸でしたもんね…」


と笑いながら話すのだが…「裸」というパワーワードで集まる視線に、


「ちょ、ちょっとライラさん、大通りで…」


と、慌てる俺を見て、


「あちゃー、いけない。」


と、おどけるライラさん…


『あんなひどい目に遭ったのに、明るいな…立ち直ってくれたのなら何よりだが…』


と感じる俺は彼女に、


「で?ライラさんは今は何を?」


と、聞くとライラさんは、


「夫の残してくれた商品を売って、細々露店商をしております。

夫ならばこんな状態からでも上手に商売して稼ぐのでしょうが…駄目ですね…上手くいきません…

夫と二人の夢…ミルキーカウのミルクなんかを扱う牧場を開くのは無理そうです…

もう少しの所まで来てたのですが…人生って難しいですね…」


と寂しそうにする…


『あんなひどい目に遭って、旦那も無くして夢まで諦めて…露店商でギリギリの暮らし…この世界の神様はイタズラが過ぎる!』


と少し憤慨する俺が、


「ライラさん、ちょっとお伺いしますが?」


というと、ライラさんは


「なんでしょう?」


と不思議そうな顔で応える。


俺は、


「ライラさんは、牧場…やってみたいですか?」


と聞くとライラさんは、


「えっ?えぇ、私のスキルはテイマーですので、露店商よりはやりたいですけど…」


という答えを聞いて、


『ナイス!俺の上位互換スキル!!』


と直感した俺は決意して、


「ライラさん、ウチの家族になりませんか?」


というとライラさんは真っ赤になり、


「えっ、あの、夫と死別したばかりで、でも、えっ、どうしましょう…」


とキョドりだすライラさんに、指笛を鳴らす観客…拍手しながら、


「決めちゃいなよライラちゃん!」


と背中を押す露店商仲間のババァ…


俺は、「ハッ!」となり、


「違う、違うからライラさん!俺、家を建てたんだけど…牧場風の…ガタ郎や今、馬車を引っ張っているクマ五郎の為に厩舎も建てたけど、でもまだ厩舎も母屋の部屋も余ってるから…やらない?牧場…

俺の孤児院の家族が引っ越してきた所で、人手も欲しいし弟たちにミルクをガンガン飲ませて骨の強い子供になって欲しいんだよ!」


とやや焦り気味に話すと、


ババァ達は、


「なぁ~んだ…」


興味を無くしたように何時もの生活に戻った…


しかし、ライラさんは違った意味で真っ赤っかになっていたのだった。


いや、はじめの俺の説明不足だった様で、なんか…ごめんなさい…

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