第69話 贈り物と欲しい物
やっとの思いで拠点に着いた。
ちびっこが怖がるので集団での虫さんの出迎えは禁止とマリーに伝言を頼んでいたので、遠巻きにかなりの数の視線を感じるが…特に問題はなく母屋に着く事ができた。
パーシーさん達に挨拶をして俺の家族を紹介する。
現在事務所を建てている大工の親方にも挨拶をしたのだが、張り切って建ててくれた母屋がかなりの豪邸で驚いた。
挨拶も終わり木の香りが漂う家の中に、引っ越し荷物をアイテムボックスから出しながら、俺はぼーっと考える…
『先日のアレは…スキルの暴走だとでも思いたい…』
と…
怒ってる俺を気にして、虫が集まって来たのだろうし…怒っちゃ駄目だね…反省。
ただ、ぶちギレていたけど、並列思考で冷静にクマ五郎に指示が出せて子供組を惨劇の現場から遠ざけられて良かった。
下の兄妹達には虫さんのオッサン丸噛りショーなんてトラウマ案件以外のなにものでもないからな…
しかし、あれでは賞金首がいたとしても引渡しは出来ないし、討伐依頼とか出てたらあのオッサン達を探しまわっている冒険者が今もいるかも…
などと一人ブツブツ言いながら母屋の部屋を回り、ベッドやタンスを並べていく俺だった。
ただ、新居にはまだ足りない物が山ほどある…
孤児院はギリギリの生活をしていたので、着替えの下着すら満足な量が足りていない…
『一度大変だが、皆でクレストの街に行くしかないが、とりあえず数日拠点で過ごしてみてから買い出しの旅に出る事にしよう』
と決めた。
そして、色々あったが新居のあちこちで荷物をほどきながらきゃっきゃとさわぐ兄弟達と、キッチンの使い勝手を確かめているノーラ母さんを見て、
「家族が無事に引っ越せたからヨシとするか…」
と呟く俺だった。
結局荷解きと配置だけで1日を費やし、その日の夜はアイテムボックスにある食事で済ませて皆疲れてぐっすり寝たのだった。
それから半月ほどかけてやっと拠点が整った。
子供組はお手伝いに勉強を頑張り、ノーラ母さんはお料理や、お洗濯、と毎日忙しくしている。
アゼルとメリザは暫くはこの拠点を中心にスキルや装備を整えてCランクを目指すそうだ。
なので俺は暫くアゼルとメリザの世話を焼いたあとで少し荒稼ぎをするか、またはダンジョンに潜る予定でいる。
『チョイと欲しい物が出来たからね…』
あと、空いてる時間は、子供組の家庭教師をする予定でいる。
九九も教えてそこらの商人より計算が早くしてやるつもりだ…
『勤めに行くにも、ノーラさんを手伝うにも役立つだろうからね』
拠点も整ったので早速、約束していたアゼルとメリザの武器を買ってあげる予定の俺は、実は前もってダンジョンショップのニールさんとナッシュさんにお願いして、一人当たり大金貨五枚でお見合い市場の予約と、オススメスキル等を見繕ってもらっている。
『稼ぐ予定で何を無駄遣いしているんだ?』
と思われるかもしれないが、俺が欲しい物への先行投資でもある…。
俺が欲しい物は〈エクストラポーション〉というもので、ダンジョンでごく稀に手に入る欠損部位まで回復する激レアポーションだ。
どこで出るかは全く解らず、ダンジョンの低層で出た報告もあり…
もしかしたらアゼルとメリザが一発でツモる可能性も有るから二人がダンジョンで活動し易くしておきたいという理由もある。
『ノーラ母さんの足を治してからでないと、俺は心配で本格的な遠征を安心して出かけられない…』
との理由からそのエクストラポーションを手に入れるのを目標にしている。
そんな訳で、二日後にアゼルとメリザをクマ五郎馬車に乗せてクレストの街に向かったのだった。
何も知らない二人をダンジョンショップに連れて来て、ナッシュさんが司会を勤めるお見合い市場に参加してもらう。
『ちゃんと予約を取って順番を待っていたのだ。』
アゼルとメリザの二人は説明を受けて、
アゼルは槍を三本とメリザは弓を三張選び、鑑定をかけてもらいその中から一つを選んだ。
アゼルは切れ味と耐久力それに貫通力上昇が付与された魔鉱鉄の槍を選んだ様で、ゴング爺さん作の槍とはぼ同じ性能だが、切れ味の付与がされている分こちらが少し格上である。
メリザは耐久力と連射性能上昇が付与された聖木の弓という、軽くてしなやかな弓を相棒に決めていた様だった。
この弓は矢に〈聖属性〉を微妙に纏わせる追加効果も有るらしい。
続いてスキル等を二人には渡すと兄妹はとても驚いていた。
ダンジョンショップのニールさんが二人に、
「お兄様のポルタ様には我々スタッフ一同、大変お世話になっております。
お二方の為に予算内で可能な限りのスキルやアイテムをご用意するように承っています。
アゼル様は、身体強化スキルをお持ちということで、頑強・豪腕・スタミナのスキルを取得して頂きフィジカルという複合スキルにして頂き、
追加で高速移動を取得して、前衛で活躍出来る様に…
メリザ様には、身体強化と頑強スキルで防御力を上げつつ、ファイアアローとエアカッター魔法スキルでの攻撃魔法を使えて、アースウォールという防御魔法を取得して頂き後衛での活躍を想定してスキルを選ばせて頂きました。
そして、我々ダンジョンショップ一同からの気持ちです」
と言ってカバンを二人に渡す。
ニールさんは続けて、
「容量こそ馬車一台少々ですが、時間停止付きのマジックバッグでございます。
お兄様への日頃の感謝の代わりに我々からお二方へのプレゼントでございます」
と言って頭を下げていた。
『ナイスな品物と、凄いプレゼントまでありがとうございます。
おかげで、お兄ちゃんとしての威厳を見せれました』
と心の中でニールさん達に例を述べつつ深々と頭を下げる俺に、ニールさん達は軽く目配せをしてくれた。
多分店長さんにお願いしてかなりのサービスの許可を取ってくれた筈である。
そして、ニールさん達のご好意もありスキルを手に入れて、装備も整った二人のDランク冒険者の二人は、たいそう俺を見直したらしい…
「ポルタ兄ぃは、本当に凄い冒険者だったんだ…」
と…
いや…今まではどう思ってたんだ…?
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