第66話 家族との再会と今後の予定


さて、家族全員でお引っ越しが決まったがウチの母屋の設計では全員はキツい…

ポプラさんに連絡を入れられれば大工の親方達がまだ今から作業に入る頃だろうから何とか計画変更できるのだが…


などと悩む俺に、


〈そうでやんすねぇ、連絡出来たらいいでやんすのに…〉


と、影の中からガタ郎がこたえる。


『…?!あっ!』


と、あることを思いついた俺が、


「ちょっといいかね、ガタ郎君…」


と、俺が相棒を呼ぶと、


〈な、なんでやんすか…君だなんて…〉


と、訝しげに答えるガタ郎に、


「ポプラさんに手紙を届けて欲しいんだ」


と、お願いするとガタ郎が、


〈どうやって届けるでやんす?〉


と、不思議そうに聞くので、


「従魔召喚…」


と答えると、


〈出来るで…やんすか?〉


と、静かに質問するガタ郎に、


「…知らない。」


とだけ答えておいた。



と、言うことでお手紙を書きまして…


「はい、ガタ郎さん、ガッチリ持ってね…いくよ!離しちゃダメだよ!!」


と俺が言うと、


〈了解でやんす!〉


と返事をしたガタ郎は手紙が少しクシャリとするまで抱き抱えていた。


準備が出来た様なのでガタ郎を拠点へと送り返すと、シュンっと送喚されたガタ郎と一緒に手紙も消えた…


「やったか?」


と、呟いたのちに、俺は段取り通りクマ五郎を召喚する。


すると、次はクマ五郎がポンと現れて、


〈成功なんだなぁ!〉


と結果報告をしてくれた。


「やった!成功したんだな…これで拠点との連絡が…」


と喜んでいたのだが、クマ五郎からポプラさんからの伝言で、昼過ぎ頃にマリーを召喚して欲しいと言われて、

約束どうり数時間後に召喚したマリーからポプラさんの伝言を聞いたのだった。


「母屋も大家族用に変更可能、追加の代金は秋の蜂蜜の代金から大工の親方に支払います。

足りない場合は立て替えますのでご心配なく」


とのことだったのだが俺は、


『マリー…普通に喋れて伝言できるじゃん…』


との真実にたどり着いてしまったのだった。


しかし、とりあえずお手紙実験と、母屋の計画変更も伝えられたので俺は、


「お疲れ様」


と、マリーと、子供達の遊び相手をしてくれていたクマ五郎を送喚したのだった。


しかし、子供達はクマ五郎を取り上げられて、膨れてしまっている…

九歳の〈シェラ〉は子供組のお姉さん、

七歳の〈トム〉は面倒見の良い子供組のお兄さん、

六歳の〈ミミ〉はお手伝いを頑張る妹キャラで、

三歳の〈ポロ〉と二歳の〈ダミア〉は、俺が、卒業してから入ってきた男の子達だ。


この五人が、


「クマゴローと夜一緒に寝たかった…」


とか、


「クマちゃんとおやつ食べたかったのに…」


などと口々にゴネているので俺は、


「クマ五郎は森の見回りのお仕事に行ったから、

皆は、良い子でオヤツにしましょう」


と、アイテムボックスからお隣の果樹園で購入したフルーツを取り出して切り分けると、さっきまで膨れていたのが嘘の様に皆はニコニコしながらりんごや、ミカンを頬張っている…


ノーラさんも誘ってのおやつタイムは楽しかったが、ノーラさんは、


「時期外れの果物…高かったんじゃない?」


と心配してくれている。


俺は、


「俺、アイテムボックス持ちになったので、旬の時にいっぱい買っても腐らないし引っ越しも楽々出来ますよ。」


と教えてあげた。


皆がおやつを食べている最中に、孤児院に久々に会う兄弟分が現れた。


二歳年下〈正確には三歳年下と最近知った〉のアゼルとメリザの二卵性双子が、牙ネズミという小型魔物の肉を手土産に孤児院の様子を見に来たのだ。


「うぇっ?何でポルタ兄ぃがいるの?」


と、弟分のアゼルが驚き、


「ポルタ兄ぃ、生きてたの?長いあいだ野宿とかしてたでしょ!?…心配してたんだよ。」


と、妹分のメリザが俺をサスサスと触りまくる。


久々の再会のあと、二人にも事情を説明すると喜ぶより驚いていた。


何より、


「一年近くろくに食べられずに底辺冒険者の野宿暮らしをしていたのに、現在、順調にCランク冒険者をしているなんて…なんの冗談だよと…」


しかし、新米冒険者の二人は、


「孤児院の皆と一緒にポルタ兄ぃについて行く」


と、ついてくる事を決めたのだが、


出発まで2ヶ月あるので、一緒に狩りをして、二人には引っ越し迄に二人してDランク冒険者を目指して貰うことにしたのだった。


それを踏まえて、ノーラさんに空にした俺のマジックバッグと生活費を渡しておく。


これで、松葉杖をついて買い物に行く回数が減らせるし、沢山買っても重くないはずだ。


ノーラさんに、


「時間停止付きだから腐らないよ」


と、教えてあげると、


「食糧庫が要らないね」


と、喜んでいたのだが、アゼルとメルザの兄妹は、


「ポルタ兄ぃ、凄い!ホントに稼げる様になれたんだね…」


と、感心している。


兄の威厳は保てたようだな…


マジックバッグなんて現在Fランクで、もうすぐEランクになるくらいの二人には夢のアイテムだろう…


しかし、初級ダンジョンさえ踏破できて、Dランクになって稼げれば手の届く品だと教えてやると二人はやる気を出してくれて、もしも引っ越し迄に目標の、Dランクになれば、クレストの街で武器と防具を俺が買ってあげる約束をした。


装備さえあれば、身体強化と槍術スキルという武術スキルを授かったアゼルと、索敵とターゲットを授かったメリザのコンビならば昇格は勿論、冒険者として食べてで行くことすら簡単だろう。


しかし、Fランクかぁ…懐かしいなぁ…

あの頃はFランクにすら成れないかもと不安な日々で、迫り来る冬にドキドキしてたなぁ…


と、野宿していた頃を思い出すのだった。

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