第60話 レベル上げのはずが…
現在肩慣らし兼、レベル上げで魔法ダンジョンのイルデダンジョンに来ている。
乗り合い馬車に久しぶりに乗ったが…あれは、乗り物ではない…拷問器具だ…
ダンジョンに入ってから召喚された従魔達は、あの拷問を受けていないから元気である。
因みに、俺のレベルはCランクの中では下の方から数えたほうが早いぐらい低いらしい…
冒険者ギルドマスターのダサマントおじちゃんが言っていたから間違えないだろう。
しかし、ガイナッツで牢屋にブチ込まれた時にはだいぶ心配してくれていたそうで、他の職員さん達も
「 ギルマスは色々と動いていたみたいですよ…」
と俺に報告しているのに気がついて、
「口を動かさずに手を動かせ!」
と、すこし恥ずかしそうに職員さんに注意をしていた。
『案外可愛いところがあるんだな…』
とニヨニヨして見ている俺にギルマスは、
「レベルでも上げてこい!」
と言っていたが、確かに、敵を倒して強くなるよりも、ボロい仕事で買ったスキルに助けられたのと、前世の知恵でズルして手に入れた人脈とお金で装備を整えたからで、レベル上げ的な事はあまりしていないと気がついて、現在お客さんの少ないシーズンのダンジョンで狩りをしてレベルを上げる予定だ。
『…しかし、動きづらい…』
この動きづらさは、初めて俺との狩りに参加しているマリーがずっとくっついているからである。
『…まぁ、嬉しいのは解るけど…』
俺が、もたつく間にガタ郎が首チョンパするし、向こうではミヤ子は何かヤバい粉を振りかけると、敵は紫色の煙を体から立ち昇らせパッシュン、パッシュンと消えてドロップアイテムへと変わる。
クマ五郎は相手の打ち出す魔法をひらりとかわして、以前よりキレが増したクマパンチを叩き込み、ドロップアイテムを拾って帰ってくる。
『…いや、俺のレベル上げに来てるから!』
とツッコむ俺に、
〈ちょびっとだけなら旦那様にも経験値は入るでやんすよ。〉
と、答えて倒し続けるガタ郎…
なんだか皆がやる気というか?…必死というか?…何か嫌な事でも有ったのかなと、心配しながら見ていると、
マリーが、
「皆様、私が拠点を仕切っているから、最近影が薄くて陛下にアピールしたくて必死なのですわ」
と、俺にくっついきながら余裕な雰囲気をかもし出している。
まぁ、低層階だから皆が殲滅させても良いよ…俺の目的は中層から下でのレベル上げだから…
『しかし、従魔の世界も色々有るんだね…』
などと考えていたが俺の出番はほぼ無いままボス部屋前に来てしまった…
前回みたいに順番待ちの列がパチンコ屋の新装開店ほど並んでいたら…と、心配していたが現在は2組待っているだけであった。
『半日以上待ちかぁ…』
と考えながら俺が、
「はい、今日はここまで、ボス部屋の順番が回ってくるのが少なくとも、12時間以上かかりますので、皆さんを送喚したいとおもいます。
明日改めて召喚しますがお供は二名ずつ交代制にします」
と、発表すると
「えーっ」
と不満が起こるが、
俺は、
「はい、嫌ならお留守番組に任命しますよ」
と、いうと皆〈仕方がないなぁ〉と条件を飲んでくれた。
今日みたいに狩り尽くされたら、たまったもんじゃない…俺は、レベルあげがしたいのに…
ー 翌朝 ー
『しまった…ガタ郎だけでも残しておくんだった…』
と、後悔する俺…それには訳があり、抱き枕サイズのゲジゲジ君がセーフティーエリアの入口の外からじっとこっちを見ているのだ。
セーフティーエリアはダンジョン産の魔物には効果抜群で望んでは入って来ないが、潜りのお外産の魔物は我慢すれば入れるみたいだ…
しかし、あのゲジゲジは多分気が弱いのだろう、
〈さぁ、話掛けて下さい。〉
とばかりに入口付近から見つめてくるだけだ…
〈ガタ郎さんがいたら説得のうえお帰り頂くのに…〉
彼は何をするわけでもないが帰る気配もない、
『そして、気になり出したらもう…』
あまり休めないままボス部屋の順番が回ってきた。
マリーとクマ五郎を召喚して、ボス部屋にアタックをかける。
頑丈な扉を開き三人でボス部屋に入ると…羽の生えた〈カバ〉が いる…
『あの小さな羽で飛べるのか?』
と考えていたら、羽をパタつかせるとエアカッターが羽から打ち出された。
間の抜けた見た目に反して、魔法もかなり鋭く初めてこのダンジョンで確りと攻撃力がある魔法を撃つ魔物かもしれない。
しかも、見た目と違いカバの突進の速いこと速いこと…
初級ダンジョンのボスの牛より、はるかに速くて、デカくて、重い上に、魔法も撃つ…
マリーが、
「陛下にワタクシの実力をご覧にいれますわ!」
と、言って彼女はカバに向かって飛び立つ…
エアカッターをスルスルかわして飛び、カバに近づき、
「はい、チクッとな!」
とお尻の針を突き立てたのだった。
マリーは、
「はい、今日のお仕事は終わりです。」
と休業宣言をしたのだった。
『えっ、カバ君は?』
と思う俺だが、その瞬間カバはプルっと震えた後に、身体中の穴という穴から血を流しだした。
そして、前足をガクッと折り項垂れたカバ君は、バシュンとドロップ品を残して消える…
『何あれ…怖いわー…』
と、ドン引きの俺に、スッキリしたマリーが、
「如何でしたでしょうか?陛下」
と聞いてきたので俺が、
「何か凄かったよ…」
と答えるとマリーは満足したようで、
「陛下、ワタクシの奥の手は1日一度なので、もう巣に帰りたいと存じます。」
と言っている。
俺は、
「了解!」
と言って送喚してあげた。
『マリーは基本的には巣の運営と防衛が主だから、あまり連れ出さないほうが良いのかも…』
と、考えていたら残されたクマ五郎が、
〈ぼくぅ、居てもいいのかなぁ?〉
と、不安そうだ。
俺が、
「とりあえず、二人で攻略しょっか?」
と、クマ五郎にいうと、
〈おー、がんばるんだよぉー!〉
と、やる気十分だ。
俺は、ドロップした魔石やカバ皮にメダルを拾ってから先に進む。
クマ五郎が、
〈宝箱だよぉ!〉
と、俺を呼ぶ
…そういえば、ボス討伐のご褒美が、有るんだったな…久々のボス戦だから忘れてたよ…
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