第58話 本拠地を作りましょう


ポプラさんとパーシーさん夫婦に連れられてクレストの商業ギルドまでやってきた。


クマ五郎の馬車は、住民達からかなり目を引いたようだが乗っている俺を見て手を振る人も数名いた。


少しの間だったがこの街で見知った顔が出来た事に喜びを感じる。


ギルドが建ち並ぶ通称ギルド通りなので、見知った冒険者に手を振りながら商業ギルドに向かい、お金をおろす事にしたのだ。


しかし、商業ギルドの窓口で驚くことが起こった。

俺の預金残高が、大金貨30枚以上ある。


驚く俺より、もっと驚くパーシーさん。


ポプラさんは、


「牧場建てた上に森も買える金額じゃない!」


と言っているし…


窓口のお姉さんに恐る恐る、


「あの~、間違いとかでは…?」


と、俺が聞くと、


お姉さんは書類を確かめながら、


「そうですね、ここ数ヶ月での各国の商業ギルドからの特許使用料が殆どですね。


えーっと、ガイナッツの商業ギルドと、本部のある帝都マルスからが多いですが、別におかしな事はないですよ、件数と単価も…はい、合っています」


と言われた…


馬車関係と井戸の特許か…スプリングとか微妙に入る特許使用料は抜きにしても馬車を何台作ってるんだよ?


『でも、間違いないならありがたく使おう…』


と決めた俺は、ポプラさんに、


「森も買って、家も建てちゃいましょう!」


と提案するとポプラさんは、


「本当に?マリーちゃん喜ぶわよ。

森にはマリーちゃん達のお家が、いくつか有るから。

これでビックハニービー達森組も、丘の近くの本家と一緒にポルタ王国の仲間入りね」


と、喜んでいた。


『なに、そのネーミングの国は…ムツゴロウさんの動物のヤツならまだしも、ポルタの虫王国…痒くなりそう…』


少し『通称』に引っかかるモノを感じたが、土地購入も商業ギルドで済ませて、ギルド通りに有る木工ギルドに向かう。


そこはノコギリとトンカチの看板が目印の立派な建て物だった。


この技術が有れば大丈夫でしょ?と言われているような細かい細工を眺めながら窓口で大工さんの紹介と打ち合わせをして大体のイメージを伝える。


母屋に大型の厩舎、放牧エリアに柵を巡らせて、湧水を利用した水呑場が有れば従魔達も暮らせるだろう…


大体の予算を聞くと大金貨十枚程度に収まるらしい。


『 まぁ、少し予算オーバーしても、アイテムボックスのお財布に大金貨三枚程度なら有るし、来月になったらまた幾らか特許使用料が入ると思う…』


すると、ポプラさん夫婦が、


「全ての工事の後で、同じ大工さんにウチ果樹園との境に蜂蜜工房と、事務所も建て下さい」


と、お願いして見積りを取っていた。


倉庫の様な作りの建物に小さな小屋なので大金貨二~三枚で十分建つそうだ。


自腹で支払いをしようとしたポプラさんに待ったをかけて、


「蜂蜜工房と事務所は牧場の側に俺が建てます。

その代わり、牧場の管理というか母屋の掃除とかをたまにお願いしたいのですが…」


と提案して、アイテムボックスから財布を取り出して大金貨三枚をならべた。


夫婦は、


「管理費として分け前をもらっているから、事務所ぐらいは…」


と口を揃えるが、しかし俺が、


「それは、マリー達を気に掛けてくれて、蜂蜜の出荷作業や段取りに対しての対価です」


と、告げるとパーシーさんは、


「それでは貰いすぎになります」


と、いうので俺は、


「図々しい事を言いますが管理費の中で俺が留守中の牧場の管理人もお願いしたいのです…ダメですか?」


と頭をさげるとポプラさんは、


「ポルタ君、蜂蜜の出荷量はどんどん増えてるの、管理の手間なんてさほど変わらないのに、取り分だけが増えるのは悪いわ…」


と困っているので俺が、


「良いじゃないですか、どんどん儲けて下さい」


というとポプラさんは、


「じゃあ、貰った管理費で私たちの家を建ても良いの?」


と聞く、パーシーさんは


「おい…」


と言って『妻がすいません』みたいな顔をしているが、


「勿論です。凄いの建てちゃって下さい」


と、俺が答えると、


パーシーさんは、声を出さずに『マジで?』と口を動かした。


マスオさん状態でポプラさんの家に居たからな…婿さんは大変だっただろう。


俺は即金で、夫婦はローンを組み全て俺の土地に建てる事にした。


職場が近いと楽だろうというのと、義理の父の土地では、一生気を遣うだろうから、せめて自宅だけは借地でも自分専用がパーシーさんもやり易いだろうとの配慮からだ。


何だかパーシーさんのやる気と自信が満ち溢れている…


『なんか、色々大変だったんだろうな…』


お察しします…



という事があり牧場の建設依頼も済んだのだが、建つまでの家がない…3ヶ月ほどで建つらしいが、パーシーさん達に丸投げして旅に出るのは忍びない。


一旦通称ポルタ王国に戻り、従魔達の仮住まいを設定して、クレストの街で冒険者をしながら完成を待つことにしようと決める。


従魔召喚スキルもあるから俺一人ギルド宿に泊まれば何とかなるはず…

ただ、クマ五郎をクレストの街で一緒に暮らすには厩舎代金がかさむだろうからその都度召喚だな…

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