第56話 パーティーで告白
ゴーレムを倒して帝都に戻ってきた。
冒険者ギルドで依頼達成報告と依頼内容の変更の書類を提出しゴーレム素材と銀鉱石の買い取りを依頼したのだが…
正直あれだけ『高く売れるのでは?』と、必死になった銀のだが、あまり高値で買い取っていないことをこの時知ったのだった。
一キロ、小銀貨五枚…ゴーレムの銀の体も、小金貨五枚ほど…百キロぐらいあるのに…
むしろ、ゴーレムコアの方が一個で小金貨五枚と高価であた。
かなり頑張ったCランク依頼だったのだが依頼達成報酬と合わせて大金貨三枚程度だった。
うーん、大変さにギリギリ見合っているのかもしれないが二度とやりたくない依頼だ…
どうしよう…あと一週間ほどゴング爺さん達の技術指導の日にちが残っている。
もう、正直旅立ちたい…パーティーなんていいから…もう、俺の帝都アレルギーが酷いから…
などと思いながらも街の近くで狩りをするか、また図書館で時間を潰し、やっとゴング爺さん達の技術指導期間が終了して皇帝陛下専用の板バネシステムの馬車も完成した。
…で、何で、技術指導のお疲れ様会がガイナッツの館ではなくて宮殿で行われるのでしょうか?
『俺は腹黒の住む伏魔殿に近付きたくないのですが…』
と、ムスッとして会場の端にいる俺に楽しげな皇帝陛下が、
「ポルタ君、楽しんでおるかな?」
と、話しかける。
俺は完璧に感情の死んだ顔で、
「ガイナッツの館で簡単なパーティーをして、明日には帝都から出られると思ってましたから…
正直、再び宮殿にお招き頂いて…嫌な思い出がまた鮮明に甦り大変不愉快に存じます陛下…」
と、抑揚なく淡々と答えると、皇帝陛下はニコニコしながら、
「あぁ、悲しいのぅ…余の住まう帝都を、知恵の神の使徒様はお気に召さなかった様だ…」
と大袈裟に泣いているふりをする。
俺が、
「帝都がお気に召さないのではなくて、皇帝陛下と宮殿の皆様のおかげで、人間不信になったからです…」
と死んだ目で皇帝陛下に伝える。
皇帝陛下は
「それに関してはスマンと思っておるが、見てみろポルタ君、長年人を信じられなくて空回りしていた娘が、なんとも幸せそうではないか。
あの笑顔を守ってくれたのはポルタ君なのだから出来ればポルタ君からも祝ってやって欲しい。
…ぷっ、何故か娘にフラれた事になっておるそうじゃの…ぷひっ、…だか、そんな事は無いと知っている者は知っておる…気にするでない…」
と笑いを堪え…いや、笑いながら話している。
チラリと見たマリアーナ姫とサムさんは幸せそうに皆と話している。
そして、皇帝陛下を見ると…何故だろう…
『嫌いだ…』
もう、皇帝陛下と陛下に付属するもの全てに嫌悪感を覚える。
『マジで、このパーティー会場の料理をアイテムボックスにしまいこみ、牢獄まで移動し、料理を対価に闇の一族をアルバイトに雇って今夜陛下の部屋でカサカサ祭りを開催してもらおうかな…』
と真剣に考えてしまう。
「はぁー」
とため息をつく俺に、皇帝陛下は真剣な顔をして、
「余は、そなたに甘えすぎてしまったようだ…許して欲しい…初めはたまたま、そなたが姫に変わるきっかけをくれたからだったが、
影の者が集めた情報やそなたと直接話す度に、何故か成人前の少年なのに、頼れる年上の様に感じてしまう…そなたなら姫に幸せな道を指し示してくれるのではと…」
と頭を下げる皇帝陛下に、俺は、
「陛下、何歳ですか?」
と聞くと、皇帝陛下は
「余は、四十九だが?」
と答える。
『若っ!第三皇女が26だろ…!?
…まぁ、長男が16の時の子供らしいし、複数の奥さんなら…あり得るか…』
と驚く俺だったが、でも、前世と今世を合わせたら、正確な事は解らないが確実におっさんを拗らせて爺さんになりかけている自信がある…
俺は皇帝陛下に、
「陛下は確実に俺より年下ですよ。
前世の分と合わせたら確実に60手前ですから…俺」
と教えてあげた。
皇帝陛下はキョトンとして、
「前世?」
と聞くので、
「もう、二度と帝都に来ることも無いだろうし、
皇帝陛下と平民の俺がお話する機会もないだろうから特別ですよ。
俺は、生まれ変わる前の記憶を持っています。
それも、この世界とは違う、魔法もスキルも無い世界…その代わり科学という学問が進んだ世界でした。
その記憶も合わせれば、皇帝陛下より年上です。なんならゴング爺さんと近いくらいです…
皆にはナイショですよ。」
と、教えてあげた。
皇帝陛下は、
「では、新型の馬車も?井戸の摩訶不思議な装置もか?」
と聞くので俺は、
「前世ではアレらの技術は大分古い技術で、かなりの田舎の片隅にある程度の物ですよ。
もっと凄い技術がゴロゴロありますが再現する事すらコチラでは困難でしょう」
と教えてあげたのだった。
皇帝陛下は、
「信じられない様な内容だが、ポルタ君の事を考えると、むしろ府に落ちるな…」
と考え込む。
俺は、
「だぁかぁらっ、今回の皇帝陛下の酷い仕打ちは、
後輩のイタズラと諦めて許してあげます。
本当は、この宮殿に住み着くとある魔物を使役して、仕返しでもしてやろうかと考えてましたが今回だけは勘弁します。
だって年上の、〈お兄さん〉だからね。」
と、いうと皇帝陛下は、
「それは、恐ろしいな…私がそなたの知恵を一人占めしたいとワガママを言えば、次こそはこの宮殿は大変な事になりそうだ…
しかし、恩に着る…ポルタお兄さん…」
と言って笑っていた。
仕方がない…許してやるか…
だけど…今回だけだからな!!
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