第55話 対 デカゴーレム戦


さぁ、残るは一番奥の壁が崩れた近くのデカゴーレム君だけになったが…


ゴーレム君も二メートルぐらい有ったけど、それよりプラス30センチ有るか無いかで、迫力が雲泥の差だよ…


〈王さまぁ~、大丈夫なのかなぁ?〉


と、心配してくれるクマ五郎に、俺は魔鉱鉄のツルハシをクイッと見せて、


「ガツンとやって殺るから、クマ五郎達は見てて」


と、言って採掘現場の奥へと進む。


ゴーレム君達は採掘現場の一番奥のあの崩れた壁の土の中から生まれたのか?はたまた封印されていたのか?兎に角寝起きで機嫌が悪いのだろう…


などと考えながらデカゴーレム君に近づくと、


「ゴゴゴッ」


と、音がなり項垂れながら立っていたのに、背筋ピーンで俺をロックオンしてくる。


『ひぇー、近づくと更に怖ぇぇぇぇぇ!』


と少しビビるが、ブレイブハートする程ではないようだ。


ゴーレム君は近くの崩れた壁の圧縮された土の塊を ヒョイと掴み、癇癪を起こした子供の様に俺を目掛けてソレを投げつける…


「おいおい!パワフルボディーなのに遠距離攻撃かよ?!」


と文句を言いながら避けていくが、


元が土の塊、投げられた土壁な空中で割れて拳程の土の弾丸となって降り注ぐのだ。


そうなると避ける事も難しくこの雨に打たれる羽目になる、


しかし、盾を構えるとツルハシを片手で扱う事になってしまう…

しかしペアさんに付与してもらい生まれ変わったゴング爺さん作の魔鉱鉄とアーマーリザードの鎧は、そんな運任せの〈土団子〉ではビクともしなかった。


『イケる!デカイ塊を直撃しなければ、イケるぞ!!』


と鎧の性能に驚きながらも、俺は魔法の射程まで進み、アクアショットを奴に打ち込みまくる。


ジュワリと染み込む1.5ペットボトル程の水の弾丸は、次々とターゲットのスキルで俺だけに見える赤い点に向かい飛んで行ってはデカゴーレム君に染み込み続ける。


『ヨシ!そろそろかな?』


と心を決めて、


「やぁーってやんよぉぉぉぉ!」


と魔鉱鉄のツルハシに魔力を纏わせて、デカゴーレム君に駆け寄り、渾身の一撃を叩き込む!!


「ガキン!」


と甲高い金属音と共に、デカゴーレム君に亀裂が入る。


ヒビはゴーレム君の全身を駆け巡り、


そして、


中からかなり武骨な銀色の…


「ゴーレムが出てきたぁぁぁぁぁ!!」


驚きながらもツルハシを構え直す俺は、


『どこぞの民芸品かよ!

ケンリュウが割れて中から武骨なロム兄さんが…

あと、車田先生の専売だろ脱皮ネタは!!』


と心の中でも散々文句をつけてやった。


決着がついたと思って近づいたガタ郎が、


〈羽化したでやんす?…虫仲間でやんすか?〉


と言って騒いでいる。


俺は、


「まだだ!まだ、終わってないから!」


と、ガタ郎の接近を制止してアイテムボックスからマジックポーションを念のために飲む。


何故なら、銀のゴーレムにツルハシが傷を付けれなかった時点で残された手段が魔法しかない。


ミスリルの剣の雷魔法でビリビリさせたり、飛爪を放つにも魔力頼りだし…

俺は、ツルハシをアイテムボックスにしまい、かわりにミスリルコートの盾を取り出し、腰の雷鳴剣を引き抜き構える。


土のボディーをキャストオフした銀のゴーレムは、スピードを上げて体術を繰り出してくる。


俺は、盾でいなしながら、


『武骨なロム兄さんだけあって、天空宙心拳かよ!』


と、古い例えでボヤキながら、試しに間合いの外から飛爪を放つと、ギン!と見えない刃先が弾かれる。


「んだよ、駄目なのかよぉぉぉぉ。」


奥の手を一つ潰された俺は、悪態をつきながらも次の手段を考える。


『…少し装甲の薄い関節かな?狙うとしたら…あとはスピードが厄介だな…どうするかな?』


とパンチやキックを盾で受けながらも並列思考スキルで考え続ける。


たまに入る攻撃は装備が有っても衝撃が駆け抜け、


『チョー痛い…んですけどぉ!』


と、もう、半ばヤケクソで、奴の膝関節に向かってフレアランスを叩き込むと、



ジュルリと奴の関節を溶かしてダメージを与えた。


急に移動が鈍くなる銀のゴーレムに、


「どうした?グルコサミンが必要かい?」


と、声をかけここぞとばかりにサンダーを纏わした雷鳴剣の峰をスピードを上げて走り寄り、


「シビレステッキぃぃぃ!」


と、気合いを込めて奴の首筋に当てると、


壊れた人形の様にビックン、ビックンしたのちに動かなくなった…


「馬鹿め!銀は金属の中でも電気を一番通すんだよ…

あぁ、記録スキル買って良かった。

銀の特性を並列思考で検索してなかったら…有り難う、理科の松田先生…あの時の授業、今、やっと今役にたちました。」


俺は、中学時代の先生に感謝したのちに皆にグッと親指を立てて勝利を報告し、キョロキョロと辺りを確認した後に銀のゴーレムを丸ごとアイテムボックスにしまう。


すると俺の中に銀の塊を手に入れた喜びと、やっと終わった安堵感が押し寄せる。


ガタ郎は


〈ヤったでやんすね〉


と言いながらいつもの俺の影にチャプンと潜り、


クマ五郎に乗っかったミヤ子が、


〈お疲れ様でございます。次回は即死毒の効く相手を希望しますわ〉


と不完全燃焼気味なの事を訴え、


クマ五郎が、


〈王さまぁ、凄いんだなぁ~。〉


と、誉めてくれた。


皆で一応、辺りを確認して他のゴーレムが居ないか調べる。


ついでに索敵もかけて…

そして最後に鉱物資源感知もかけて…

チョイチョイとナイショで銀鉱石を採掘した。


『ち、違うんだからねっ、これは迷惑料なんだからねっ!』


という事で、かるい鉱山荒らしをした後に二時間以上かけて地上に戻り、鉱山の現場監督に報告したのだが、


「では、一緒に確認を…」


と言われて俺達はまた最下層に引き返す羽目になつた。


地味に討伐よりキツい移動を我慢して最下層に着くと、監督さんは、ゴーレムの要らない土と、こっそり採掘の要らない土を捨てた小山を指差されて、


「これは?」


と質問された。


『マズイ、コッソリ採掘がバレたかも…』


と焦りながらも俺はポーカーフェイスを保ちつつ、わざと少しイラついた声で、


「監督さん、何が一体だよ?!…見てみろ!!」


と言って3つのゴーレムコアを見せる。


「えっ?」


となる監督さんに俺は、


「間違った情報で依頼を出すと冒険者が危険な目に合います!

ゴーレムは大小合わせて四体でしたよぉ!!」


とわざと怒りながらゴーレムコアを再びしまう。


すると監督さんは、ヘコヘコ謝りながら、


「追加の報告と報酬を冒険者ギルドに渡しますので、ご容赦を…」


と言っていた。


『セーフ!』


と心で笑っている俺を他所に、監督さんが辺りを確認し終えてやっと依頼達成となり、俺達はまた二時間かけて坑道を登る…


『トロッコとか無いのかよ…』


と、俺は心の中で文句を言いながら長い上り坂を登りきり地上に戻った。



でも…早く銀の塊を現金化したいなぁ…楽しみだ…

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