第54話 走れガタ郎!


『さて、どうしよう?…』


数だけ見れば4対4ではあるが、ウチのミヤ子さんは生身の方にはほぼ無敵だが、状態異常にかからない、しかも、呼吸すらしていない敵にはほぼ無力…


ガタ郎の顎も、岩には対抗出来ないのは岩亀の時に確認済みだし…


クマ五郎だけは対抗出来る可能性が有るが、すると2対4の構図になる…不利だ…


『4体なんて、聞いていない!依頼文に偽り有りだ!!』


と言ってキャンセルも出来そうな案件だが、復帰早々、往復6日も掛けてキャンセルは…何か嫌だし…と頭をフル回転させて考える。


現在敵は待機状態で、近づけば起動して敵を排除するか己が破壊されるまで活動する鉱物魔物…

鉱山の職員さんが全員逃げれた事から足は早くはないと考えられる。


しかも、離れば排除とみなされるみたいだ…それが証拠に現在は活動を停止している。


つまり、ある程度逃げれば仕切り直しが出来る…


広い採掘現場では無くて、一体ずつ坑道に誘き寄せれば、数の不利は何とかなるし最悪ダッシュで逃げれば何とかなりそうだ。


関節も硬そうなゴーレム君は、坂道とか苦手そうだし…狭めの坑道では一体ずつしか襲ってこれなさそうだから…という事で、


「ヨシ、決定!広場では戦わないで、一体ずつ引き寄せて倒す!!」


という結論に至り、


『ガタ郎、君に決めた!一体ずつ引っ張って来て』


と心の中で指示を出すと、どうやら今回は硬い敵なので出番無しと思ってのんびりしていたガタ郎さんが、


〈えっ、アッシでやんすか?……了解でやんす…〉


と、渋々採掘現場に飛んで行く…しかしガタ郎は途中で振り向いて、


〈全部動き出したら、どうしたら良いんでやんす?〉


と不安そうだ、


『ダッシュで逃げる…かなぁ?』


と俺が心の中でいうとガタ郎は、


〈かなぁ?って何でやんすか!

ゴーレムが腕とか飛ばしてアッシがプチっとされたらどうするんでやんす〉


と、軽い文句をいうので、


「すっごく、悲しい」


と、伝えるとガタ郎は、


〈…悲しい…くそぉ~、旦那様のそう言うところ…大好きでやんすっ!!〉


と、半ばヤケクソで、命がけのだるまさんが転んだを始めた。


手前の三体のゴーレム君は、先頭に一体と、奥が二体の配置だ。


多分先頭のゴーレム君は鉱山職員を追って細い坑道の手前まで来たが奥の二体は手前のゴーレム君が邪魔で、職員さんを見失い一足先に排除判定を出したのだろう。


だとすると、結構ゴーレム君の警戒範囲は狭そうだ…採掘現場の入り口から息を殺して、ガタ郎を見ている俺たちと待機状態のゴーレム達…


現在この空間で活動しているのは、飛ぶのを止めたガタ郎が地面をカサカサと動いているのみだ。


カサカサっとゴーレムに近づいては停止し、様子を伺うのを繰り返し遂に、


「ガガガッ」


っと動き始める一体目…奴は立ち上がり、ズシン、ズシンとガタ郎を追いかける。


〈ヒイィィィィイィィィィ!連れて来たでやんすぅぅぅぅぅ!!〉


と、一体のゴーレムをトレインしながらカサカサ逃げてくるガタ郎さん…

しかし俺はその勇姿が一瞬闇の一族にも見えてブレイブハートしそうになる…


そして、一体目が狭い坑道に入るのに少し手間取っている瞬間に、俺が、アクアショットでゴーレムの土のボディーを濡らして脆くし、ボクサーの様な構えのクマ五郎が、


〈熊の様に舞い、熊の様に刺す!〉


と、見事なクマパンチで弾けるゴーレムの胴体…現になった魔石をクマ五郎が掴み後にポイっと投げる。


体から魔石が抜き取られたゴーレムは、〈ガラガラ〉と崩れて小山になり、


俺はそれをアイテムボックスにしまう。


投げ飛ばされた魔石は、ミヤ子が、えっちらおっちら運んでくれて、


「有り難う、ミヤ子」


と、今回の出番の少ないミヤ子に労いの言葉をかけながら回収し、アイテムボックスのリストを頭の中で確認すると、


〈土〉・〈石〉・〈ゴーレムコア〉・〈魔石〉


と、出た。


『うーん、銀鉱石は無いか…ハズレだな…はい次』


と配置に付く俺たちと、


〈もう、次でやんすか?〉


と、ガッカリするガタ郎…


再びカサカサと死のだるまさんが転んだを始めた。


しかし、次なる鬼さんは仲良し二人組…


案の定、二体共に動き出しガタ郎を追いかける。


〈ヒイィィィィイィィィィ!!、ごめんでやんすぅぅぅぅ!二体でやんすよぉぉぉぉ!!〉


と騒ぎながら帰ってくるガタ郎に俺は、


「そのまま来い!!」


と指示をだす。


〈了解でやんすぅぅぅぅ!〉


と半べそで坑道に戻ってきた。


坑道は狭い為に、どう足掻いてもゴーレム達は一体ずつになる。


同じ手順で、濡らしてクマパンチをお見舞いして敵を沈める。


仲良し二体の片付けも終わったが、残念ながら銀鉱石は出て来なかった…

幸運のペンダントはあまり効果が無かったのか、銀鉱山のゴーレムなのに銀は勿論、鉱石の収穫はゼロだったのだ。


しかし、魔力の腕輪の効果はは凄い…あれだけ魔法を撃ち込んでもまだまだ魔力が有る。


『外部魔力タンクのおかげだな…』


と感心する俺だった。


そして残る敵は少し大きなゴーレムのみになった。


「ヨシ、アイツは広い場所で俺が、一対一で倒す!」


と宣言すると、


〈もう、走らなくても良いんでやんすか?…ホッ…〉


と、精神的にも肉体的にもクタクタのガタ郎が安堵していた。


お疲れ様ガタ郎…

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