第51話 ピエロの苦悩と怒り
サムさんとミーシャさんに即刻三者会談を申し込み話を擦り合わせた結果、やはりマリアーナ姫様とサムさん双方に行き違いがあり、忘れて次に進もうともがいたマリアーナ様は在らぬ方向に拗らせ続けて、サムさんは一刻も早く姫を迎えに行ける立派な騎士になるために姫との面会も避けて業務に励んでいたらしい…
そんな負のループを7年以上…聞いてるだけで、もどかしい…
そんな中、姫は俺に待ち望んだ魂の乗った一撃を食らい嬉しくて、嬉しくて、震えたらしい。
『全くもって、迷惑な話だ…』
サムさんが、さっさと「好きだぁ!」と一撃入れれば、とっくに夫婦の出来上がりでハッピーエンドだったのに…
サムさんを引きずって皇帝陛下に面会を申し込んだら…皇帝陛下が、
「ポルタくん、案外早く気が付いたね…」
と白状しやがった。
『あんにゃろめ!解った上で俺に、この二人に心の変化を促す起爆剤にしやがった!!』
という事実を知らされただけだった。
皇帝陛下の立場的にサムさんに直接姫との関係を問いただすと、良くない圧力を感じて姫とくっついたなどと誰かに思わせる行動は避けたいらしく、
だから、困った俺が駆けずり回り二人を何とかするのを期待していたらしい…
まぁ、一番の理由が、数年ぶりに姫様の恋愛スイッチをオンにした俺をサムさんに見せて焦らすことを目的としようと皇帝陛下と仲良し奥さまチームの共同作戦だったようだ。
『ふっざけんなし!!』
と、怒りに震える俺だったのだが、結局は全ては皇帝陛下の作戦通り…俺は見事にピエロを演じきった形になってしまった。
『よし、地下に潜む三千の闇の住人に皇族とサムさんのベッド周りをカレンダーに3のつく日は走り回る依頼をして、マリー達みたいに現地採用組として配下にすることを前向きに検討しようかな?』
と、真剣に考えながら俺は皇帝陛下のムカく話を聞いていた。
皇帝陛下にサムさんは、
「陛下、私のような小隊長が姫様に愛を伝えても…」
と自信なく聞くと皇帝陛下は、
「余は、本気で姫に向き合ってくれるのであれば、それこそ冒険者のポルタ君にでも嫁に行かせる気であったのだぞ」
と俺にウィンクする。
『イラッ、ウィンクすんなし!こっち見んなし!!
あっ、俺、この皇帝陛下苦手だわ…うん、今気がついた…』
と、皇帝アレルギーな事を確認出来たことだし俺はもう、
『さっさとマリアーナ姫をサムさんがシバき回してドMをトキメかせてくださいな…俺は、もう、普通の冒険者に戻りたいです』
との気分になっていた。
夜になってしまったが宮殿からガイナッツ王の館にサムさん達に送ってもらった。
しかし、行きとは違い、近衛騎士団の部下達は和やかなムードで、
「朝はすまない、小隊長の恋敵かと思ってまして…」
と頭を下げられたが、
『てめぇらも、解っていながら行動に移さずに…
近衛騎士団の宿舎も3のつく日はカサカサの日にしてやろうか!?』
と怒りを覚えながら館に戻り晩御飯も食べずにふて寝をした。
翌朝、早くに目が覚めてしまい色々考えたが、イライラが続いている…
俺は、
「よし!二度と帝都に来なくても良いように、帝都を満喫して帰ろう!!」
と心に決めた。
何故、俺が帝都を目指したかというと、図書館でこの世界の知識とスキルの情報などを知りたかったからだ…
しかしあと半月で全てを吸収するには時間がない。
並列思考で読み続けても2倍速…速読みたいなスキルあるかな?と考えるがそもそもアホみたいな情報量を仕入れても、頭に収まり切らないかもしれないし…
困った…残っているトレントボーナスが大金貨二十六枚…まだ、商業ギルドに貯金もあるし、追加で暗記できるスキルとかをスキルショップに買いに行っちゃおっかな?
そもそもそんなスキルが有るか?朝食の時に〈ペアえもん〉に泣きついてみよう、スキルの事なら何でも知ってるペアさんに相談だ!
スキルの自棄買いに、もう装備が出来るまで誰にも会わずに〈本の虫〉になる!!
と考えてたら、
〈遂に旦那様が身も心も虫の王になるでやんすか?〉
とガタ郎が寝ぼけ半分で影の中から話かけてくる。
「うん、色々やってスッキリしなかったら、闇の虫まで配下にする王様になって皇帝陛下に戦いを挑むかもしれないよ」
と言ったらミヤ子が、
〈ふぁー、王様、誰かに死の粉ならワタクシに言って下さいまし…〉
と起きてしまった。
俺は、
「ミヤ子も有り難う、もしもの時はよろしくね」
と言ってから、
『あっ、もう一匹にも挨拶に行くか…』
と、クマ五郎のいる厩舎に向かい
「クマ五郎、ごめんね、あんまり来れなくて、」
というと、
〈別に良いんだなぁ、ご飯美味しいしぃ~、安全だからぁ〉
と完全にだらけているクマ五郎…
コイツも最近は女性騎士団員の方々が撫でてくれるのでストレスなしでマスコット生活を楽しんでいるようだ。
まぁ、満足してるのなら良いか…
満足してないのは俺だけかもな…ちくせう!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます