第50話 お茶会デートと真実


皇帝陛下達とのお茶が終わり俺は精魂尽き果ててぐったりしながら部屋で休んでいる。


とりあえず俺が


『12歳でマリアーナ姫が26歳なので…』


と遠回しに年齢も、身分も違う事を全面に押し出してみたら皇帝陛下が、


「うーん、じゃあ侯爵位と領地をつけるよ。

だったら、第一婦人としてマリアーナを娶っても、第二婦人は若い娘に…」


と、お貴族の常識を押し付けてきた…


俺は、もう思い付く限りの言い訳を並べてみた。


「私の宗派が一夫一婦制だ」


とか、


「アルトワの近くで養蜂家として暮らす予定」


だとか、


「世界を回る予定で定住は当面しない」


とか…何を言っても皇帝陛下チームは打開案をすぐに出してくるし最後には、


「ポルタ君は娘は嫌いか?」


と聞かれ、『面倒臭い!』とも言えずに、


「好きの、嫌いの、判断出来る程もマリアーナ様を良く知りません」


と言ったら皇帝陛下が、


「じゃあ、とりあえずお互いを知るところからだ…デートだね」


と…俺が、


「12歳っすよ?」


と食い下がるも皇帝陛下は、


「大丈夫、余は7つで婚約したし、16の歳には父親になっておる…」


と…


『…んだよ、異世界!!結婚適齢期が早ぇよ益々、26歳を押し付けたい意味がわかった…』



てな訳でデートの約束とストーキングの中止を交換条件に帰って来て、ガイナッツ王は1つ問題が解決してルンルンだが俺は、もう疲れました…


ベッドサイドでミヤ子が、


〈我が王を虐める奴に、死の粉を撒いてきますわ!〉


と、俺を心配してくれている。


…もう、コックローチパイセンと契約して、半月がかりで卵を産みまくりの増えまくりで、この帝都を黒い恐怖に沈めるしか無いのか…


いやいや、相手は人間、話せば解ってくれるかも…


とりあえず、デートは決定してしまったから姫様としっかり話をして…何とか…なるかなぁ~?



などと不安ばかりが募る2日後に宮殿からの迎えの馬車がきた。


俺は市場に売られる仔牛どころが、肉屋に売られた肉牛の気分で馬車に乗る…

近衛騎士団のサムさんというお兄さんと部下の近衛騎士団の方々が直々に宮殿まで護衛してくれる…と、言うか途中で逃げないか?の見張りの様に物々しい…


『罪人の護送ですか…これ?』


と思えるほど、何故か嫌な圧を感じる。


特に会話もなく宮殿に着くと次は使用人の方々にドナドナされて、風呂で丸洗いされ高そうな服を着せられ、


「頑張ってこい!」


と送りだされた。


『ちなみに、すべて男性使用人でした』


まぁ、デートと言っても中庭の花壇を眺めながらお茶をするだけなのに、こんな親戚の結婚式に行くみたいなパリッとした格好の子供に仕上げなくても…

と思いながらも通された中庭の鉄製の白いテーブルには既にマリアーナ様と侍女のミーシャさんが座っていた。


俺が、


「お待たせ致しました」


とテーブルに向かうがミーシャさんは、


「いえ、この度は姫様とのお時間を作って頂きありがとうございます」


と挨拶をしてくれたがマリアーナ様は下を向いたままだった。


テーブルでお茶を飲んでいる間も下を向いたままで、ミーシャさんにまたにゴニョゴニョと話し、ミーシャさんから又聞きをするという大変面倒臭い伝言ゲームをしている。


ミーシャさんと直接話した方が早いし、盛り上がりそうな感じだが、根気強く姫様に語りかけて何とか顔を上げて少し話してくれる迄にはなった。


『なんでこんな激イタ女に必死にならにゃ…』


と、客観的にバカらしくなる自分も居るのだが、ほぼミーシャさんからではあるがマリアーナ姫がここまで拗らせた理由を聞く事ができた。


事の始まりは十数年前マリアーナ姫様には1つの縁談が有った。


全く好みでは無い14も離れた若い辺境伯だったのだが、歳や見た目より何より、パーティーで会った事のあるその辺境伯の中身がとても好ましくなかったそうだ。


縁談を断りたいが少女の姫にはどうしたら良いか解らない…

マリアーナ姫は宮殿の屋根裏に逃げ込み、三日間隠れ続けて、お見合いの当日をやり過ごしてお見合い自体はケチが着いた為に無くなったのだが、

姫という役目、褒美の替わりに嫁に行く事も有ると解っては居るが魂の奥から嫌な人物に嫁ぐのはどうしても許せない。


親は、あの辺境伯だけは嫌だと言っても聞き入れてくれなかった…

いざとなれば、姫は宮殿から抜け出して一人で生きて行ける様になりたい…いや、成らなくては!と、冒険者みたいな強さに憧れて剣を握る様に…

そして、近衛騎士団に成り立ての青年に剣の稽古を手伝ってもらい、いつしかマリアーナ姫は青年に恋を…


『ちょ、ちょい待ち!!それだと話が変わってくるよ…いいよ!、いいよ!恋しちゃいなよ!!!』


と俺ははやる気持ちを抑えて、


「それで?」


とミーシャさんに聞くと、


「姫は騎士団の青年に貴方の本気を私にぶつけて欲しい!とお願いしたのですが」


青年は、


「私からは何も…ただ上を目指し、強くなるだけです…」


と、取り合って貰えず…


『ん?へっ?…何の告白の、何の返事?

あれかな、お貴族様独特の風習とか言い回しかな?』


などと考えても解らない俺は、改めてミーシャさんに確認をした。


「えーっと、姫様は本気の剣を受け止めてみたいとお願いしたのですよね…」


と聞くと、ミーシャさんは、


「はい、姫様は言葉よりも剣で語らえば、本当の気持ちが流れ込むからと…」


と答えた。


『若干よく分からないが、Mっぽい発想なのは理解した。

熱い一撃を打ち込んでみろ!!と…

んで、若い近衛騎士は、熱い気持ちを伝えて!!

と、言われたと思い、言葉に出さないが、出世を目指す…って…好き同士じゃねぇかよ!!

登場人物が残念賞なだけでちゃんとラブロマンスじゃねぇ~か!!』


と理解した俺は中庭から見上げた青空を見ながら、


『あぁ、俺に天からの光りが差し込んできた…』


と、この一件の打開策を見つけ神に感謝していた。


そして、お茶会の帰りに近衛騎士団のサムさんに、


「ちょっと付き合え…」


と騎士団の練習場に連れて来られて、


「貴様に姫様は似合わない…」


と剣を構える…サムさん…って、


この時俺の中で点と点が一本の線でつながり、


『ビンゴじゃねぇ~かよ!!ありがとう神様…たまには感謝の祈りを捧げてみるもんだ…』


と、早速の神のお導きを喜ぶ俺は、アイテムボックスからナタを取り出して、


「俺も、そう思う!」


と言って構えた。


だが、サムさんは俺の返事を聞いて、


「へっ?」


と一声上げて固まってしまった…


これは、姫様抜きでミーシャさんとサムさんに会議を開いて貰うしかないな…


面白くなるぞぉ~。

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