第48話 帝都で楽しいショッピング


心強いアドバイザーと一緒に帝都のスキルショップにやってきた。


帝都はアルトワの国と違いダンジョンで手に入れた商品をダンジョンショップが買い取るのではなくスキルはスキルショップ、武器は武器屋だし、ポーションは薬屋と専門店で扱っている。


スキルショップこそ国営で値段が決まっているが、その他の商品はライバル店の影をちらつかせ上手に値切れる強者のみが得をする修羅の国だ。


帝都に来たばかりの俺には荷が重い…

まぁ、スキルショップで値切ることはまず無いので、ある意味安心だが…


ペアさんは付与師という事で、歩くスキル図鑑の様にオススメのスキルや、スキルに対しての素朴な疑問にも即座に対応してくれる。


ペアさんのオススメは


並列思考という同時に2つの作業が出来るスキルで、剣で戦いながらの魔法発動や、違う魔法の同時発動にも使えるらしい。


そして、俺がインセクトテイマーだと知ると〈従魔召喚〉をオススメしてくれた。


従魔にしかつかえない上に、召喚すると送喚しなければ再び召喚できない、縛りの多いスキルで不人気だが、何処かに拠点を作り、そこから召喚してそこへ送喚すれば、つれ歩く手間が不要になるらしい…


将来的には、マリー達の山に拠点を作る予定だし、影に潜れるガタ郞は良いとして、ミヤ子やクマ五郎はかさばるから良いかも知れない。


あとは、剣に付与する〈雷魔法のサンダー〉の魔法スキルで魔力を抑えて纏わせるとスタンガンみたいな効果になるし、フルパワーで纏わせると、魔法剣の様にもなる浪漫武器になるらしい。


『久しく忘れていた中二心が擽られる』


しかし、並列思考が有っても魔法が使えないと意味がない…雷魔法を俺自身が取得する手もあるらしいが、魔法剣の発動にはかなりの集中が必要で、スタンガンみたいな使い方をする場合は、もっと繊細な作業になってしまうらしいので実用的ではないらしい。


剣にスキルを付与すれば魔力の供給量の強弱のみで、ほぼ自動発動してくれるそうだ…


『難しいなスキルって…』


では本人用の魔法という事で〈エアカッター〉という風魔法…云わずと知れたカマイタチと〈アクアショット〉という水魔法で、硬い土系の魔物を脆くしたり、濡らして雷魔法の効きを良くしたりと、応用が効きそうな魔法だ。


全てを購入しても、

お値段なんと大金貨11枚…グフッ…一千百万円…


『まだだ、まだ戦える!

まだ財布のダメージは活動限界に達していない…』


ありがとうトレントさん達…君たちの死は無駄になってないよ…


などと一人で盛り上がりながらスキルを購入したあとは、ペアさんオススメのガラクタ市場を回る。


壊れた魔道具や壊れたダンジョン産の武器が並ぶ露店の集まった場所なのだがたまに物凄い掘り出し物もあるらしい。


しかし壊れていてもスキルが生きているモノもあり付与師には宝の山が捨て値で買える場所とのこと…


ただ、鑑定の無い俺にはただのガラクタの山に見える…


だがペアさんは目を輝かせながら、


「やった。修繕のみだけど付いてる指輪がある」


「嘘、運気上昇のスキルがまだ生きてる首飾りだ…

ポルタ君の今装備してる腕輪も性能を上げれるわ…」


などとルンルンである。


そして、お会計は俺が払うのだが…

大銀貨数枚…金銭感覚がバグったのか駄菓子くらいに感じる。


俺は、


「ペアさん、気にせずガンガン購入してください。何なら追加で料金を支払いますので、ゴング爺さん作の防具にも付与をお願いします」


と、提案するとペアさんは、


「いいの?本当に…ヤッタァー!」


と無邪気に喜んでいる。


俺は、俄然お買い物モードが加速したペアさんについて歩くのがやっとだ。


こちらの店で支払いをしていると、既にあちらの店で値切っている…


『待って…見失いそう…

あと、人混みで酔いそうだ…

ただ、今夜はグッスリ眠れそう…』


などともう、クタクタ状態の俺にペアさんは


「宝珠だ!少し小粒だけど…ねぇ、ポルタ君、宝珠も買って良い?魔力を貯めておける効果が有るの」


と、元気なご様子…

ペアさんは露店のおっちゃんに、


「もっと良いの隠してるでしょ?いいから出しなよ」


とカツアゲみたいな交渉をしている。


『凄いタフだな…』


と俺が感心していると、


〈旦那様、市場の入り口に姫様がいるでやんす〉


とガタ郎が影の中から報告する。


『マジか…』


と呆れながら俺は、商品を見るふりをして入り口付近を確かめると、

ハンカチをギリギリと噛みしめるストーカーとその侍女の姿が確認できた。


『 何故かご立腹のご様子だが?…』


と俺が考えていると、


〈ちょっと調べてくるでやんすっ〉


と、ガタ郎がスルスルと影を渡りガラクタ市場の入り口の柱からこちらを伺う姫様の元へと移動していく…そして暫くすると、


〈戻ったでやんす。

姫様は、何よあの女!ポルタ様と仲良く買い物なんかして…ミーシャ!何とかならないの?ぐやじぃ~

との事でやんした。〉


と報告してくれた。


ペアさんとかに被害が及ばない様に手を打たないと駄目かなぁ~?…


と、このストーカーを何処に相談するべきか悩む俺だった。

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