第46話 地獄からの解放と更なる地獄


投獄されて丸一日…俺はようやく牢獄から出して貰えた…地獄だった…


前回より短いが、しかしまだ安心は出来ない。


今から皇帝陛下に改めてご挨拶する事になっている…らしい。


控室の様な部屋に宮殿の騎士団の方に誘導されて、


「暫くここで待つように」


と言われて大人しく待っていると、


ガイナッツ王国の皆さんが現れゴング爺さんが半べそをかきながら、


「ポルタよ、大丈夫じゃったか?」


と、駆け寄り王様も、


「なんと言って良いのやら…」


と複雑な表情だ。


俺は、


「皆様、ご心配をお掛けしました。」


と頭をさげる。


すると、王様が、


「ポルタ君は本当に、おかしな…いや、個性の強い人間に絡まれるんだな…ボルトから報告を受けたよ。

自棄を起こして宮殿を地獄に変えるのを思い止まってくれて感謝する。

事と次第によっては戦争だったからね…」


とため息をついている。


しかし、俺は遠い目をしながら王様と同じ様にため息をつく…

ボルトさんが心配しながら、


「ポルタ君、昨日よりやつれてない?何か有った…え、もしかして、拷問とか…?!」


と聞いてくる。


俺は、


「拷問…有る意味そうですね…」


と答えると、王様は、


「皇帝陛下からは、姫が目を覚ますまでの形式的な投獄と聞いていたのだが…」


と何か考えているが、


『原因は奴らだ…』


俺は再びため息をついて理由を話す。


「いえ、宮殿の正式なメンバーには何もなされておりません…しかし、勝手に宮殿に住んでいる、とある黒光りする一族が、昨夜、一族総勢三千余りを引き連れて、〈王よ、出陣の号令を!〉って俺の回りを取り囲みまして…ブレイブハートが発動しても尚、とりあえず、帰れ…いうのが精一杯で…今思い出しても体が震えます…」


と、昨夜の地獄の光景を思い出してしまい、真っ青になり震える俺を見てボルトさんが優しく肩に手を置いて、


「良く頑張った」


と、だけ言ってくれた。


王様は、はてな?っとなっているので、ボルトさんが内容を耳打ちすると王様まで真っ青な顔になる始末であった。


とまぁ、そうこうしている内に謁見の時間となったようで宮殿の係の方に、


「皆様こちらへどうぞ」


と案内されて謁見の間へ…

凄くデカい広間に、兵士と数名の貴族かな?と、皇帝陛下とそのご家族かな…

とりあえず、この〈マルス帝国〉のトップの方々が並ぶ部屋に王様の後について入って行く。


皇帝陛下が、


「ガイナッツ王よ昨日ぶりだな、して、我がおてんば娘を一撃のもとに気絶させた少年を紹介してくれぬか?」


と愉快そうにしている。


王様が、


「はい、皇帝陛下。

こちらに控えておりますポルタが、昨日、姫様の襲撃を受けて返り討ちにした者に御座います」


と、何とも嫌な紹介をしてくれた。


俺は、ポーカーフェイスを装い、


「冒険者をしておりますポルタにございます」


と、言って片ヒザをついて頭をさげる。


皇帝陛下は、うん、うん、と頷いて、


「余が、マルス帝国皇帝、アルフリード・エルド・マルス 13世である。

昨日は娘が失礼をした…許して欲しい…」


と頭を下げる。


俺は、


「皇帝陛下、どうかお顔を…

悪いのは私でございます。

姫様と知らずに、宮殿内で武装した上に峰打ちにて返り討ちにしてしまい申し訳御座いません…」


と深々と頭を下げる。


皇帝陛下は、


「ポルタと申したな。

そなたこそ頭を下げる必要はない…既に娘は昨日の内に目を覚ましておってな…直ぐにでも、そなたとの面会の場を設けようとしたのだが、

心の準備が…とか申して部屋から出て来なかったのだよ。

形式的とは言え、一晩投獄する形になってしまった…許せ。

ほら、挨拶をせぬか?!」


と、促すと、前に並ぶ中から1人の女性がモジモジしながら一歩前に進み出て、


「ぽっ、ポルタ様、マリアーナ・エルド・マルスですの…昨日のポルタ様の一撃…あんな凄いの初めてでした…ハァハァ

年上の女はお嫌いですか?…モジモジ…」


と…


『なんだろう?この痛々しい女性は…』


と可哀想な娘を見る目で眺めていると皇帝陛下は、「ガッハッハ」と笑い、


「冒険者に憧れ、自らを正義の影と名乗り、宮殿の屋根裏を彷徨くおてんば娘が、そなたに惚れた様で女性らしく恥じらっておるわ!愉快、愉快!!」


と、楽しそうだ。


『中二病を拗らせてる、アタオカ娘じゃねーか!』


と心の中でツッコむが顔には出さずに、


「私などが、姫様に惚れられる要素が御座いませんが…」


と答えると。


皇帝陛下は、肩を揺らしながら、


「娘に本気の一撃を入れたのは、ポルタよそなただけなのだ。

皆、気を遣って反撃をしたことが無い…

余は、一度コテンパンにせよと言っておったのだが、今の今まで誰も反撃をしなかった。

おかげで娘が余計に調子に乗ってしまってな…初めて本気で打ち据えられた、そなたの一撃に愛を感じてしまったらしい」


と、あからさまに笑いを堪えながら説明してくれた。


チラリと振り向いたガイナッツの王様達も可哀想な子を見る目をしている…


『ドMでもあるのかよ…』


と呆れる俺だが、年上でも大丈夫ですが痛い女と面倒臭い女と性癖が尖ってる女だけは苦手なので…


彼女になりたそうに見ないで下さい…

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