第45話 どうしてこうなるの?


盗賊達は近くの街に引きとって貰い、俺は死体安置所としての仕事からも解放された。


その後は特に問題も無く、ただ、ただ長い馬車の旅が続いた…

そして、やっと到着した帝都は、デカい、兎に角デカい…というのがこの街の感想である。


大きな商会が立ち並び、広場にはお祭りなのかな?と、思うくらい多くの露店が並んでいる。


道は広いが、狭く感じる程に人も多く行き交いとても活気があふれているのだ。


『このまま宮殿まで移動して、皇帝陛下に謁見するイベントさえ無ければ楽しいのに…』


と、少しこの後の面倒臭いイベントが頭にチラつきながらもきらびやかな宮殿に到着し、俺達は謁見組と待機組に別れて謁見組はお風呂に案内された…


『お風呂で体を清めて…って、何か建物に入るなり体を清めるって…注文の多い料理店かよ…』


と、考えながらゴング爺さん達と風呂に入る…


『心ときめかない光景だよ…』


宮殿の風呂だよ!メイドさんが「お背中を…」みたいなのじゃないの?


俺の隣からは、


「うぃぃぃ…」


とか


「あぁぁぉぉぉっ」


とか爺さん達の喘ぎ声が響く…


「うぅぅぅ、こりゃ極楽だなぁ…」


「ちげぇねぇ…」


と…俺からすれば、地獄絵図である。


風呂から上がり、俺は王子様のお古に袖を通して、謁見前の控室で、王様達の貴族組と合流してから謁見となる。


王様達もいつもよりキラキラした服だし、爺さん達は良く解らないが、お揃いのローブを着ている。


『職人の正装だろうか?…』


などと思いながらも、皆で長い廊下をぞろぞろと移動して謁見の間に向かうが、何だかじっと見られている気がする…


『凄く嫌な感じがするよ…』


と心の中で呟くと、


〈凄い敵意を感じるでやんす〉


とガタ郎も嫌な気配を感じている様子…


すると俺はいきなり宮殿内で斬りかかられたのだった。


ガタ郎が影から飛び出して、顎で相手の短剣をいなしてくれたが、まだ黒ずくめの敵は構えを解かない。


黒づくめの敵は、


「本性を現したな…魔物を隠し持って宮殿に入り込むとは大胆な賊だ…成敗してやるからそこへなおれ!!」


と、可愛らしい声の敵は再び斬りかかってくる。


ガイナッツの王様も爺さん達も唖然とする中、俺は、


『アイツの殺気はマジだ…殿中で刃傷沙汰とは…切腹ものだが、放っておいても俺はアイツに無理やり切腹させられる…』


と焦りながら、


「手荒い歓迎は帝都の流儀ですか?田舎者の俺には解りかねる!!」


と相手を威嚇しながら魔鉱鉄のナタを構える。


ガイナッツ王が、


「ポルタ君!それは駄目だよ刃物をしまって!」


と俺にいうが、


「王様、黙って切られるなんて嫌ですよ。

従魔は宮殿内でも報告すれば良かったはずでしたよね?!」


と俺が聞くと、王様は、


「そのはずだが…」


と言っている。


『ますます、攻撃された理由が解らない…』


ガイナッツの騎士団はこの場に居ないし、ガイナッツ王の近衛さんは王を守っている。


あいにく宮殿の兵士さんも居ないエリアなのか白昼堂々賊はその間もナイフで俺を狙って幾度となく襲いかかる。


スピードは有るが俺よりは遅い…

少しイラついた俺がナタの峰で黒づくめの敵を打ち据えて無力化した所でやっと宮殿の兵士さん達が現れ…



はい、現在、絶賛投獄中です…


『なんでだよ!!コレが帝国のやり方かぁぁぁぁぁぁ!』


と叫びたいがぐっと堪える。


俺はどうしても目的地にたどり着かない呪いにかかっているのかもしれない…

今回は王様の顔を立てて、素直にアイテムボックスの中身を全て…それこそ干し肉の一欠片まで提出し、ガタ郎は爺さん達に預けて何もない状態で牢屋に入っている。


『全く持って腑に落ちない!』


怒りは込み上げるが、どうしようもない。


「もう、嫌だけどこの宮殿のコックローチ一族を集めて従魔にして、この宮殿を恐怖の渦に落としてやろうかな…」


と呟くと、


〈クックック、待っておりましたその台詞〉


と牢獄の排水溝から聞こえてくる。


『マジで奴がいる…』


と、背中に冷たい汗が流れるが、


「よぉ~し、お、俺は、あ…悪魔に、魂を売って…」


と決意しようとした瞬間、


「駄目に決まってるよね。」


とボルト騎士団長にツッコまれた。


ボルトさんが小脇にガタ郎と肩にミヤ子を乗せた状態で俺の牢屋にやって来たのだ。


「いつから居たの?」


と聞く俺にボルトさんは


「悪魔に魂を売りそうなセリフの辺りかな…

いやね、ガタ郎とミヤ子が殺気を振り撒いていたから、ポルタ君の所に連れて行く条件で誰も攻撃しないでねってお願いしたら、頷いてくれたからこうして…

って…ポルタ君は悪魔に魂を売って何するつもりだい?」


と聞いてくる。


〈五月蝿いぞ人間!我と王の語らいを邪魔するな!!〉


と俺の頭に奴の声がする。


するとガタ郎とミヤ子が、


〈五月蝿いのはお前でやんす〉


〈お前ら一族まとめて毒殺してやりましょうか!〉


と、イライラしながら言うとカサカサと奴らの気配が遠退く…


ボルト騎士団長は、


「悪魔?が去ったみたいだけど…ポルタ君、本当に何を企んでたの?教えてくれよ」


と興味津々だったので、俺は、


「この理不尽に対抗すべく、排水溝にいたコックローチに一族を集めさせて、全てを配下にしてこの宮殿を恐怖の渦に落としてやろうかと…」


と、白状するとボルトさんは、真っ青な顔をして、


「えげつない事を…

俺ってもしかして帝都を今、一人で守り抜いたのでは? 」


と呟いている。


ミヤ子が、


〈あんな奴らを使わなくても、ワタクシが死の粉を撒けば…〉


と物騒な提案をして、ガタ郎は、


〈首チョンパ祭りでやんす〉


と騒いでいる。


ボルトさんは二匹の様子を見て、


「あんまり聞きたく無いけど、お二人は何と…?」


と聞いてくるので、


「死の粉を撒いて、首チョンパ祭りをするって…」


と俺が教えると、


「絶対止めさせて!」


と慌てるボルトさん。


俺が、


「駄目だってよ…」


と言うと二匹は渋々納得してくれた。


ボルトさんに


「なんで、こうなったんです?」


と聞くとボルトさんは、


「あぁ、ポルタくんが峰打ちしたあの〈自称 正義を守る影!〉は第三皇女らしいよ。


冒険者になりたいヤンチャ姫の(曲者!成敗する)ごっこ…みたいなアレ…らしい」


と気の毒そうに話してくれたが、


『俺、滅茶苦茶アウトやないかぁ~い!』


俺は理解して半ば諦めて、


「帝都の処刑はなんでしょうか?…縛り首かな…打ち首かな…どうせ死ぬなら一矢報いてから…」


と呟いているとボルトさんは、


「処刑されないから!落ち着いて、絶対止めてね!!」


と慌てる。


…えっ、王女シバいたのに処刑はないの?…

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