第44話 帝都に行くの?
大金を稼ぎ、懐がホッカホカの俺はゴング爺さんの工房に向かうと、マット爺さんもベルト爺さんも一緒にごそごそと何かの用意をしている。
俺が、
「爺さん達、何してるの?」
と、聞くとゴング爺さんは、
「おう、ポルタよ…お前さんも、移動の用意をしとけ、明後日帝都に向かうぞ…」
と、ゴング式・の馬車のパーツを木箱に梱包している。
「えっ、どういう事?」
俺が質問するとマット爺さんが、
「凄く良いトレントの銘木が手に入ったから、王様が皇帝陛下に馬車を贈るんじゃよ」
と教えてくれた。
ベルト爺さんも作業をしながら、
「帝都には皇帝陛下のお抱え職人が居るんだが、技術指導としてワシらも同行する事になってのぅ」
と言っている。
俺が、
「そう、頑張ってね」
と言って帰ろうとするとゴング爺さんが、
「だから、お前さんも行くんだよ?!」
と引き留められた。
『くっそー、アホなふりして帰る作戦が…』
と、作戦の失敗を悔やみながらも俺が、
「なんで、俺までぇ~?」
と、ダメ元でゴネてみたが、
「発案者を連れて行かない訳ないだろ?
息子達の迎えも兼ねてるから帝都で馬車を作る間に息子に剣を打ってもらえ…
あと、帝都は世界中から品物が集まる、スキルでも何でも揃ってるぞ!
行って損はないから大人しく皇帝陛下に会いに行くぞ」
と、ゴング爺さんに言われてしまった。
『拒否権はないようだ…』
俺は、最後の抵抗として、
「皇帝陛下に謁見出来る服なんて俺…持って無いから…」
と、渋るとゴング爺さんは、
「既に、国王より王子のお古を賜っておる…」
と即答され、
『クソっ…万策つきた…』
と膝から崩れ落ちる俺がいた…
ー 2日後 ー
観念して、ガイナッツの王様達の馬車の後方の荷馬車の群れの中で馬車の部品を運ぶ手伝いをしている。
もう少しでCランクに上がれる俺に、クレモンズさんが気を利かせて、ガイナッツの王様に掛け合ってくれて俺への冒険者としての輸送依頼という手続きをしてくれたのだ。
おかげで無事にミルトの街から半月程の帝都に到着すれば、依頼達成となりCランクに昇格出来る予定である。
『実に有難い…』
ウチのクマ五郎の引く荷馬車はスピードはないがパワフルで他の荷馬車がヒィヒィと昇る坂でもスイスイである。
荷馬車もサスペンション付で快適だし幌も付いたから雨の心配もない。
荷台には少しの荷物とミヤ子が乗るのみだし、道のりは遠いがそんなに重く無い荷馬車をクマ五郎も楽々と楽しそうに引っ張ってくれている。
ガタ郎も暖かい季節になった事もあるのか珍しく影から出て荷馬車での旅を楽しんでいる。
春の日差しの中でのんびりと進む国王御一行だが…この集団はやたらと休憩を挟む…食事に、トイレ、ことあるごとに馬車が止まる…
夜もしっかりお休みになり…進むスピード的には乗り合い馬車の方が早いかもしれない。
ゴング爺さん達に聞くと、
「皇帝陛下に渡す物に万が一があっちゃならないから慎重なんだ…多分。」
と言っていた。
旅をして一週間…
『ほら、見た事か…やっぱりだよ…』
と、俺は心配していた事が的中してしまった…
それは、山間の右も左も岩壁の細い通路で騎士団のボルトさん達が百人近い盗賊団と睨み会っている。
『金持ちそうな集団がノロノロ動けば狙われるよ…』
と、少し呆れている俺が馬車の列の後方から辺りを確認していると、前方と岩壁の上から盗賊団に狙われているのが解った。
そして、一人の盗賊が前に出て、
「おい、上等そうなモンを馬車ごと置いていけや!」
と叫ぶ盗賊団に、50人程の騎士団が半分ずつに別れて馬車を守るチームと盗賊に対抗するチームになって居るために結局25人程の騎士団 対 盗賊百人…
『数的に不利みたいだし、冒険者としての輸送依頼だから手伝おう…』
と俺は馬車をクマ五郎に任せて弓を担ぎ参戦した。
既に盗賊団の先頭のオッサンはガタ郎に、岩壁の上の弓部隊の盗賊にはミヤ子に攻撃をお願いして、俺も騎士団の横に並ぶ…
盗賊団の頭風のヤツとボルトさんの舌戦はまだ続いている。
すると、そそり立つ岩壁の上から盗賊の弓部隊がボトボトと落ちてくる。
騎士団も驚くが、もっと驚いたのは盗賊団だ。
「こっ、告死蝶だぁ!! 」
とパニックを起こす者までいる。
『ミヤ子は種族名通り恐怖の対象なんだな…』
と、改めて感心していると、盗賊団の先頭の奴が、
「落ち着け!谷間は風が強い、こっちまでは粉が降る事はねぇ!」
と他の盗賊達に指示を出している。
『それもそうでゲスね…』
みたいな反応で子分達がそいつを見つめたその瞬間、岩影をスルスルと渡り、馬に乗った奴の影から黒い暗殺者が弾丸の様に飛び出した。
同時に宙に舞うお頭風の男のお頭…そう、ガタ郎さんの首チョンパが炸裂する。
すると盗賊の一人が、
「兄貴ぃー!」
と叫んだ。
ボルト騎士団長は、
「頭目はまだ他にいる気合いを入れろ!」
と叫び突撃していく。
『うん、お頭ぁ~でなくて、兄貴ぃーだったもんな…』
と、ボルトさんの判断の速さを驚きながらも俺は、盗賊達の弓部隊と、チームリーダー的な奴の暗殺で相手方の戦意を刈り取る事に成功したので、あとは弓で騎士団の打ち漏らした盗賊の太腿あたりを狙い弓を放ち逃げれなくする。
既にガタ郎と、ミヤ子は一仕事終えて荷馬車で休んでいる様だが、加勢が無くとも一時間もしない内に流石は騎士団…数の不利もモノともせずに盗賊団を壊滅させていた。
『よし、俺の仕事は運搬だからこのくらい戦闘に参加すれば良いよね…』
と気楽にしていたら、ボルト団長が俺の所まで来て、
「良くやってくれた。助かったよポルタ君…あとは、運搬宜しく…」
と死体を指差す。
「えっ…」
と、一瞬驚く俺だが、
『確かに、アイテムボックスに死体は入るし、運搬の依頼を王家から受けている最中…断れないな…』
と諦めたのだった。
生きてる盗賊は数珠繋ぎに縛られ、死体は騎士団が集めてくれて俺がアイテムボックスにしまう…
実際に盗賊とはいえ従魔をけしかけて殺した事など後々怖くなり漏れイブハートしたのは秘密だ。
全てを片付けると頭の中のアイテムリストに死体の文字が並ぶ…
『キモい…早く次の村か街で兵士に丸投げしたい…』
あと…
『なんで盗賊の襲来イベント以来、ミヤ子とガタ郎さんが騎士団に人気のマスコットキャラ的な扱いになってるんだよ?!』
俺なんて安置所扱いだよ…とその夜のキャンプの焚き火を眺めていると、
〈元気だすんだよぉ、王様ぁ。〉
とクマ五郎が背中を優しく摩ってくれるが…
手が多いから忙しないのよ…リバースするヤツの介抱の勢いだよ…うぷっ…気持ちだけ受けとるよ、
『慰めてくれてありがと…』
だから、もう上下の腕でサスサスするのは止めてクマ五郎…条件反射で涙と何かが出てきそう…
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