第43話 トレント狩りと予期せぬ出会い


アート作品の様なミヤ子という蝶々をなんやかんやで仲間にして歩き続けること三時間…森の奥までやってきた。


木々が生い茂る森の奥は、どれが木なのか?はたまたトレントなのか?一見すると解らない。


『しかし、俺には索敵が!』


と思っていると、


〈旦那様、コイツ樹液の反応が無いでやんす〉


〈本当に、樹液の香りがしませんわね、麻痺鱗粉をお見舞いしておきますわ〉


などと、俺より先にグルメな樹液マニアがコンビでトレントを痺れさせて回っている。


「ギギ、ガガっ…」


と、ぎこちなく動く麻痺っている木の魔物を、魔鉱鉄の斧でヘイヘイホーすだけの簡単なお仕事…


斬り倒したトレントを次々にアイテムボックスやマジックバッグに積め込んでいく…


近場のトレントを倒すと、隣のエリアでウチのグルメな樹液~ズは、まだまだ次から次へとトレントを麻痺状態にして回っている。


30近く斬り倒してアイテムボックスもソコソコ満たされたので森を楽しそうに飛び回る樹液~ズに、


『は~い、お二人さぁ~ん!もう持てないから帰りますよぉ~』


と、呼び戻して街へと帰るの事にする。


今からミルトに数時間かけて歩きで帰ると夜になるが、森でキャンプし明日もトレント狩りをした所でもう、運び出す手段が無いので仕方なく街を目指すのだが、森を出てすぐ返り道を塞ぐ様に熊の魔物が立ちふさがる。


『やはり、俺は熊魔物と縁がある様だな…』


と半ば呆れてながらも俺はアイテムボックスから魔鉱鉄の槍を取り出して構えて熊の魔物を睨み体制を低くする。


すると、四本腕の灰色の熊は立ち上がり、その四本の腕全てをを天高く上げ…俺に襲いかかる!…訳ではなかった…


〈敵意はないんだなぁ、王様ぁ〉


と、諸手を…いや四つ手を挙げて『敵意無し』の姿勢をとり語りかけてきた…


しかし、俺は、


『…ん?、あれ?熊さんだよね?虫じゃ無いよね…』


と頭がパニック気味に空回りしてしまう。


そんな俺など構わずに四本腕の熊は、


〈僕を子分にして欲しいんだなぁ…王様ぁ、お願いするんだなぁ〉


と、膝を着いたかと思うと高く挙げた腕を振り下ろして、土下座をしながら余った両手?で拝んでいる。


『…器用だな…』


と、とりあえずアレコレ考える事を放棄した俺が純粋に目の前にの熊の操る四本の腕に感心していると、影の中からと俺の後ろからとそれぞれ樹液で腹パン状態のクワガタと蝶々が、


〈配下に入りたい場合はアッシに話を通すでやんす。〉


とガタ郎が割って入り、


〈そう、ガタ郎様に、まずお願いするのですわ〉


とミヤ子が囃す。


俺は呆れて、


「いやいや、二人ともまず、その子は熊でしょ?虫じゃ無いでしょ?…」


と、ツッコむと、ガタ郎が、


〈旦那様、何を言ってるでやんす?足六本は虫でやんすよ〉


と、さも当たり前かの様に言って、ミヤ子は、


〈本人が虫魔物だ!と思えば虫ですわ。

足の数が違っても、ダンゴムシやムカデも虫の仲間ですし…

けど、蜘蛛の奴らは自分達を虫と思ってないから、話が通じませんのよ〉


と、何故か蜘蛛への嫌悪感をもらしていた。


『確かに蜘蛛に話しかけられた事はないな…』


と思い出しながら納得しそうになる俺だったが、


「いやいや、だとしても熊って…」


と思い止まる。


『何だよ、この世界の虫の分類はユルユルなのか?』


と呆れていると、


〈駄目ですかぁ、ガタ郎の兄貴ぃ!〉


と頭を下げる熊と、〈兄貴〉の言葉に何かを感じてしまったガタ郎が、


〈コイツも中々良いヤツでやんすね〉


とチョロいクワガタが早速取り込まれている…


俺は、


「えーっと、熊さん…なんで、俺の配下になりたいの?」


と聞くと、


〈僕の仲間はこの森に居ないんだなぁ…でも、王様の気配を感じて、そうだ子分になれば色んな森に旅が出来てもしかしたら仲間も見つかるかも知れない…と思ったんだけどぉ…駄目かなぁ?王様ぁ…〉


と、仲間になりたそうに見つめてくる…


しっかり会話出来ている事実を認識しながらも、


『いや、インセクトテイマースキルの俺にテイム出来るのか?…熊だぜ…』


と困惑する俺に、熊は、


〈ガタ郎の兄貴も、綺麗な蝶の姉さんも、お願いいたします…どうか、僕を王様の仲間に入れて欲しいんだなぁ!〉


と深々と土下座をしながら外堀から埋める作戦に変えた様であった。


しかし、見事にウチのチョロい仲間達は取り込まれており、


〈旦那様〉

〈王様ぁ…〉


と、結局樹液~ズにもお願いされてしまい半ばヤケクソで手をかざした俺は、


「クマ五郎」


と名付けると、熊光りだして大きさ等は変わらなかったが、だだ灰色から真っ白になってしまった。


『いや…ますます、同種に合うのが難しくなったんじゃない…四本腕のシロクマって…』


と、少し心配になるが、


〈フォースアームホワイトベアーのクマ五郎、今後ともよろしくなんだなぁ〉


と、何処かの館で合体させられた悪魔の様な挨拶をしてからクマ五郎はガタ郎達とも紹介を済ませ、


〈ガタ郎の兄貴にミヤ子の姉さんも宜しくなんだなぁ〉


などと呼ばれてご満悦な二匹の子分としてウチに参加し、嬉しそうにしているクマ五郎を連れて街に戻ったのだった。


1日で二匹の仲間が増えた俺は冒険者ギルドでミヤ子とクマ五郎の従魔登録を済ましている時に登録窓口のギルド職員さんに、


「俺ってインセクトテイマーなんですけど、あの熊を仲間にしたの変じゃないですか?」


と聞いてみると職員さんは、


「そうですか?昔の賢者様が、フォースアームベアーは冬眠中に寄生系の虫魔物に体を乗っ取られて融合した魔物だと記した研究結果も有りますから…別に良いんじゃないですか?」


と…


『何その怖い設定は…確かに、森に他に仲間が居ないって言ってたけど、生まれ方が特殊な虫系魔物なの…かな…?』


と思うが、考えたところでテイム出来たものは仕方ないと、もう完全に俺は深く考えるのは諦めた…。


窓口でトレント素材の提出手続きをして、


「明日もトレント狩りに行って良いですか?」


と聞けば、


「まだまだトレント木材を必要としているのでドンドンお願いします」


と冒険者ギルドの窓口職員さんにお願いされたのだった。



翌日からはゴング爺さん達の作ってくれた荷馬車をクマ五郎に引いてもらい森の奥に向かいトレント狩りを続ける。


アイテムボックスにマジックバッグ、そして荷馬車も使いギチギチに詰め込めば50近いトレントを一日で運べる要になった。


勿論移動も楽になりスピードもアップした。


『ナイス、クマ五郎!』


そして樹液~ズが見つけて無力化し、俺が斬り倒してクマ五郎が運ぶ…といった具合で一週間程トレント狩りをつづけて全部で300近いトレントを切り出した。


トレント素材は大体小金貨一枚で買い取りとなるが、樹齢の長い大物は〈銘木〉扱いでかなり高値で買いとってくれた。


おかげで、大金貨50枚程の収入…つまり、五千万円の収入となった…ボロい、ボロ過ぎる…


『あぁ…金銭感覚が駄目になってしまいそうだ…』


まぁ、ありがたく受けとるのだけど…

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