第42話 金策と新たな仲間
ゴング爺さんの工房で岩亀の討伐でボロボロになった装備一式をメンテナンスしてもらっている。
ゴング爺さんが、
「ポルタよ、この片手剣はもう寿命じゃな…中型の岩亀に勝ったのだからこやつも本望じゃろう…」
と片手剣のこぼれた刃先を確かめながら言ってくる。
「固有スキルが相性良かったから残念だけど、仕方ないね…」
と残念そうにしていたらゴング爺さんが、
「スキルの移植なら付与師が居れば出来るぞ。
金はかかるがな…
スキル有りの武器とスキルを移す武器を用意すれば付与師の力量にもよるが、大概のスキルは移植できる筈じゃが、
頼めば欲しいスキルを付与する事も可能だ。
しかし、このミルトには今は居ないんじゃよ。
多分もうすぐ帰ってくる予定なんじゃが…」
と話してくれた。
俺が、
「帰ってくる?」
と聞くとゴング爺さんは、
「そうだ、ワシの息子夫婦と孫娘が帰って来る事になったんじゃよ。
馬車で大変になったから息子の手も借りたいし…
孫にも会いたいからのぅ…
その息子の嫁が付与師なんじゃ。
帝都に修行に出しておったが王様からの要請で戻ってくるんじゃよ。」
と作業をしながら少し恥ずかしそうだが、とても楽しそうに話す。
俺が、
「息子さんも鍛冶師なの?」
と聞くとゴング爺さんは、
「面白味はないが、魔物素材と掛け合わせた、実直で切れ味鋭い武器を得意としとるよ」
と小さなインゴットをテーブルに並べている。
そして、
「ポルタが採掘してきた金属をインゴットにしてみたぞ、
ミスリルは剣一本分は無いかも知れないが、合金かミスリルコートの武器ならば一本出来るから帰ってきた息子に打たせてみる予定だ。
銀と金は金細工職人の孫娘に腕輪などを作らせて息子嫁にスキルを付与して貰えばステータス上昇アクセサリーも作れる。
ワシがポルタの為に何か作ろうと思っておったが、息子達の方が適任だろうて…」
と嬉しそうでいてほんのちょっぴり寂しそうに語ったのだった。
ゴング爺さんは、
「当面は魔鉱鉄の斧と槍で戦えるか?」
と聞くので俺は、
「ゴング爺さんのナタもあるから大丈夫だよ」
と、答えるとゴング爺さんは、
「ならば、頑張って稼いでスキルショップでスキルや、武器屋で移植用のダンジョン産武器を買える様に稼いでこい。
あと馬魔物の買い付けも予定しておけ荷馬車が完成しとるからな…」
と工房から送り出された。
『そうか、ダンジョン産武器に付いているスキルを移植すれば、切れ味上昇や修復なんかの付いた武器も手に入るかも知れない…
しかし、お金をどんだけ稼がなきゃ駄目なんだろう?…』
などと思いながら俺が冒険者ギルドに行くとクエストボードに、
『トレントの素材の納入依頼…貴族用の馬車の素材にトレントの素材をお願いします。』
と書いてあるクエストが有った。
窓口で詳しい話を聞くと、納入制限なしで幾らでも買いとってくれるらしい。
普通の木に擬態して不意をつく魔物らしく、索敵が有れば先手必死で倒せるが、問題は森から運び出すのが大変で思ったほど素材が集まらずに困っているらしい。
『これだ!めっちゃ俺向きの依頼だ!!』
と直感でビビっとキタ俺だった。
なぜならば、アイテムボックスとマジックバッグをフルで使えば運搬も楽々でかなり稼げる。
メインウエポンが当面は斧とナタなのも何かの縁では無いか感じる。
しかもゴング爺さんの魔鉱鉄の斧ならば切り出すのも楽々なはず…
『いける!いけるぞ!!』
と確信した俺は、
「この依頼をお願いします」
とカウンターで手続きをして、この時期トレントが居るミルトの森の奥に向かうのだが…
春が近づき、遂にこのシーズンも帰ってきました。
〈蝶々魔物が仲間に成りたそうにこちらをみている…仲間にしますか?〉
みたいなナレーションが聞こえてきそうな程、蝶々が見つめてくる…
そして、
〈王様、私をどうかあなた様の配下にしてくださいまし…毒、麻痺、色々できますわ!〉
と俺の足元にひれ伏す布団サイズの蝶々…
「モスラかよ…」
と呟く俺に、影から飛び出したガタ郎が、
〈えーい、売り込みは、このガタ郎様を通してもらうでやんすよ!〉
と割って入る。
蝶々はこのガタ郎に対して、
〈ガタ郎様ですか…はじめまして。
ワタクシ、どうしても王様の為に働きたいのです。
ガタ郎様の様な立派な配下になれます様に努力いたしますので、どうか、ガタ郎様からも王様にお口添えを…〉
と頭を下げる。
そしてガタ郎は、
〈旦那様、良い娘でやんすよ〉
と、すでにこの蝶々のペースに飲まれている。
「おい、頑張れよガタ郎!」
と俺がツッコむが、
〈ガタ郎様、お口添えありがとうございます〉
と感謝されガタ郎さんは、
〈いやいや、アッシは本当の事しか言わないでやんすよ〉
と照れている。
まぁ、ウニョウニョの芋虫は駄目だけど蝶々はギリギリ我慢が出来る範囲だ…目や足や、くるくる回る口の管さえ直視しなければだが…
『口も上手だから配下希望の虫の対応担当でも良いかも知れないが…』
と、悩んでいると、
〈大丈夫でやんすよ、旦那様があぁなる時は、仲間にしようか悩んでる時でやんす…〉
などと言っているガタ郎と、
〈まぁ、嬉しい!ガタ郎様のおかげですわ、ありがとう存じます〉
と、蝶々に言われて、
〈そんな事ないでやんす〉
とますます気を良くするガタ郎…
『仕方ないか…』
と観念した俺は、
「じゃあ、ガタ郎の部下的な位置ね」
と、いうと
〈うわぁーい!〉
と喜んで飛び回る蝶々
俺は諦めて、蝶々に、
「名前を付けるよ」
というと、
〈はい!〉
と答えて、足元にピタリと止まった。
俺は手をかざして名前を考えるが、もう、蝶々といえば、昭和な俺はこれしか浮かばなかった。
「ミヤ子…」
と名付けた瞬間に蝶々は光だし、布団サイズから座布団位に縮んだが、羽は美しいステンドグラスのように変化した。
光りが落ち着くと、
「
と深々と頭を下げたが…
『告死蝶って、滅茶苦茶こえ~名前だな…あと身を粉にしなくてもリンプン凄いよ…』
と思ったがあえて言わない事にした俺だった。
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