第38話 久しぶりの依頼


装備が出来てやっと冒険者活動を再開するのだが、冒険者ギルドマスターのクレモンズさんに、


「大丈夫なのかい?もう大丈夫なのかい?!」


とやたら心配された。


心配性のお爺ちゃんギルマスに、


「頑張ってきまぁーす」


と挨拶をして依頼をこなしに出発した。


『見せて貰おうか!?ゴング爺さんの新型の性能とやらを…』


と、やってきたのが〈フレアウルフの撃退〉と言う、炎魔法を放つ狼の群れが牧場の羊を狙っているので討伐が無理でも撃退して他所にやって欲しいとの依頼だ。


牧場主に話を聞いて、フレアウルフが来る山の方に向かうと、索敵で山の麓の洞窟に30頭ほどの群れの反応が有った。


洞窟の前には見張りが二頭程がうろついている。


俺は、ゴング爺さん作の弓を構えて、岩影からターゲットの赤い点を頼りに、ストン、ストンと二匹を倒す。


『弓の威力が凄い気がする…』


と、感じる手応えと共にひと鳴きする暇も与えずに倒された二頭だが、何かの胸騒ぎでもしたのか次なる一頭が洞窟から現れた。


俺は直ぐ様に矢を放ち眉間を撃ち抜く。


少しビビってソイツを洞窟の側で倒した為に続く一団に気づかれてしまい、


「ウォーン!」


と警報の遠吠えを上げさせてしまった…


みるみる湧いてくる狼に、ヤケクソ気味に矢を放ち数頭を倒したが、すぐに殺る気バリバリの20頭ほどの群が配置につき俺を見つけて睨んでいる。


〈おっ、殺る気でやんすね、受けて立つでやんすよ。〉


とガタ郎の、殺る気スイッチもオンになったので、俺もアイテムボックスからダンジョン産の魔鉱鉄の片手剣とゴング爺さん作の盾に持ち替えて構える。


俺はガタ郎に、


「少し体のデカい偉そうな奴がリーダーだ。

アイツを倒せば群れは統率が取れなくなるだろうからそれまでは連携に注意しながら動く様に!」


と、指示を出すと、


〈了解でやんす〉


と、ウチの暗殺クワガタが戦場へと飛び立った。


俺も負けじと盾を構えて走りだす。


リーダーの指示で炎魔法のファイアーボールが放たれ火の玉が飛んでくるが、今までのような寄せ集めでは無くてゴング爺さんが俺に合わせて作ってくれた動きやすい装備だからか敵の攻撃が若干ユックリに感じる。


盾に魔力を流し魔法をいなし、魔力を纏わせた片手剣で魔法を切り裂き打ち消す。


しかし、20頭の魔法攻撃をさばききれずに脇腹に一撃食らい炎が燃え上がる…


咄嗟に鎧に魔力を流したので、火傷をするほどクソ熱かったが、ポーションの厄介にならないで済む程度で助かった。


『魔法を少し軽減する能力だけでここまで心強いとは…』


と、驚きながらも俺はリーダーを目指して進む。


ガタ郎が敵の群れの真ん中辺りの影から飛び出して敵を撹乱してくれている。


この隙に俺は、リーダーに駆け寄り一撃を放つ。


頭の良いリーダーはギリギリかわしたつもりだろうが、飛爪を発動した一撃は避けた場所も十分間合い内…

余裕で避けたと、ニヤリとほくそ笑むリーダー狼は、ニヤケ顔のままスーッと首が滑り落ちる。


胴体は血飛沫を撒き散らし倒れ周りの手下は動揺し始める。


ここぞとばかりに、ガタ郎が飛び回り手下を首チョンパしているなかで数頭の狼が果敢にも俺に襲いかるが、リーダーを失った連携などまるでない攻撃は、飛爪を使うまでもなく返り討ちにできた。


単発の魔法は盾で打ち落とし、噛みついてきてもゴング爺さんの鎧は傷すら付かない。


次第に狼は戦意を失うが、ガタ郎さんは許してくれない…


結局俺達はフレアウルフルズの群を全滅させて依頼終了となった。


獲物をアイテムボックスにしまい牧場の依頼主に報告を済ませ、

牧場から街までテクテクと歩いて帰る途中で雪がちらつき始めた…


『ガイナッツはだいぶ暖かい地方だが、雪も降るんだな…』


と降り始めた雪を見上げた俺は、肩から下げたマジックバッグからフード付きマントを出して羽織り、また街を目指して歩きだす。


アイテムボックスは便利なスキルだが、俺しか使えないので、食糧と着替えの一部をマジックバッグに入れている。


たまにガタ郎さんが顎を突っ込みリンゴやミカンを取り出して食べる為だ…


ガタ郎は大きいとはいえ虫魔物、鞄にすっぽり入らないか心配になるが、顎以上は入らないようで、


『やはり生き物は入れられないのだな…』


と感心していたのだが、ガタ郎は、


〈リンゴが取り出せたら、入れようがどうだろうが、関係ないでやんす。〉


と、言っている。


ほぼ、マジックバッグはガタ郎さんのオヤツ入れだが、アイテムボックスより街の屋台で購入した料理をしまうのにはマジックバッグの方が勝手が良いのだ。


俺は白い息を吐きながら、だんだん白くなり始める道を進み冒険者ギルドを目指す。


「ようやく冒険者の仕事が始められたが、また依頼が少なくなる季節なのかな?…」


と漏らした俺の不安も白い息と共に冬の空へと消えていった…

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