第36話 やっちゃ駄目なドッキリ
爺さん達は分業制で、ベルト爺さんが、ゴング爺さんと二人でバネを作っている。
針金からバネを作る道具から手作りだが流石は長年の技というのか…凄い手際だ。
そして、マット爺さんは木材を加工してゴング爺さんの試作馬車に座席等を取り付ける準備をしている。
もう放っておいても大丈夫そうである。
ちなみに、スプリング自体も特許を取ったし、
スプリングマットレスなどの実用新案も申請した。
なので板バネとスプリングが世界のどこかで使われる度にチャリンとお金が入るし、ゴング爺さんは達はスプリングを作る道具も特許を取っていた。
スプリングベッドや、スプリングソファーの分の実用新案権でも収入が見込める。
三人の爺さんはイキイキと作業をしているので、邪魔するのも嫌だからまた山に採掘に出かける事にした。
採掘が楽しいのと、アーマーリザードの肉と魔石や爪などが思いの外高く買い取ってくれるので当面の宿代になる。
ギルマスのクレモンズさんは、
「依頼は受けないのかい?」
と、聞いてきたが、
「装備がまだなので装備の材料を採掘してます。」
と伝えると、
「何日も採掘に山にこもってるみたいだけど、まだ素材が集まらないのかい?…昔よりも鉄が少なく成ったのかねぇ?」
とクレモンズさんは腕を組み考え込んでしまった。
『長くなる?…』
と思ったので俺は、
「行ってきまぁーす!」
と、挨拶をして出掛けた。
ー そして、数日後 ー
ゴング爺さんに現在叱られている。
馬車の御披露目に間に合わなかったのと、アホ程素材を持って帰って来たからだ。
「軽鎧なら小隊1つ分出来そうじゃぞ?!」
と言われて、呆れられた。
馬車の御披露目会は商業ギルド主宰で、貴族の方々や、騎士団の隊長達と、なんとガイナッツの王様達まで居たそうだ…
『留守してて良かった…』
と思わず胸を撫で下ろす俺だった。
そして、近々王様の命令で他の工房の鍛治師も複数ゴング爺さんの工房に指導を受けに来る予定である。
当面、ガイナッツは馬車の制作に力を入れるらしい。
『まぁ、気に入って貰えて何よりだよ。』
習いに来る予定の方々も一流の職人で要点だけで十分理解するし、片手間でも指導できるから、ゴング爺さんはようやく鎧に取り掛かってくれるらしい。
俺の体を採寸して、
「一週間で仕上げてやるが、微調整もあるからたまには顔を出せよ。
それと、騎士団のボルトが、明日迎えに行くから宿に居てくれだとよ…」
と言ってきた…
『マジか、嫌な予感しかしないよ…』
と怪しむ俺が、
「ボルトさん、何の用か言ってました?」
と恐る恐る聞くとゴング爺さんは作業をしながら、
「なんだか、モンドール伯爵がどーだの、こーだのと言ってたが…良く解らん。」
と言って作業を続ける。
『モンドール伯爵の所のゴタゴタの結果報告かな?』
と納得した俺はこれ以上居てもゴング爺さんの邪魔になるからと宿へと帰ったのだった。
明けて翌日…
『何故だ、何故こうなった…!』
と俺は何処に向けて良いかも解らない不満を抱えたまま、
「でぃ…Dランク冒険者のポルタと申します」
と、カラカラに乾いた喉から絞り出す様に自己紹介をしながら、きらびやかな大広間で王様の前で十人程の貴族に囲まれ片ひざをついている…
『ボルトさん…恨みます…これは人としてやっては駄目なドッキリです…』
と、俺は心の中で血の涙を流しながら堪えている。
王様は、
「うむ、私はガイナッツ王国、国王、アルファス・ファン・ガイナッツである。
此度は、我が国の者が大変失礼をした…許してほしい…
正式にアルトワ王家にも謝罪を送っておるが、返事が来るのは春であろう。
アルトワ王国よりも温暖ではあるが、寒い時期にそなたの様な成人前の子供を牢屋に何日も…やはり、詫びて済む話ではないな…」
と、深刻な顔の国王陛下に俺は、
「王様、そんなに気にしないで下さい。
あの兵士のやり口は全く許せるものでは有りませんし、それを監視するモンドール伯爵にはキッツ~いお仕置きを望みますがその他のガイナッツの方々にはとても良くしていただいておりますので。
それに、食事もアイテムボックスに入ってましたし、野宿用の布団も出せまし…中々快適な牢屋生活でしたので…」
と伝えると、王様や貴族の方々がホッとしていた。
そして、安心した様な王様はしみじみと、
「目の前に居るのは少年なのだが話す内容やモノの考え方…とても子供とは思えぬな。
ゴングの親父さんは、そなたの事を知恵の神の使徒と話していたしな…」
と話した。
『ゴングの爺さん…なんという事を…』
と少し爺さんを恨んだが、王様が、
「よし、本人からの許しも出たから皆のもの楽にしてくれ…
いゃぁー、ポルタ君が怒ったままだと絶対アルトワも許してくれないし、モンドールの首くらい飛ばさないと収まらないかと心配していたんだよ。
小さい国だから1人でも欠けると大変なんだよね。」
と王様は王様モードを止めたようだ。
1人まだ変な汗をかいている俺に、
「ポルタ君も楽にしてよ…お茶にしよう!」
と声をかけてくれた。
『お茶かぁ~…喉はカラッカラですが、それよりももう帰りたいのですが…ダメですかね…』
と心の中だけで聞いてみる俺がいたのだった。
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