第35話 集まる爺さん達


ガチンと壁面をツルハシで叩き崩れた土をアイテムボックスにしまうと、


〈土〉


〈鉄鉱石〉


〈魔水晶〉


などと分けてくれる。


土だけポイして再び鉱物資源感知スキルを使い付近の壁面を砕く作業を繰り返している。


ここは、ミルトの街から半日ぐらいの山の中の採掘ポイントである。


出てくる魔物は背中の鱗が硬いメートル級のトカゲのアーマーリザードと…


〈よっ、社長!!採掘ですか?オイラも手伝いますよ?!〉


と話しかけてくるダンゴムシにガタ郎が


〈控えるでやんす!旦那様は、今、忙しいでやんすよ、おとなしく見れない奴は帰るでやんす〉


と注意してくれるし、アーマーリザードも出て来たと同時に比較的柔らかい首関節目掛けてガタ郎選手による首チョンパ攻撃が炸裂する。


ダンジョンに潜らなくても鉱物資源が手に入る場所だが、量は勿論ミスリルなどの希少金属を求めるなら鉱山かダンジョンなのだがゴングの爺さんに


「その装備で狩りに行く気か?」


と、聞かれて、


「うん。」


と答えたら、


「馬鹿野郎、駄目だ!

そこら辺で鉄鉱石と魔水晶拾ってこい!

大事なポルタをがっちり守る魔鉱鉄の装備を作ってやる。

あぁ、ついでにアーマーリザードの皮も持って来いよ!」


と言われたので絶賛採掘中である。



特許登録以来、えらく俺の事となると過保護な爺さんだが、特許の時は大変だった。


ゴング式・衝撃吸収システムという名前の板バネの馬車の模型を手に商業ギルドに行って特許申請をしたのだが、正式な特許使用料はこれから商業ギルドや鍛冶師ギルドなどの会議の後になるのだが、商業ギルドの見解では使用一件につき大銀貨二枚程が入る計算になり、ゴングの爺さんと大銀貨一枚ずつ半分こする提案をしたら、


「ワシは名前を付けてもらっただけで十分じゃ!」


とか言い出して、


「そんな訳にはいかない!」


と、あーだ、こーだと話し合った結果。


特許使用料は半分こ、その代わりに、ゴング爺さんは俺の装備と、作って欲しい物が出来たら鍛冶仕事を提供して貰う事で折り合いをつけた。


そして、今に至る…


3日間ほど採掘に明け暮れたの防具の素材でどれくらい必要か解らないが、


「まぁ何とかるだろう…」


と、一旦帰る事にした。


山を降り一晩宿で休み、そしてゴング爺さんの工房に行くと目の下にクマを作った爺さんが試作の馬車を作ってる。


そして、辺りを見ると工房からは訳の解らない発明品が綺麗に無くなっていた。


ゴング爺さんは、


「ガラクタを鋳潰したんじゃサッパリしたじゃろ?!」


と笑っているが、少し寂しそうでもある。


しかし、爺さんは自信たっぷりに試作の馬車をコンコンと叩き、


「ワシはコイツに賭けておる…コイツを仕上げて、商業ギルドに認められ、設計図を登録しなければ、特許が動き出さない。

最高の物を仕上げて度肝を抜いてやる…」


とやる気十分だが、俺が採掘している間ずっと寝ていないようだ…


『体に悪い、根を詰め方を…』


と心配した俺が、


「ゴング爺さん、先ずは確り寝て下さい。

今日は休みで、鍛治禁止!完成を前に爺さんが壊れちまうよ…」


と提案すると、


「いや、しかし…」


と爺さんはグズる。


俺は、


「爺さん、夜は確り寝る!徹夜は締め切りが迫った時しかしない!

これを約束してくれたら、馬車のシートにもって来いの座席のアイデアを教えてあげるから…」


というとゴング爺さんはギンギンの目をしながら


「ポルタ!今、今教えてくれ!!」


と騒ぐ…


『はい、はい、お爺ちゃん、寝ましょうね…』


と呆れながら俺は、


「ダーメっ」


っと言って工房を出たのだった。


下手に素材を置いて帰ると、また寝ないで今度は鎧を作りそうだから素材も持ったままで街に向かった俺は紙や筆記用具を買って帰り、宿で思い出せる限り色々な知識を書き出してみた。


ほぼ、技術授業の時間のおさらいの様な紙の束には、


〈スプリングマットレス〉

〈手押しポンプ〉

〈蒸気機関〉等々


前世に有ったが、こちらで見たことの無い物を選び書き出した知恵の中でもゴング爺さんの再現出来そうな物を中心に幾つか選んで小出しにする予定だ。


でないと一度に見せると不眠不休で鍛治しまくりそうだ…



次の日、


目の下のクマは無くなっていたが、楽しみにし過ぎて朝早くから待って居たのか、代わりに目がランランになっているゴング爺さんが出迎えてくれた。


俺が約束通りアイテムボックスの中から紙束を出して、スプリングマットレスの紙を見つけて出すと、


「ポルタよ、さっきの紙の束はなんじゃ?」


と爺さんが騒ぐので、


「俺のアイデア集だよ」


と、答えると、


「見せろ!…いや見せて下さい」


と頭を下げる爺さんに、


「駄目、駄目、まずは馬車から」


と、いうと、


「う~ん」と体をよじりながら「意地悪ぅ~」と気持ち悪い声をあげる…


〈キモいでやんす…〉


とガタ郎も影からツッコむキモさ…


ゴング爺さんは


「おかしいのぅ、孫娘にコレをヤられたらワシはイチコロなのに…」


と、不思議そうだが…


『まだ、休息が足りなくて、正常な判断が出来ないのかも知れない…』


と俺が心配していたら。


俺のメモを見ながら、


「なるほど…こいつは大量の針金とこのぐるぐるの形状にするのが必要なんじゃな…」


と爺さんは見ただけで理解しているので


『休息は足りているのかな?』


などと考えていると、


「ポルタよ、これは普通の椅子やベッド等の家具にも使えると思うのじゃが…?」


と聞いてくるので、


「勿論出来るよ」


と、俺が答えると爺さんは、


「アイツと、アイツも仲間に入れよう!」


と工房を出ていった。


暫くして帰って来た爺さんは両腕に爺さんを1人ずつ抱えていた。


小太りの爺さんと、細い爺さんが、


「可哀想にこんな子供まで拉致してきたのか?」


と俺を哀れんでくれている。


ゴング爺さんは気にも止めずに、


「この丸っこい爺さんが家具職人の〈マット〉で、このヒョロい爺さんが細工職人の〈ベルト〉だ。

この子供が、ワシの道を照らしてくれる神からの贈り物ポルタじゃ」


と紹介をしてくれたが全員がハテナな状態だ。


ゴング爺さんは興奮気味に、


「見てくれ、ワシの最高傑作…」


というと新たに連れて来られた爺さん達は、


「ゴングの最高傑作って、パンを一口サイズに千切る機械じゃろ?」


とか、


「いやいや、背中を良い感じに掻いてくれる機械だろ?」


と口々に言っているが…


『なんじゃその機械…』


と俺は呆れてしまう。


しかし、二人は


「まぁ、ろくなモンでは無いようだ!」


との意見で一致した。


しかし、ゴング爺さんは、


「フッフッフ!見よ!!」


と二人の爺さんに、ゴング式・衝撃吸収システム搭載の制作中の馬車の試作品を見せる。


二人の爺さんは、ゴング爺さんの説明を聞きながら、


「まともだ…」


とか、


「ゴングっぽくない」


などと失礼な言葉を呟いている。


そして、ゴング爺さんは俺のメモを見せて説明を始めると2人の爺さんは食い入るように話を聞き始めて、ゴング爺さんの


「一丁噛まないか?」


との言葉に二人とも食い付く…



ここに、馬車の足まわりから座席…車体の全てを作れるチームが完成したのだ!


いやいや、ゴング爺さん、俺の紹介もっと詳しくしてあげてよ…街の街灯みたいな紹介のままだよ?!…

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