第33話 結局到着したのは
どうも、俺は目的地には行けない星の下に産まれたらしい…
そんな訳で、ガイナッツ王国の第一騎士団の団長〈ボルト〉さんに連れられて、
やって来ましたガイナッツ王国の王都〈ミルトの街〉…
いや、一週間前にこの街に来てから、わざわざモンドール伯爵の町まで移動したのに…戻って来るとは…
門を抜け街を進み、馬車は再び立派な門をくぐって、ガイナッツ騎士団の建物に到着した。
ボルトさんは、
「ポルタ坊、色々不安だと思うがあと数日はここの医務室で様子を見てもらえ。
本当にすまなかった…酷い目に遇わされた国の奴の言うことは信じられないかも知れないがどうか信じて欲しい…俺は味方だ…
そして、あんな馬鹿と、はじめに関わっちまったがガイナッツ王国の人間を嫌わないで欲しい…って、無理かもしれないが…」
と申し訳無さそうに話す。
俺は、
「はい、ありがとうございます。
アイツは、大嫌いですが、別にガイナッツの国を丸ごと嫌いにはなりません。
アイツが、ガイナッツの顔で代表的な国民でない限りは…」
と、伝えるとボルトさんは 、
「あんなのしか居ない国ならば、俺も嫌いになっている…
俺が、騎士団の団長になって守りたいと思える国だ…良い奴もいっぱいいるよ」
と笑顔で話しながら医務室まできた。
医務室には、凄くお綺麗な女医さん?が居た…ボルトさんはその女医さんに、
「連れてきたぜ!〈シルビア〉おまえさんに渡されたスープも飲めたし吐いてもいない。
ポルタ坊の体に異常がないか確かめてくれ。
弱ってるようなら数日頼む…」
と、俺を女医さんに差し出す。
女医さんは、首から下がった眼鏡をスッっとかける…
『えっ、脱げば良いのかな…どうなの?』
と、俺がもじもじしていると、
シルビアさんと呼ばれた綺麗な女性は、俺を上から下まで…見ただけで、
「この子、滅茶苦茶健康よ。
とても監禁されてたとは思えないくらいに…」
と診断して、
「僕ぅ、牢屋で食事は出して貰えたの?」
と、優しく問いかける。
俺は、
「牢屋で食事の提供は有りませんでした。
…けれど、自前のを食べてました。」
とアイテムボックスからパンを1個出してみた。
するとボルトさんは爆笑し、
「あー、腹痛い…ポルタ、お前さん中々の役者だな馬車の中で静かだから、てっきり衰弱してるのかと思ったぜ!」
と、楽しげだ。
俺は、
「悪いなぁ~食糧有りましたとは言えないなぁ~。
と、思って下を向いてました…ごめんなさい。」
と素直に謝るとボルトさんは、バンバンと俺の背中を叩きながら、
「謝る事じゃねぇよ。
ポルタが一枚上手だっただけだ。
いゃぁ~、良かった…流石はエイムズの見込んだ新人だ」
と笑っている。
シルビアさんは、
「スープ、要らなかったわね…」
と呆れているが、俺は、
「シルビアさんの用意してくれたスープ…心に沁みました。
この国に来て初めて出合えた優しさでした。
ありがとうございます。」
と、頭を下げると、俺はギュッっと抱きしめられた。
『…幸せ…』
ガタ郎が、
〈旦那様…良かったでやんすね。〉
と言ってくれた。
そんな事が有りながら、現在、ボルトさんと共に俺はガイナッツの王都ミルトの冒険者ギルドのギルドマスタールームに来ている。
理由は、俺の無事をクレストの街の冒険者ギルドに伝える為と、ミルトの街の冒険者ギルドに俺を宜しくとボルトさんが言う為だ。
何だかよく解らない装置に向かって、このギルドのギルドマスター、優しそうなお爺ちゃんの〈クレモンズ〉さんが、
「クレストの街、聞こえますか?こちらは、ミルトの街のクレモンズです」
と話すと機械の向こうから、
「連絡、お待ちしてました。
して、どうなりました?坊主は…ポルタは?無事ですか?」
と、心配そうなマントおじちゃんの声が聞こえる。
クレモンズさんが、
「さぁ、元気な声を聞かせてやっとくれ」
と、俺を装置の前に呼ぶので俺は、
「マントおじちゃん、僕、大丈夫だよ」
と可愛らしくいうと、装置の向こうのエイムズさんは、
「馬鹿野郎、ギルマスと呼べと言っただろう…
無事で良かった…俺が、目をかけた若者が…ダダンに続いて、ポルタまでかと…本当に良かった」
と、涙声で話す。
すると、装置に向かいボルトさんが、
「エイムズ、心配することは無いポルタは中々の漢だ!
兵士に酷い目に遇わされたが、自分でしっかりと対応していた…見上げた奴だよ」
と報告すると、装置の向こうのエイムズさんは、
「てめぇが居ながらなんて様だよ、無事だったのはポルタだからだ!
あと、その糞兵士に伝えておけ、ポルタに感謝しろって!!」
と怒ってくれた。
ボルトさんは、
「悪かったよ…でも、何で感謝なんだ?」
と、装置に向かい首を傾げながら質問するとエイムズさんの声が響く、
「ポルタは影の中に影アギトを飼っている。
その気になれば、兵士全員皆殺しにして鍵を持ってこさせる事も朝飯前だ。
ポルタが忍耐強くて良かったな!!」
と怒ってくれている。
『有難い…俺の心配をして本気でしてくれている…』
と感動していると、ボルトさんはユックリ振り向き、俺に向かい消え入る声で、
「マジか…?」
と聞くと、出番とばかりにガタ郎さんが、
〈マジでやんすよぉ~〉
と元気に影から飛び出した。
機嫌良くガチガチとアゴを開け閉めするガタ郎さんに、完全に固まるボルトさんと、
フォッフォッフォと笑うクレモンズさんに、そして、何だか気まずい俺…
ギルドマスタールームはかなりカオスな状態だった。
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