第29話 マリーのお仕事と夢


お金はマリー達が生産してオーナーが販路に乗せた蜂蜜の代金だった。


マリー達はビックハニービーというキウイフルーツ程もある蜜蜂を使役する事ができる能力を有する。


マリー達はビックハニービーの集めた蜂蜜を狙う魔物などをビックハニービーの巣に集めて返り討ちにして、その魔物を食べるトラップ・ハニービーなのだが、結果的に助けられたビックハニービー達から蜂蜜が贈られるらしい。


本来ならは、ただの餌として仲間で食べるのだが、なんとマリー達は俺の為になんとかしたいとご近所になった果樹園のオーナーに相談した結果、果樹園を荒らす魔物退治にマリー達が役立っていることもあり、快く蜂蜜の出荷の段取りと販路を作ってくれたらしい。


蜂蜜の販売用の壺等はオーナーが用意してくれて一度周辺に売ったら反響が大きく、このペースなら一年に何度か出荷出来る予定なので果樹園と同じ位の収益を上げる計算になるらしい。


食卓に乗せれるサイズの壺に入った蜂蜜で、大銀貨2枚ほど…

現在ビックハニービーが困らない程度の蓄えを残した余剰分ですら壺百杯以上で、まだまだビックハニービーの巣も大きくなり数も増える…


「これからどうするのがよいか?」


とオーナーから相談を受けたのだ。


マリー達は俺のお小遣いくらいに思っているらしいが金額が金額だし…それに、オーナーさん達の協力があればこそだ。


俺は考えた結果、販売用の壺の購入金と蜂蜜を絞り小分けにする職員さん賃金を抜いた儲けをオーナーとマリー達で折半してもらうことにした。


それではオーナーが我々が貰いすぎだと言うので、


俺は、


「今から各国を旅する予定ですが、マリー達を連れて大移動をするわけにはいきません。

なので、オーナーにマリー達の事をお願いしたいのです。

今はマリー達は山で自由に巣を作っていますが、誰でも入れる場所では、いつ蜂蜜を狙った人間を返り討ちにしてしまいマリー達が討伐対象になるかも知れません…なので、マリー達の取り分で近くの山を購入して欲しいのです」


とお願いするとオーナーさんは、


「よし、了解した。

しかし、経費と人件費を抜いた上がりを折半して、半分はマリーちゃんの山の購入代金とし、

もう半分を更に折半して、半分は、娘のポプラの一家が蜂蜜販売の管理費として、

そしてもう半分をポルタ君に、マリーちゃんの達の協力に対する対価として商業ギルドでポルタ君に口座を作ってもらって振り込む…それならば手を打ちますが、どうします?」


と俺たちの取り分を上げてくれた。


俺が、


「良いんですか?」


と聞いたら、オーナーは、


「果樹園の従業員の臨時収入にもなり果物の受粉はビックハニービー達が、害のある魔物の警備はマリーちゃん達が魔物を倒してくれるので、娘婿が蜂蜜の担当としてヤル気になっているし良いことばかりだ。

それなのに、マリーちゃんの1番の願いであるご主人様の為に稼ぎたいって気持ちを無視出来ないよ。

本当ならば警備費用として此方がお金を出してもいいぐらいだ」


と言ってくれた。


俺は、


「では、それでお願いします」


とオーナー達に頭を下げた。


そして、マリーに


「ありがとうマリー、皆で住める山を買ってゆっくり暮らせるね」


というとマリーは、


「そうですわ陛下、私達が陛下の戻る場所を作りますわ。

ポプラさん、山が買えたら見晴らしの良い場所に家を建てて欲しいのですわ。

我々と陛下の愛の巣ですわ!」


と俺にまた抱きついてきた。


今回はブレイブハートは発動せず、

それどころか、マリーが俺の為に頑張ってくれた事を知って俺は自然に彼女の頭を撫でていた…


マリーは嬉しそうにしていて、ガタ郎は影の中から


〈贔屓でやんす!〉


とブー垂れている。


はいはい、ガタ郎さんはまた今度ね…いざとなったらブレイブハートがあるし…



という事で、この地で暮らすマリー達の窓口としてポプラさんと、現在蜂蜜を運搬中の旦那さんが就いてくれて、定期的にマリー達からの仕送りが貰える様になった。


マリーは、


「向こうの山まで全部買って、陛下の国を作る!」


と、やる気を出している。


「いやいや、皆が安心して暮らせる程度で良いからね」


と、俺が言ったがマリーは、


「はい、安心できる広大な土地に、城を建てて陛下のお戻りを待ちますわ!」


と言っている。


ポプラさんが、


「マリーちゃん達だったら出来るわ。

何年かかっても一緒に頑張りましょうね。

お城は管理が大変かも知れないから頑丈な家にしましょう。

その代わりに、庭にはお花畑のある素敵なお家に…ね」


と、ナイスな軌道修正してくれた。


『ありがとうございますポプラさん…』


こちらはポプラさんに任せておいたら大丈夫そうだ…

するとオーナーさんは早速お金を分配し俺に小金貨五枚を渡しながら、


「ポルタくん、旅をするのも若い内は良いけど早めに帰って来ないと本当に安い山を買い占めて国が出来てしまうぞ…」


と、笑っていた。


しかし、マリー達は蜂蜜販売のお仕事を手にいれたしご近所とも上手にやっていけそうで俺は安心した。



これで、心置きなく引っ越しできるな…

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