第27話 魔法ダンジョンに挑戦
実演販売ごっこで鉱物資源鑑定メガネを売り切りてしまったので、店長さんの計らいで魔法攻撃を弱めるフード付きマントを格安で譲ってもらった俺は、現在魔法ダンジョンに潜って狩りをしている。
勿論実演販売ごっこの後で会議室へとドナドナされたのは言うまでも無く、このフード付きマントは店長さんからのお礼の意味も入っているのだ。
『若干どこかのダサマントおじちゃんみたいなのだけが気に入らない点ではあるが…』
そしてこの魔法ダンジョンの正式名称〈イルデダンジョン〉は魔法を使う魔物がうろつき、魔物素材のドロップと合わせて宝箱のドロップ率が多いダンジョンである。
ノーマルの宝箱だったらマジックポーションなどで、
レアの宝箱なら、魔法のスクロールやマジックバッグと夢のあるダンジョンなのだ。
基本、全部魔法を撃つ敵だと想定して、索敵とターゲットによる弓攻撃を主体で離れた位置から敵を倒して行く。
途中、ガタ郎が見晴らしの良い森エリアで樹液タイムの片手間にデカい鳥の魔物の首を噛み切り倒している。
俺はパシュンと消えて出てきたドロップ品を集めて回ったりしながら、ガタ郎さんの樹液タイムに付き合っているのだ。
ガタ郎さんは鼻歌混じりにご機嫌な様子で、
〈はい、首チョンパでやんすぅ~、フフッフゥーん。〉
と次の木に向かうついでに鳥魔物を倒して飛び回っては、樹液をレロレロするのを繰り返す。
ひとしきりレロレロして満足すると、俺の影にチャプンと潜り、
〈ご馳走さまでやんす〉
と大自然に感謝しながら休憩に入った様だった。
そんなこんなで5階層までやって来てのだが、
ここまで、
土魔法〈ストーンバレット〉?を撃つ大ミミズや
水魔法〈アクアショット〉?を撃つカエルなど
多分魔法なのだが使い手の能力が低く、小石がペチっ、水鉄砲パシャみたいな〈微妙な魔法〉のキモい魔物が続く…
『まぁ、鳥魔物に関してはどんな攻撃かも解らない内にガタ郎に首チョンバされたので強さは解らないが…』
しかし、多分一番の強敵だったのが、風魔法〈エアカッター〉?を使う〈カマキリ〉だ…
少し痛い程度の風魔法を二回程度飛ばすが、魔力が少なくなったら接近戦に切り替えるという虫野郎で、遠くからペチペチと魔法を飛ばすのは別に構わないのだが、魔力が切れたのか近接攻撃に切り替えると、デカくてグロい俺ぐらいの背丈のカマキリがカサカサと近寄ってくるのだ。
『勘弁して!』
と思った瞬間に体が温かい何かに包まれた気がした…多分、ブレイブハートのスキルが発動したのだろう。
上層階のモブキャラにさえ、土壇場の逆転スキル、ブレイブハートが発動する俺…恥ずかし過ぎる…
そして、ついでに解った事がある。
純粋なダンジョン産の魔物は、何かに操られて要るのか?又は、元々なのか?…
俺に話しかけて来ないのだ。
ガタ郎も、
〈アイツら何言ってるのか解らないでやんす〉
と言っていた。
という事で、どうやらダンジョンの魔物はテイム対象外らしい。
ちなみに、ガタ郎はお肉ダンジョンに外から冬越しの為に入り込んだ潜りの虫だったからテイムできたようだ。
『不思議だ…』
それともう1つ不思議なのが、このダンジョン宝箱のドロップ率が凄い。
確かに、多いとは聞いていたが、
既にマジックポーションが三本とスキルスクロールが一枚…ただ俺にはアイテム鑑定スキルなどが無いので何のスクロールか解らない。
『まぁ、出てきただけでありがたい』
もしかしたら幸運の腕輪の効果もあるのかな?と考えながら中間のセーフティーエリアに到着したのだ。
この、ダンジョンもお肉ダンジョンと同じで下に行けば行くほど良いものがドロップする可能性が有るので、皆10階層のボスを倒してメダルを手にして、11階層から下で狩りをしているらしい。
大概の冒険者はメダルで10階層に飛んで、帰りはまた10階層のボスをたおしてメダルを手にしてから帰るという利用の冒険者が多いらしいので、
『俺も今回はボスまで頑張ってみよう』
と決めたのだった。
セーフティーエリアで休憩をとって食事をしていると先に下の6階層に向かう十代の冒険者組が
「これより下の階層の魔物は一度に使える魔力量が上がるから、魔法の威力も強くなる!
気を引き締めろと先生が言っておられた。
皆も十分注意して確実に進もう!」
と気合いを入れてから降りて行った。
『そうか、同じ魔法でも一度に使える魔力量の差で威力が変わるのか…
ミミズ君は何発も小石を飛ばしたのは一度に使える魔力量が少ないが魔力の総量に余裕が有ったからで、
そこそこ痛い風魔法のカマキリは、魔力を沢山使ったから2発程度で接近戦に成ったのか…』
と納得しながらマジックバッグのおかげでまだホカホカのランチを済ませた後に俺も下の階層に降りていく。
本来であれば、中間のセーフティーエリアを拠点に上や下の階層で狩りをするのだが、今回は攻略を頑張るのでとりあえず10階層のボス部屋を目指す。
流石に50階層あるこのダンジョンの完全踏破は無理だが、せめて10階層のボスくらいは倒したい…
階段を降りると岩場のひらけたエリアに出た。
索敵に引っかかる敵を示す点はあるが、数は多くない…
先ほどの、十代パーティーが頑張った後だからだろう。
『ラッキー!』
と、先行している冒険者チームに感謝しつつ俺は残された獲物を狩りながら進む。
ノーマルキャラの魔法が、カマキリレベルの〈ちょっと痛い〉程度に上がったのみで、特に問題は無いようだ。
敵も適度に間引かれていて進み易い…しかし、先行で進む冒険者が居るという事はランダムで配置されるらしい宝箱には期待出来そうに無いが、
その分、敵からの宝箱ドロップが多いので我慢だ。
炎魔法を打ち出す花の魔物…名前は知らないが、マリオのアレみたいな奴から、またスキルスクロールを手に入れた俺は、
上機嫌で突き進む。
これで普通に虫魔物が出なければ最高なダンジョンなのに…
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