第25話 ゴブリン王国との戦い
どうやらやる気になった周りの冒険者達は肉弾戦部隊がキングをメインに殴り込み、
魔法チームは援護と苗床に成っている女性の解放と防衛、
そして俺は、遊撃で側近を狙う予定になったが…
『俺だけ一対複数で不利じゃない?』
と心配になってしまう。
『肉弾戦チームは全員でキングなのに…』
と、少しいじける俺だったが、『仕方ない…』と諦める事にした。
ガタ郎が、
〈アッシもお供するでやんすから…〉
と慰めてくれたのだが、一人と一匹でゴブリンの上位種の群れに飛び込むにはいささか心もとない気がする。
俺達のアタックしている細い坑道の突き当たりまで来ると急に開けた空間に出た。
多分鉱山が現役の頃は足場か何かがあり、二階や三階構造の採掘現場の様な縦横どちらも広い空間の二階部分の辺りに出た感じであるが、そこからソッと覗き込んだ下のには、裸の女性が十数人と、ジェネラル風のデカいのが2匹に、片手剣や槍の金属武器を装備したナイト風が6匹に、杖を持っているのが2匹…
それに女性を集めたりしてせっせと働く下ぱゴブリンが数匹見えて、その奥にはデカい剣を握った一際でかいゴブリンキング風の奴が一匹というなかなかのメンバーを揃えている。
俺は、頭の中で、
『肉弾戦チームがキング…魔法チームは下っぱと女性陣…
俺は、上位種祭りか…メイジから潰すしかないな…』
と作戦を立て先ずは弓を出して、ガタ郎に
『肉弾戦組が飛び降りて戦闘が始まったら、俺は手前のメイジを殺るからガタ郞は出口近くのメイジをお願い』
と心の中で指示をだすと、相棒は、
〈了解でやんす〉
と言って移動を開始した。
アタックチームが配置に着くと髭の斧使いが、
「行くぞぉ!!」
と声をあげながら飛び降りた。
するとゴブリン達は、一斉に斧使いのオッサンに注目したその瞬間、
俺とガタ郎のコンビがゴブリンメイジを倒す。
俺の弓はなおも、唖然としているナイトを2匹を追加で倒し、魔法チームは下っぱを魔法で焼き払い、貫き、切り裂いた。
魔法チームも降下を初めて部屋の端に固められた女性陣を守る。
肉弾戦チームとキングの攻防が始まっているし、俺も弓ではもう警戒されているので倒せそうにない。
弓から片手剣に持ち替えて、俺もゴブリン上位種と戦う為に盾を構えて飛び降りた。
寄せ集めの愛用の防具を着けて地面に飛び降りると足の裏から頭の先まで衝撃が駆け抜けて滅茶苦茶痛くて、少し鼻水が垂れた…しかし、文句を言う暇すら与えてくれない。
ゴブリンナイトが四体、見回した中で一番弱そうな俺にターゲットを決めたようで、四方から、
「グゲ、グゲ!」
と楽しそうに集まってくる。
剣2匹に槍1匹とナイフ1匹…よく分からないが、ナイフの奴だけスピードが早い、
『ゴブリンナイトじゃ無いのかも…』
と思うが、もう、どうでも良い事だ。
ノッシノッシとノロマのジェネラルが来る前に、配下を減らさないと、前回の様に足止めからの一撃みたいな連携攻撃が二倍の量で振る舞われる事になる。
ナイフの奴がいち早く駆け寄り、俺に飛び付こうとナイフを構えたままジャンプする。
俺は盾を構えて、一度受け止めてから切り払おうとするが、
その時、黒い影が横切りゴブリンの首が宙に舞い、ナイフを握った胴体が力無く俺の手前に転がった。
そして、
〈やっふぅー!でやんすぅー。〉
とガタ郎の声が聞こえた。
『やるなガタ郎…あんな攻撃もできたんだ…』
と、感心するがまだ手下のゴブリンナイト三匹と本命のジェネラルが2匹が待っている。
『しかし、ジェネラルも俺を狙ってくれて良かった…』
と安堵する俺…それは何故かというと俺の想像よりも遥かにキングは強敵らしく、屈強な冒険者チームが丸ごとで相手してるのに、互角以上にやりあっている。
あそこにジェネラルが混ざるよりは勝率が上がると理解しているが、よくよく考えると、
『俺が、ヤバい…』
という状況に変な汗が吹き出る。
ゴブリンナイトの槍をかわしても、左右から同時攻撃してくる片手剣のゴブリンナイトを俺は盾と剣とで左右のゴブリンナイトを受け止めた瞬間に正面から槍を持ったゴブリンナイト再びが迫る。
『ヤバい?!』
と思った次の瞬間、槍を持ったゴブリンナイトに炎の矢が突き刺さり燃え上がる。
チラリと見ると魔法チームのリーダーが親指を立てている。
『サンキューです』
と心の中で礼を述べるが、声を出している暇はない。
燃え上がった仲間に一瞬怯んだ瞬間、左右のゴブリンナイトに、俺はチャンスとばかりに飛爪を発動させて袈裟に切りつける。
片方が切られた事を察して、残された片割れのゴブリンナイトが俺の間合いから飛び退こうとするが、奴は俺の切っ先が飛爪のスキルで伸びているのを知らない。
避けたはずなのに、『なんで?』と不思議そうな顔をしたまま斜めにズレ落ちる最後のゴブリンナイト…
しかし、俺の持ち場にはジェネラルという大物があと2匹接近している。
既に飛爪を二回発動させており、1日三発で魔力切れ間近になった経験から、この後のジェネラル二匹を相手にする場合、もしもが有るので主任さんから生活魔法と一緒に貰ったマジックポーションをいそいで飲み干し、
「ゲフッ…」
と、ゲップを気合いに変えて2匹のジェネラルを迎えうつ為に構えなおす俺…すると、
「遅くなってすまん、防御魔法が張り終わったから手伝いに来たぞ」
と魔法使いパーティーの三人が加勢にきてくれた。
残りのメンバーは女性達の周りにうっすら光る透明なドームを張っている。
『防御魔法ってあんな感じなんだな…』
と思いながらも、
「ありがとうございます…心強いです。
では、一気にジェネラルを潰してキングの加勢にまわりましょう」
と俺がいうと、魔法使いのリーダーが、
「おっ、頼もしいねぇ、じゃあサクッと殺りますか!」
と大剣を振り回すジェネラルに魔法を飛ばし、俺は斧を持ったジェネラルに向かって走りだした。
ゴブリン達は体のサイズが人間より小さいか、ジェネラルは人間よりも大きいという極端なサイズの為に武器は人間のを使いまわすが、防具は兜以外はろくに使えない…
そう、それこそが、コイツらの敗因の1つだ。
『防御がおろそか…攻撃のみに特化したジェネラルは、部下も倒され丸裸も同然!』
俺はジェネラルの懐に潜り込み、防具の無い胴体を目掛けて飛爪を放つ!!
片手剣ではジェネラルの胴回りを到底輪切りに出来ない刃渡りだが、飛爪の能力伸ばされた魔力の切っ先でジェネラルを上下真っ二つにする。
もう1匹も魔法を打ち込まれフラフラ状態で魔法使いのオッサンが、
「こっちは任せて、行け!!」
と叫び、
俺は、その勢いのままキングに向かい肉弾戦チームに合流し、
「加勢に来ました!」
叫びながら俺はキングの片足にフィジカルスキルを総動員した飛爪の一撃を叩き込む。
不意に増えた俺の一撃にバランスを崩したキングに肉弾戦チームが一斉にとりつき武器を突き立てる。
近接武器を針山の様に全身に突き立てられ、完全に膝を折り痛みに項垂れるゴブリンの王さまのうなじに肉弾戦パーティーのリーダーの斧が振り下ろされる。
そして王の斬首によりこのゴブリンの王国は終わりを告げたのだった。』
広場の入り口で、ゴブリンの残党を倒しているガタ郎が見えるので、俺は既にクタクタで魔力も少なく気だるいが、
『相棒がまだ頑張ってるからな…』
と、メイン坑道組が到着するまでは女性達を守る為に頑張らなければならないと気合いを入れ直して残党狩りをしているガタ郎と合流する為に歩き出す。
「本音を言えば、マジ疲れたし…早く帰って休みたいよ…」
と少し文句を言いながら横目でゴブリンの首を次々に切り飛ばすガタ郎無双を眺めながら、メイン坑道を攻略している冒険者達に押し戻されて巣の奥へと逃げ帰ってきた残党ゴブリンを俺達キング討伐組でプチっと捻るという作業を続けるのであった。
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