第22話 ゴブリン集落での戦い
洞窟前の小高い山を駆け上がり戦うのは不利なので俺は洞窟横を迂回して回り込み、見張りに気づかれないように洞窟の上部まで近寄り斜め上の辺りを陣取る。
以前購入したままマジックバッグの肥やしになりつつあった鋼の弓を取り出して、
『今回は遠距離武器の練習がメインだったけど…そうも言ってられなくなったな…』
と思いながらも、
『せめて見張りと、可能ならば中の門番くらいは弓で倒したいな…』
と、考えて弓であるが、ターゲットのスキルの効果で構えた弓狙いとは別に、俺にだけ見える赤い点がゴブリンに灯る。
『ん?』
と不思議に思い、俺は少し弓を動かすと、その点もズレる手に
『レーザーポインターみたいだ!着弾位置に赤い点か見える!!
ありがたいスキルだ…これなら射ち損じが減るぞ』
と、俺はスキルの効果を理解して、弓を引き絞りゴブリンの胸に赤い点を合わせて射ちだすと、次の瞬間には胸に矢を生やしたゴブリンが倒れている。
すぐさま二発目も隣のゴブリンに合わせて射ちだすと次はコメカミに矢を生やしたお洒落なゴブリンがパタリと倒れる。
見張りの異変に気がついた門番が出てきて見張りの二匹を確認すると、
「グゲゲ…グっ…グゲー!」
と騒ぎだしてキョロキョロしている。
『おいどうした?…し…死んでる?!
みたいなノリかな?』
と想像しながらも俺は門番の二人にも矢をプレゼントすると、
ガタ郎が、
〈では、救出に向かうでやんすよ〉
と飛び立った。
俺はイケるところまで弓で戦う予定で、洞窟の中から武器を持ったごゴブリンがワラワラと出てきたのが見えたので、洞窟上部から弓を放ち1匹…2匹と倒した所で、
遂にゴブリン達に見つかり、
「グゲぇ~」
と鉄の剣と鉄の盾、それに兜をかぶった一回り大きなゴブリンが指示に何やら指示を出されてしまった。
俺は、
『絶対上位種だよ…ゴブリンナイトあたりかな?』
と、上位種の登場に少し不安になるが、弓を剣と盾に持ちかえて、
「ウララァァァァァ!」
と奇声をあげながら坂道を洞窟に向かい下っていく。
こん棒や木の槍のゴブリンには負けはしないが問題はナイトとまだ見洞窟から出て来ていないもう一匹の上位種とリーダーだ。
俺の奇声にビビりはしないが、
『なんだアイツ…』
ぐらいに一瞬呆気に取られた一般ゴブリンの六匹を相棒の魔鉱鉄の片手剣で凪払い倒した俺は、
『入り口2の…門番が2の…』
と計算するが、お楽しみ中の2匹は見当たらない…
『こんなに外が騒がしいのに3Pに夢中なのか…はたまた既にガタ郎さんが噛ったのか…』
と、思いながら、ゴブリンナイトまでたどり着き、一撃を入れようとすると、俺の横から火の玉が飛んできた。
『あっぶ!!ちょ…ゴブリンメイジってやつか?はじめまして…』
と、驚きながらも余裕が有るのは、
平常心とブレイブハートのスキルに合わせて高速移動スキルで落ち着いて素早く相手に対応出来ているからだ。
『この場合はナイトよりメイジからだな…』
と判断して、ナイトを一旦無視してゴブリンメイジに向かって走り出す。
ゴブリンメイジは慌てて、
「ぐげぁ!」
と、また火の玉を放つのだが、俺はぶっつけ本番で魔鉱鉄の片手剣に魔力を流しながら火の玉を真っ二つに切り裂き、止まる事無くゴブリンメイジの首をはね飛ばした。
遠距離攻撃の恐れが無くなったので改めてゴブリンナイトとの勝負に移ろうとすると洞窟から、
「グルォォォォ!」
という叫び声と共に、デカいハンマーを担ぎながら、ノッシノッシとナイトよりもデカい個体が現れた。
しかし、それを見た俺は少し安堵していた…
そう、奴が喋らないところを見ると資料で見たゴブリンの最上位種ゴブリンキングでは無いようだ。
『良くは解らないが〈ゴブリンジェネラル〉とかかな?…まぁ、後は上位種だけだろうし救出はガタ郞さん任せで大丈夫だろう…』
との結論に至った俺は、目の前の2匹に集中する事にした。
片手剣を構える俺にゴブリンナイトとゴブリンジェネラルは共闘して俺に襲いかかる。
俺と切り結ぶナイト、つばぜり合いの最中に足の止まった俺にジェネラルのハンマーが降り注ぐ。
正直高速移動が無ければ話にならない状況に、
『通販チャンネルごっこで主任さんをノセて、オマケしてもらえて良かったよ…』
と冷や汗を流す俺は、
『ジェネラルは力がだけのバカだが、ナイトはかなり技巧派で、戦う上でジェネラルよりもナイトが厄介だな…』
と分析した俺は、
『早めにナイトを殺らないと…』
と決意す…いや、決してダジャレではない…ほんと、ホントだよ!
…という事で、俺は次のナイトへの攻撃で仕掛ける事にした。
ナイトに切り込むと見せかけて俺は盾を構えてゴブリンナイトをカチあげて、
相手が、『マズイ』と間合いから飛び退いたところに間合いの外から飛爪の追撃を入れた。
ナイトの体は上下に分割され、叫び声すら上げずに驚いた顔のまま固まっている。
しかし、手下の代わりにジェネラルが威嚇の叫びを上げているが、ブレイブハートや平常心スキルにより精神耐性ばっちりの俺が虫以外でビビって萎縮するはずも無く、
ジェネラルがハンマーを振り上げてお留守になっている胴体目掛けて魔鉱鉄の片手剣の固有スキルである飛爪発動させながら真横に振り抜く。
するとゴブリンジェネラルはハンマーの重みで、上半身だけ後ろに倒れて…戦いは終わったのだった。
返り血でドロドロの体に、ダンジョンショップにて主任さんからアイデア料として貰った生活魔法のクリーンをかけてみると、汚れが全て足元に拭い落とされた。
『地味に一番便利かも…』
と感心していると、
〈旦那様ぁ、終わったでやんすかぁ~?〉
とガタ郎さんが洞窟から帰ってきた。
そしてその後ろには、素っ裸で顔を隠した女性が…
『って、顔じゃ無くて、もっと隠す所あるでしょ?…』
と呆れながらも俺は、
「もう大丈夫ですよ」
と優しく声をかけ、ついでに彼女にクリーンもかけて、マジックバッグから野宿用の布を取り出して渡した。
布を受け取り体に巻き付けた女性は、やつれた感じではあったが熟女とのガタ郎の報告とは違い綺麗な奥さま風の方だった。
しかし女性は安心したのと同時に辺りの血の海を見て小さく悲鳴を上げて、クラリとよろけたかと思うとそのまま気を失ってしまった…
『マジかー、どうしよう?』
と、情報量が多かったのか、はたまた血が苦手だったのか…兎に角気を失った彼女を11歳の俺が抱き抱えて帰る事も引きずらずに運べる方法も無く、
とりあえずその場に寝かせて、ガタ郎に彼女の警備をお任せして、俺は
少し嫌だが、依頼主や冒険者ギルドに彼女の報告も買わせて見せる用に上位種は一応持って帰る事にしてマジックバッグに死体を詰め込み、
ガタ郎さんが洞窟内で倒したゴブリンの死体のも回収して燃やさなければ他の魔物を呼んだりゾンビ化したら洒落にならないと考えて俺は松明を持ち洞窟に潜ると、なんとも言えない匂いに襲われた。
我慢しながら各部屋を確認する。
お楽しみ部屋で2匹を回収した後、
一番奥のリーダーの部屋に行くと木箱が幾つか有ったので、
『一応これも回収しておくか…』
と、木箱にマジックバッグの口を近づけてグッと押し付けるとシュルンと中へと収まった。
あとは、小汚ない布しか無かったので外にでてきた俺は、
「あぁ、空気が美味しい…」
と、まだ鼻の奥に溜まった臭い空気をフン!と飛ばす様に新鮮な空気と入れ換えるべく深呼吸をしてから、続いて穴を掘り薪を拾い組み上げてゴブリンの死体のを乗せてから、臭くて汚いキャンプファイヤーを始める。
また、汚れた自分にクリーンをかけてパチパチと焼けるゴブリンを見ながら、
『食欲が失せる…皆がゴブリン討伐をヤりたがらないのが良く解ったよ…』
と後悔しながら焼き上がって埋めれる様になるのを待った…ガタ郎と、眠っている奥さま風の女性と共に…
『はぁ…早く帰りたい…』
と、真っ直ぐに空に昇る煙を眺める俺だった。
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