第21話 見つけちゃったよ。


『さぁ、新たなスキルも手に入れたし次なるお仕事に出かける事にするぞ!』


と、俺はクエストボードを見上げて目ぼしいお仕事を探している。


なんと、思いもよらず索敵が手にはいり、ターゲットというスキルで長距離攻撃の制度が上がったみたいなので、サーチ&デストロイのような戦法が取れるが…問題は俺の弓の腕前だ。


見つけて、攻撃して、当たらない!ではお話にならない…という事で、今回は弓の練習も兼ねてクレストの周辺で出来る簡単な依頼をこなしながら、遠距離攻撃縛りを己に課して弓の練習をすることにする。


「近場、お手頃、Dランク向き…」


などと、お経の様に唱えながら探していると、


『ゴブリン集落の調査と、討伐』


という見出しが有った。


クエストの依頼書には、


『最近良くウチの羊の放牧場の側でゴブリンを見かけるようになりました。

アイツらは、ウチのモコモコシープを舐め回す様ないやらしい目付きで見ています。

奴らの住み処を探して、可能ならば、倒して下さい…いつウチの可愛い娘のようなモコモコシープが拐われて苗床にされるのでは?!…と夜も眠れませんので宜しく』


と書いて有った。


この世界のゴブリンさんは、緑色の肌で子供くらいの背丈に子供以下のオツム…あとはデカい鼻に、醜い顔に大人並みの腕力…そして並外れた性欲が特徴であり、そしてオスしか居らず、他の生き物に自分の子供を産ませる〈種族スキル・孕ませ〉という

キモいスキルも持っている。


魔石もスライム程度のクズ魔石程度と何も素材に利用価値の無い不人気ターゲットだが全世界の女性の敵は左耳を削いでギルドに提出すると、ギルドからサービスポイントがかなり入るポイント用魔物である。


しかし、奴らの恐ろしい所は人間を苗床にした場合、少し賢い上位種や、下手をすると統率力と驚異的な強さの王様が産まれてしまう事があり、そうなると数、強さ、統率力のある群れとなり上位冒険者でも油断出来なくなってしまうので、


『割に合わない!』


というのがのが不人気の理由だ。


俺的にはギルドポイントは魅力的であり今一番欲しい物ではあるが…


『まぁ、割に合わない数や強さならゴブリン集落だけ確認して戻れば良い調査がメインの依頼だからイケるかな?…』


と考えていると俺の影の中からガタ郎が、


〈何匹いるか?とか、どんなヤツが居るか?ぐらいならばアッシがちょちょいと影に潜って見てきやすよ〉


と頼もしい事を言ってくれたので、今回はクレストの街外れの牧場からの依頼を受ける事にした。


冒険者ギルドで依頼の手続きが終わり、徒歩移動する事二時間程の草原地帯にある牧場についた。


石積の塀と木の柵で囲われた場所に、モコモコシープと呼ばれる毛量の凄い羊魔物の牧場で、羊毛とミルクがメインの牧場でありチーズの様な乳製品も作っているらしい。


ちなみにではあるが、この世界の一般的なミルクは牛ではない…なぜなら牛魔物はパワーが凄くて飼うのが大変だからである。


よっぽど屈強な牧場主か、よっぽど優しくて賢い牛魔物のどちらか、またはその両方が揃わない限り成立しないのだ。


なので、牛乳はお貴族様に喜ばれる贅沢品なのである。


モコモコシープ牧場のご主人から話を聞いて、ゴブリン達が出現する方向を聞いてから、俺はその方向に移動をはじめる。


草原を一時間程歩いた先にある小高い山の中腹に洞窟を見つけると、そこには見張りのゴブリンが居るので俺は、


『絶対にゴブリンの集落だ…』


と確信して、俺は岩影に隠れつつ洞窟に近寄り、


新たに手に入れた索敵スキルを行うと、頭の中に自分を中心とした円が浮かび敵の位置を赤い点で示す。


自分の点から門番の点の位置関係から、どうやら俺の索敵は現在半径200メートル程の範囲らしい。


頭の中の点は全部で15…やって殺れない事はないが…実際の潜入捜査はガタ郎君に任せる事にした。


俺は声に出さずに心の中で、


『敵の反応は15だが、洞窟が遠くまで繋がっていて索敵の範囲外まで伸びている可能性も有るから、確認をお願い』


とガタ郎に頼むと、


〈任せるでやんすよ、旦那様ぁ!〉


と言って、


俺の影から飛び出して「ぶうぅぅぅん」と飛んで行き、手頃な影にチャプンと潜って、見張りの目を掻い潜る。


ガタ郎はどうやら影を渡って洞窟に入ったようだった。


『頑張れガタ郎!』


と祈りながら待つこと30分程度…


ガタ郎偵察兵が「ぶうぅぅぅん」羽音を発てながら帰還し、俺の影にチャプンと潜る。


しかし、ガタ郎だと理解していても、まだあの羽音で飛来する黒い塊に軽く拒否反応をする俺のハートが情けなく感じる…


〈旦那様、全部で15で間違いないでやんす。

洞窟は途中で三方向に別れて、その先は小部屋の様でやんしたから、何かの魔物の冬ごもり用のねぐらを乗っ取ったようでやんすね〉


とガタ郎は偵察の結果を報告してくれた。


入り口の見張りのが二匹

入り口の通路に門番二匹

右の小部屋に 六匹

左の小部屋で縛られた女性1と、二匹が交尾中…


と、淡々と報告するガタ郎に、


『ちょ、ちょっと、ガタ郎さん…言葉を選ぼうよ…

えっ、苗床にされてる女性がいるの?まずいなぁ…』


と、焦る俺に報告の途中で話の腰を折られたガタ郎さんは影の中から、


〈では改めていくでやんす…

左の小部屋で無理やりエッチされている熟女一名に…二匹のゴブリンが…〉


と続きの報告をはじめてくれたのだが、俺はもうガタ郎の報告が終わるまでツッコまない事にした。


ようするに、


見張り2、門番2、控え6、お楽しみ中2、側近上位種2のリーダー1の、


計15…少なくとも上位種が3に、人質の…熟女?が居る厄介な案件になってしまった。


15匹のゴブリンだけならばソロでも頑張ればイケる。


しかし、上位種3はキングなど混じればソロはキツい…

かといって、苗床救出は早い方が良いしギルドに報告でサヨナラでは…ちょっと…

人質が居るから洞窟ごと潰す様な大胆な手は打てないし…

そして、熟女って…なんだろう…『助けなきゃ!』って気持ちが1割引ほどされるフレーズ…


『聞かなきゃ良かった…』


と軽く後悔する俺だったが、


しかし!


『ここで助けなきゃ、人としてアウトだ!

よーし、殺るぞぉ、殺ってやるぞぉ!

無事におばちゃんも助けてやるからなぁ~!』


と自分を奮い立たせながら俺は、


『ガタ郎、俺は入り口付近であえて目立つ様に戦うから、こっそり入って人質の解放と救出を任せる。

俺は外で暴れて中のゴブリンを引きずり出すから!』


と提案するとガタ郎は、


〈任せるでやんす!〉


と応えてくれた。


さぁ、がんばるぞぉぉぉぉぉぉ!

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