第20話 主任さんと通販チャンネルごっこ


黄色熊の夫婦の討伐をして千ポイントちょっと…Cランクまではまだ遠い様である。


冒険者ギルドポイントはまだまだなの状態なのだが嬉しい誤算があったのだ。


それは、黄色熊の毛皮はその鮮やかな黄色な事から お貴族様から大変人気だったようで、あのリアルプーさんの夫婦の毛皮がオークションにかけられる事となった。


おかげで肉や肝などとあわせて大金貨六枚という大金が転がり込んできたのだ…

もう、あのTシャツすら着ていない下半身露出熊風の夫婦に感謝である。


そんな俺の噂を聞いた、春になりお仕事モードの夢の狩人のメンバーから、


「黄色熊が二匹と知ってたら、俺らが行きたかったよ…上手いことやったなぁ」


と残念がられた。


どうやらキラーベアーに黄色熊…俺は熊と良縁が結ばれているようである。


そんなラッキー熊ちゃんのおかげで、思わぬお小遣いも出来たので、何か良いアイテムかスキルスクロールを買うためにダンジョンショップに軽いスキップで足取りも軽く行向かうと、主任に出世したあの店員さんが俺を見つけて飛んできた。


「よっ、福の神のご来店ですね…黄色熊のご予算で、本日は何をお探しで?」


と言ってくる。


俺が、


「えぇ…怖い…情報は武器でしょうが、詳し過ぎませんか?」


と聞いたら主任さんはニコニコしながら、


「ポルタさんの情報はわざと集めさせてますからね。

前回の様にナイスアイデアで助けてもらえるか、または、お困りの際は颯爽とお助けに行けるようにと…

まぁ、ウチも商業ギルドのオークションには毎回ダンジョンアイテムを幾つか出品してますので今回の情報は知って然るべきですよ…

オークションの結果からもうすぐお見えになるかなぁ~と、お待ち申し上げておりました」


と、ニコニコしている。


俺が、


「小金貨三枚のヤツは順調ですか?」


と聞けば、


「お見合い市場ですね。

貴方と埋もれた逸品の出会いの場!運と縁がモノをいう…とのキャッチフレーズの元、今では楽しみに見に来る観客まで現れています。」


と主任さんが言っていた。


『お見合い市場って名前に決まったんだ…まぁ、人気ならば良いんじゃないの?』


と思っている俺に主任さんは、


「で、本日は何をお探しで?」


と商いモードになる。


俺が、


「そうですねぇ、大金貨五枚程度で…」


と言ったとたんに、主任さんは、


「黄色熊の諸々の収入が最大六枚ですもんね…」


と答える。


『どこまで知っているんだ?この主任さんは…』


と少々怖くなるが、よくよく考えると主任さんは、既に俺のスキルも虫嫌いのインセクトテイマーというのも知っているし、このペースならガタ郎の事も知っているのだろう…たぶん…


『主任さんには隠せる事はもう何も無いか…』


と、納得した俺に主任さんはニコニコしなから、


「もう、私ね…ポルタさんが大金を手にしたと聞いて以来、方々手を回して予算内でオススメのスキルスクロールやアイテムを探しておきました。

しかも、お偉いさんからポルタさんとは仲良くしておけと業務命令も出ておりますので、ある程度のサービスはバッチリさせていただきますよぉ!」


と、心強い言葉をくれた。


『おっ、サービスは大好物です!』


と内心喜ぶ俺は、


「では、そのオススメとは?」


と聞くと、主任さんは、


「では、私のオススメ!

一つ目は、スキルスクロール、〈ブレイブハート〉です。

もうヤバイって時に、確率で自動発動するスキルです。

勇気が溢れて、力が湧いてきますし、精神攻撃の恐怖状態からの回復ができます。

不確定要素があり、人気があまりありませんが、次にご紹介するアイテムと合わせれば心強いスキルになること間違いなし。

で…その2つ目、〈幸運の腕輪〉です。

運気上昇効果の腕輪で全ての確率を微妙に上げる効果を持ちます。

これによりブレイブハート自体の発動確率がそこまで低く無いので微量な確率上昇でも十分かと…

ポルタさんにオススメな不意な虫にも安心な自動スキルですよぉ~」


とテンション高く説明してくれた。


ハイテンションな主任さんに乗っかる形で俺も、


「それは凄い!…でも、お高いんでしょ?」


と、お決まりの合いの手をいれる。


すると、主任さんは、


「驚かないで下さいよ、今ならなんと〈索敵〉のスキルスクロールと遠距離攻撃に最適な〈ターゲット〉のスキルスクロールをあわせて大特価!大金貨六枚でぇ…」


とノリノリだ。


俺も楽しくなってきて、


「うーん、六枚かぁ…もう少し何とかなりませんかぁ~?…」


と主任さんにおねだりする例のくだりをカマしてみると、主任さんは、


「ヨシ私も漢だ!精一杯頑張って大金貨五枚でどうですか?!」


と提案するが、俺はお決まりの追撃をかける。


「えーっ、主任さぁん。オマケもお願いしますよぉ~」


と甘い声を出してみる。


すると主任さんは大袈裟に、


「う~ん、参ったなぁ…今回だけ、今回だけですよぉ~…なんと、もうこれを付けちゃおう!

スキルスクロール〈高速移動〉だ。

もう許して、これ以上は店長に叱られちゃうかも…

ごめんなさい店長!」


と実に楽しそうだった。


影の中から見ていたガタ郎も、


〈お二人とも楽しそうでやんすね…〉


と、呆れぎみだった。


すると、楽しく通販チャンネル風の遊びをしていた俺たちを見つめる男性がもう一人…

その男性は俺達の楽しげなやり取りを見た後で軽い拍手をし始める。


すると、主任さんは、


「て、店長…」


と、冷や汗を流しはじめるのだが、店長と呼ばれたその男性は、


「面白かったよ主任…今のやり取りを資料にまとめて、魔法ダンジョンから買い取ってダブついている〈マジックポーション〉と〈生活魔法〉や売れ残る指輪やブレスレットを売り尽くしてみろ…頼んだぞ、在庫処分室長!」


と笑って去って行ったのだった。


主任さんはポカンとしているで、俺が、


「主任さん?…いや、室長さんかな?…おーい、帰って来てくださーい」


と肩を揺すると、主任さんはその状態のまま、


「母さん、やったよ…おら、出世しただよ…」


と、涙を流していたのだった。


そして、主任さん?は、


「ポルタさんあとは宜しく大金貨五枚です…私はさっきの楽しいやり取りを覚えている間に書類にまとめたいので…」


と焦っている。


俺は大金貨五枚を渡しながら、


「数量限定とか、今から何時までとか、区切りを設定した方がいいよ。

出来るだけスパッと綺麗な値段か、

もしくは198(いちきゅっぱ)みたいに響きが良かったりするのも良いかも…

スパッと価格の200より、どちらも儲けはあまり変わらないけど、買う方にしたら小銅貨二枚程度のお釣が物凄く得した気分になりますので…では頑張って!!」


と、主任さんの成功を願い、軽いアドバイスを伝えてから帰ろうとしたら主任さんに、


「やっぱり来て下さい。」


と、別室にドナドナされて色々と相談に乗ることになってしまったのだった。


まぁ、売り出し予定の魔力が少し回復するマジックポーションと、生活魔法と言われる攻撃力の無い魔法ダンジョンで比較的手に入りやすい〈クリーン〉というダンジョン内で風呂に入らなくても清潔になれる物と、〈着火〉というキャンプの時の種火が出せる物と、〈水生成〉という魔力の効率が悪いが緊急時に水場の代わりになるという3つの生活魔法のスキルスクロールと、追加で〈魔力微上昇の指輪〉をアドバイス料としてプレゼントして貰う事で俺は手を打ったのだった。

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