第11話 素っぴん冒険者卒業


マジックバッグを購入して意気揚々と狩りに向かう俺…

雪の積もる草原には他にもウサギ狙いの冒険者がチラホラ見えるが、

飛ぶ斬撃でウサギを凪払う剣士に、

魔法でウサギを切り裂く魔法使い、

何か解らない弓の技で次々とウサギを射抜く狩人…


見れば見るほど、俺が如何に泥臭い戦いをしているかが解る。


『羨ましいな、プラスのスキル…』


と思いながら森の奥を目指す。


『あんなスキルでサクサク狩ってる中で肉弾戦みたいな狩りは、していられないから離れよう…』


と足跡を追って進むと、また、30匹前後の群れに遭遇した。


草原エリアは見晴らしが良くて雪ウサギを見つけ易いが、それは相手からも感知され易いという事になり隠密スキルや広範囲に攻撃するスキルも無い俺は、視界の悪い森の中の獲物に頑張って忍び寄り攻撃を仕掛けて、一人で現れた俺を群れで倒そうとするウサギと昨日と同様に泥臭い肉弾戦を繰り広げるしかない…

しかし昨日と違うのは、狩った後の運搬を気にせずおもいっきり殺れる事だ!


今日も何匹か倒すとビビって逃げるウサギを見送り、


「あの野郎体当たりついでに噛みつきやがって…」


と、軽く噛まれた傷口を確認した俺は気休め程度の安いポーションを飲む。


『お金が入ったらちょっと良いポーションを…いや、装備が先かな?…』


などと、獲らぬ狸のを数えながらも倒した獲物の血抜きをして麻袋に入れてからマジックバッグに入れる。


『他の物に血が着いたら嫌だからね…』


とマジックバッグに近づけた獲物はシュンと小さくなる様に鞄に入り、俺は全ての獲物の入ったリュックを


「あぁー、超ぉぉぉ楽ぅぅぅぅ!かさばらないし、重くもない!!」


と喜びながらその場で軽くジャンプしてみる。


『よし、これならこのまま他の群れも、もう一戦ぐらいイケるぞ!』


と、俺はまた足跡を探して後を辿る。


少し小さい20程の群れに出逢い、また戦う…

朝イチから昼までに2つの群れを見つけて15匹を倒した。


俺はマジックバッグの効果に満足しながら一旦ギルドに帰り、買い取りを頼んで軽い食事を食べてからもう一度狩りに向かう…


そんな生活を一週間程続けて、雪ウサギ大量発生イベントが終了した。


最初は1日平均20匹程の狩っていたが、ウサギは徐々に数を減らしていった…それでも一週間を通して俺一人で百匹以上倒した計算になる。


そして、なんと大金貨を初めて手にしたのだった。


現在、大金貨三枚と小金貨七枚が鞄に入っている…


『ありがとうウザキさん…』


俺は死んでいったウサギ達に感謝を伝えた後で、イソイソとダンジョンショップに向かいこの世界に生まれてから一番の買い物をする予定だ。


370万円…乗用車が買えるし、ど田舎ならば中古の家が買えそうな金額で…今日俺は、人並みになる為にスキルを買うのだ。


店員さんに事情を説明して予算を伝える。


どんなスキルが有るかも解らないので、店員さんの知恵を借りたほうが良い。


〈身体強化〉 小金貨六枚


〈頑強〉 大金貨一枚


〈豪腕〉大金貨一枚


〈スタミナ〉小金貨六枚


一般的な、コモンスキルと言われるものだが、兵士や冒険者が好む基本セットであり、この4つを取得するとスキル同士が融合して、複合スキル・〈フィジカル〉になり各スキルの効果も少し上がるので、とてもオススメだといわれた。


確かにお値段以上かもしれない。


そして、俺の悩みを相談した結果、店員さんは、


「効果が有るか解りませんが、もしかしたら一番お客様の力になるかも知れません…」


と言って小金貨五枚の〈平常心〉という、錯乱や、精神攻撃耐性が上がり、いざという時の集中力が上がるスキルをオススメしてくれたのだった。


『確かに、虫でビビらなくなるかも…』


と考えた俺は、


「それも、お願いします。」


とお願いして代金を支払った。


店員さんは、


「お客様はスキルスクロールの取得方法はご存じでしょうか?」


というので、俺は、


「ご存じ無いのでお願いします。」


と素直に答える。


店員さんは、


「スキルスクロールに手を置いて、魔力を流すだげでございますのでは、試しに1つ…」


と促されるままに俺が魔力を流すと、スキルスクロールが光り、その光りがジワリと体の中に流れこんでくる。


暖かいような、こそばゆいような不思議な感覚を味わいながら、


『あぁ、これで素っぴん冒険者卒業だ…』


と、喜びを噛み締めていた。



無事に全てを取得して大満足の俺だが、本当の事をいうと中古の時間停止付きのウエストポーチも食事入れに欲しかったが、贅沢は言わずに次回にまわした。


一週間前は、『縁遠い』と思っていたスキルスクロールが手に入れる事が出来たのも、雪ウサギさんが大量発生してくれたおかげだ。


『本当に、本当にありがとう、うさちゃん達…』


と心の中で礼を言って、店員さんには、


「頑張って稼いで、時間停止のウエストポーチを、買いにきますのでその時は宜しく…」


と頭を下げてからダンジョンショップをあとにした。


金貨は綺麗サッパリなくなったが手元に残った銀貨で食糧を買って宿に戻る。


今日はお祝いだから少し奮発して雪ウサギのお肉をお肉屋さんで買ってステーキにする。


宿の共同キッチンで、ジュウジュウとウサギ肉を焼きながら、


『これ、俺が獲ったヤツかもな…』


等と考えて、


『改めて、有り難う…』


と、手を合わせてから頂く。


ウサギさんは、思った異常に油が乗り、たんぱくかと思っていたがかなりジューシーだった。


色々な意味で〈おいしい〉ウサギのおかげでスキルが持てたので、明日からは依頼か、買い取り素材を狩るのを頑張って、ポイントを稼いでDランク冒険者を目指す。


来月からは、可能ならば中級ダンジョンに潜ってみたいからね…


お肉は時間停止バッグがないと厳しいらしいが…冬の間に稼げるかな?


まぁ、何とかなるか…なんと言ってもスキルが手に入ったんだから!…

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