08 あたし、お父さんに会うよ
「こ、これは」
めかまじょに似た姿をした白銀人型の襲撃者をなんとか撃退した
「一人で驚いてなくていいから、なんなのか早く教えてよ」
美夜子のにべない反応。
「あ、うん、このロボットアームは、うちの技術が使われているっぽい」
「ここの?」
「うん」
であれば、確かに驚くべきことなのか。
自分が機械の身体なくせに機械工学の知識一般がまるでない美夜子にとって、よく分からないことであるが。
「つまりは、こいつのおとんが開発した技術っちゅうことやねんな」
この言葉使いは、もちろん
メンテナンス後に帰宅した彼女であるが、美夜子がまた襲われたと聞いて駆け付けたのである。
「そうだね。
「お父さん……」
ぼーっとした顔で呟く美夜子。
すっかり上の空である。
美夜子の立場からすれば、それは当然な反応だろう。
自分たちを襲撃した人型の機械に、父が作った技術が使われているのだから。
「うーん、なんやろなあ、小取のおとんは悪に寝返ったか、技術を盗まれて利用されたか、それとも金で技術を売ったとか、後は、ええとなんやろ……ん? ど、どないした優子さん」
早苗が左手の指を折り折り数えていると、
置いた腕に、ベルトを巻いて固定。学校制服の袖をめくって、パカリと人工皮膚を開くと、覗き見えている内部の超精密電子部品へと薄汚れたアルミシートを押し当てた。
ヴィーーバジバジバジバジ!
「ははぅああああああああああああ通電したああああああ! 優子さんなにすんのやあああああ!」
顔真っ赤にして怒鳴る早苗。
涙目だ。
「不謹慎なこといわないの」
おっとり優しそうに見える眼鏡女子、白木優子の本性が垣間見えた瞬間といえようか。
「せ、せやかてこいつ、ボケッとしとるんやもん。うちのこと怒って殴ってシャキッとするならその方がええやろ? せやけどまあ、悪かったわ小取。いい過ぎた。……ともかく、これはもう本人に会うしかないんちゃうか?」
「そうだね」
なにに謝られているのかはボケッとしていてよく分からなかったけど、とにかく美夜子は頷いた。
父に会う、ということに対して。
美夜子を襲った敵には、この研究所の技術が使われている。
これまで、同じ建物の上と下にいながらも、向こうからなにもいってこないことを理由に、まったく会うことがなかった。
でも、こういうことが起きてしまった以上は、もう自分のつまらない意地ばかりを張ってはいられないと思ったのだ。
「優子さん、所長からは返事は?」
「いえ、まだなにも」
典牧青年の質問に、白木優子は不安げに首を振った。
「なにがや?」
早苗が尋ねる。
「ああ、所長って部屋にこもりっぱなしで、直接に会う機会ってあまりないんだ。でも今日は起きたことが起きたことがだから、会議室に呼んでるんだけど返事もないみたいで」
「まあ、よくあることだけどね。志木島所長って経営者より研究者で、夢中になるとなにも見えくなっちゃうのよ」
「そうそう。仕方ないな、仕事の邪魔されたと不機嫌になるかも知れないけど、所長室に呼びに行くかあ」
だん、机を叩く音。
美夜子である。
乱暴にというわけでなく、さりとて弱くもなく両拳で机を叩いた。
栗色の前髪に隠れていた顔を持ち上げると、強い眼光を、頭ぼさぼさ白衣の青年へと向けた。
「ノリマキくん、あたしも行く。……会うよ……志木島博士……お父さんに」
でないと、なんにも進まないから。
きっといい加減イラついた神様が、背中を押してくれたのかも知れない。
美夜子はそんなことを思いながら、毅然と不安が混じった複雑な表情で、ゆっくりと立ち上がった。
「分かった。すぐ行こう」
典牧青年も立ち上がる。
こうして美夜子は典牧青年と、早苗にも付き添ってもらい、上の階にある所長室へと、ついに初めて向かったのである。
生身の心臓など
しかし……
所長室には、誰もいなかった。
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