第2話 最寄り駅は谷町線 四天王寺前夕陽ヶ丘駅
「次は、四天王寺前夕陽ヶ丘~。左側の扉が開きます」
車内アナウンスが流れ、電車が駅へと入っていく。
地下鉄谷町線は、地下鉄
谷町線は、大阪府守口市の
正式名称は、高速電気軌道第2号線。
なぜ「谷町線」と呼ばれているのかと言えば、谷町筋の地下を通っているから。
地下鉄のラインカラー・京紫色(ロイヤルパープル)は、谷町筋沿線に多くのお寺があることに関し高僧の袈裟の色をイメージしたものとなっているらしい。
私は
天王寺駅から大日駅までは、谷町線の主要駅である天王寺、谷町九丁目、谷町六丁目、谷町四丁目、
停車駅をいくつか書き出しても分かるとおり、大阪の地名は地元民でも馴染みがなければ読めない地名が至る所にある。
◇◇
電車が完全に止まり、扉が開いた。
初めて降りる駅は、少しだけ緊張する。
ホームに降り、掲示板を見ると、駅名を知らせる掲示板の下に、黄色のテープに黒い字で「四天王寺・一心寺 4号出口➡」と書かれている案内を見つけた。
目的のお店は四天王寺の近くだったので、矢印どおり4番出口を目指して歩き始めることにした。
③④番出口の改札前の見やすい位置に、立て看板が置いてある。
立て看板には「一心寺・四天王寺 この改札を出て④エスカレーター」と大きく書かれてあり、その下には一心寺と四天王寺までの行き方を載せた地図が貼ってあった。
四天王寺周辺は有名なお寺が多いため参拝客や観光客も多く、迷わないように立て看板を置いているのだろう。駅員さんたちの優しい心遣いが伝わってくるような立て看板だった。
改札を出て「四天王寺➡」と書かれてあるほうへ進み、正面にある階段を少し上ると、その先は地下通路になっていた。前方は左カーブになっていて、先が見えない。
大阪メトロの駅の中には、地上に出るまで地下通路を歩く駅もある。
私は初めて利用する駅の地下通路があまり好きではない。
初めて降りる駅では、この地下通路で本当に合ってるよね?このまま歩いて大丈夫だよね? という不安が、出口が見えるまで付き纏うから。
そういえば、天王寺駅で地下鉄御堂筋線から地下鉄谷町線に乗り換える際も、長い地下通路で繋がっていた。
本当にこの通路で合っているのかドキドキするほど長く感じられた天王寺駅の地下通路を思い出しながら、私以外誰も歩いていない苦手な地下通路を歩いていった。
◇
出口が見えてきた。
体感では長く感じたが、実際は距離的にも時間的にも短いものだった。
◇◇
四天王寺前夕陽ヶ丘駅の出口から陽光溢れる地上へと出た私は、現在地を確認するため周りを見渡した。
どうやら谷町筋から一本中に入った道に出たようだ。幅員や建物から鑑みて、昔からある旧街道のようだった。
大阪では、南北に走る道路には「
ちなみに、大阪でよく聞く「筋」と言えば、西から四ツ橋筋、御堂筋、堺筋、松屋町筋、谷町筋ではないだろうか。「通」だと、北から本町通、中央大通、
◇◇
ふと、パンのいい匂いが漂ってきた。
出口の前にお洒落でおいしそうなパン屋さんがある。腕時計を見ると午後1時前を指しており、間もなく昼休憩が終わる時間だったが、お客さんは多い。
焼きたてのパンの匂いと途絶えない客足が、美味しいパン屋さんだと教えてくれる。
お腹が空いていたので立ち寄るかすごく迷ったが、先に用事を済ませることにした。
帰りにパンを買って帰るのもいいな。
そんなことを思いながらマップに目的地を入れた。
旧街道の両側には、昔ながらの家とお洒落なお店、マンションなどが混在して建っており、なぜか懐かしい感じがする道だった。自転車で通り過ぎる人や歩いている人はいるが、平日昼間の人通りはそこまで多くなく、たくさんの車が行き交う谷町筋から一つ中に入っただけなのに、ゆったりとした時間が流れている。
マップで経路を確認しながら、携帯片手に右に左にせわしなく目を向け、1軒1軒どんなお店があるのか歩きながら見ていく。
知らない道を通るといろんな発見があり、ワクワクして楽しい。
空は雲一つないピーカン晴れで、午後1時の太陽は高く、4月初旬とは思えないくらい気温が上がってきた。少し歩いただけでも、制服のジャケットを着ていると汗ばんでくる。
リュックから水筒を取り出して、お茶を一口飲んだ。
またリュックに戻すのは面倒だし、このまま手に持っていこう。
水筒ケースの肩紐は二重になっているため長さも丁度よく、右手で持っても邪魔にならない。
汗ばむくらいの暑さと陽射しの強さに、日傘を差している人もいる。私も日焼け止めを買わなければと思いながら、マップを確認した。
そろそろ目的地に着くようだ。
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