死と対等なものは

猫又大統領

死と対等なもの

会社はクビ。婚約は破棄。俺が以外のフレーズを喋れなくなったからだ。

 世間も大変だった。ちょうどそのころ巨大円盤が現れて大ニュースになっていた。

 ため息を吐きながら、元婚約者がアイロンをかけてくれた最後のワイシャツに腕を通し、就活のために外へ出る。

 就活は失敗した。当たり前だ。歩きながら円盤を見上げていると、ちょうど横に黒い乗用車が止まる。

 中からスーツの男と全身が灰色で目が大きい二足歩行の生命体が降りた。

 男の話だと俺のフレーズは円盤にいる宇宙生命体と高度な対話が可能なんだとか。試しに男の横にいる円盤からの使者へ話かけるように言われた。

「あよこおこそら」俺が呟いた。

吸い込まれるように頭の中心へ相手の意思が入ってくるような感覚に戸惑った。この生命体の親兄弟や故郷で待たせている恋人のことを話してくれた。俺は婚約者との破談の話すると励ましてくれた。久々の交流に頬が緩んだ。

 その様子を見ていた男は地球に来た目的を尋ねるように言ってきた。男には教えてくれないそうだ。俺が尋ねるとすぐに答えてくれた。

 物騒なことをいうが、冗談も嘘も混じっていないことは深く繋がっている俺には明らかだった。

 それをメモに書いて男に伝えると男は慌てて電話をかけ、誰かと大声で揉め始めた。

 その時、鈍い音が聞こえた。灰色の生命体は倒れ、体から緑の液が溢れた。

「さっきから宇宙人とずいぶん楽しそうね。もう宇宙人はいなくなったから私と話そうよ」

 婚約者が緑色に染まったハンマーを持って立ってたい。

「一緒になるのか。死ぬか。決めてよ」彼女は泣きじゃくりながらいった。

「あよこおこそら」僕がそう叫ぶと。ハンマーが振り下ろされた。

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死と対等なものは 猫又大統領 @arigatou

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