第28話 ロディ、体の異常に気づく
(このままじゃだめだ。ダントンの横暴から妹を守り切れる自信が無い。)
ロディはダントンの悪意を身にしみて感じ、それと共に、彼が将来妹のエマにも牙を向けるであろうことをほぼ確信に近く予想していた。
(何かいい方法はないか。俺がもっと強くなれる方法が…)
事件以来、ロディはいろいろと考えていたが、すぐに強くなる方法などそう簡単に思い浮かぶものではない。
結局、地道に努力していくしか方法はないと結論付けた。
「そうと決まれば、今以上に頑張るしかない、」
ロディは剣術、体力の向上や、魔力身体強化の効率向上を今まで以上に時間をかけて励もうと決心した。
それからというもの、日々の剣の稽古と、帰ってからのザゼンによる魔力制御の練習に力を入れてた。
また最近はザゼンだけではなく、ランニングしながら魔力循環をする練習をし、さらには剣の訓練中も魔力を動かすことを始めた。
ザゼン中と比べて、動きながらでは魔力制御の難易度が格段に困難になる。これまでは難しすぎる、またすぐに疲れるなどあって、取り組んでこなかったが、ダントンの力を認識し自分の力不足を痛感したため、難しくとも自分にできることをやっていこうと考えたためだ。
おかげでロディは、へとへとになって夜は倒れるように眠る毎日が続いた。
ダントンに絡まれてから3ヶ月が経った。
ロディは、ザゼンの時であれば体内の魔力を思い通りに動かすことが出来るようになっていた。
魔力を集めて太いリングを形成して体の中心だけ循環させたり、逆に全身に散らして魔力密度をほぼ均一にさせたり、高速で循環させたり、逆にゆっくりとした速度で長時間動かしたり、様々な訓練の成果があらわれていた。
(ザゼンでは少し訓練が簡単になってきたな。何かもう少し負荷がかかる訓練はないかな。・・・あ、そういえば)
ロディはふと魔法陣製作士試験のことを思い出した。あの時は修正ギフトを使って新しい発見があった。
(ザゼンは目を閉じていたから「修正」ギフトを使うことを考えもしなかったけど、ギフトを使いながらだと何か新しい発見があるかも。ギフトと魔力制御を同時に行うのもいい訓練になりそうだし。)
早速ロディはギフトを使いながらザゼンをしてみた。
(・・・意外と簡単だったな。)
ロディが魔力循環しながらギフトを使うと、最初はギフト使用の魔力により体の中の魔力が粗密になり制御が乱れがちだったが、すぐさまコツをつかんだ。1時間も訓練をすると、ギフトを使用し魔力を消費しながら同時に魔力循環をこれまでと同じくらいスムーズに行うことが出来るようになった。
ただし、それを行うと体の疲れ具合がまるで違った。ギフト無しならそれこそ1日中でも魔力循環を続けることが出来るが、ギフト使用と同時だと30分もやり続けると疲れ切って立てなくなるほどだ。
が、ロディは逆にやりがいも感じていた。
(これは短時間で大幅にギフトと魔力制御を同時に鍛えることができるな)
ロディはこの訓練を前向きにとらえ、日々の訓練に取り入れた。
ロディがその訓練を初めて1週間が過ぎたころのこと。彼がギフトを使用しながら魔力を循環させ続けていると、ギフトに違和感を感じた。
(おや?ギフトが”反応”しているように感じる。なんだ、この感覚は!?)
目をつぶっているためこれまでの「修正」ギフトのように”赤いしるし”は当然見えないが、体内の魔力を通じてギフトが何か反応しているように感じる。
確証はないが、ロディにはギフトが何か流星すべき点を教えてくれているように感じた。
(イマイチ漠然としてわからないけど、多分何かあるはず。よーし、その何かを絶対に見つけてやる)
ロディはそれを見つけようと一心に体の魔力を操る。
10分、・・・20分、・・・30分、・・・
が、いくら魔力を動かしてみても一向に何かわかる気配がなかった。ロディの額から汗が流れる。
その汗を感じた時、ロディははっと気が付いた。
「しまった、ザゼンの基本を忘れていた。」
ザゼンは静の心で行わなければならない。しかしロディは焦るあまり全身に力が入ってしまい、そのため汗をかいていたのだ。
それに気づいたロディは大きく深呼吸して気を静め、そしてゆっくりと静かに魔力を全身に循環させた。ただ魔力を巡らせ、ただギフトを発動させ、それを続け、自分はただ魔力への感度を高め、何かの反応を捕らえるように静かに待った。
それをしばらく続けていくうち、ロディはあることに気づいた。
(変だな。魔力が全く通らない場所がある・・。)
しかしロディは体の魔力を動かし続けるうちに、自分の体の一部に、具体的に言うと頭の中心あたりに魔力が全く通らないない『空白地帯』があることに気づいた。
通常、魔力は体中のあらゆる部分に含まれており、体中どこでも魔力は通るはずである。しかしその空白には魔力が全くないようで、魔力を循環させたり誘導させたりしてもその場所には入っていかないのだ。
その”空白”はイメージ的に卵くらいの大きさで、周りに分厚い”壁”があり、中は見えないが、空洞のようにロディには感じていた。
そして「修正」ギフトはどうやらその「空白」に反応している感覚がある。
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