奥さんは、蟲使い?
影神
イケない言葉
学校に。
行きたくない、、
「行って、きま、、す。」
「行ってらっしゃい!」
忙しいそうに、直前まで用意をしながらも。
母さんは玄関の入り口前で、必ず僕を見送った。
毎日。欠かさずに。
だから、
『行きたくない』
なんて、言えなかった。
きっとあの日。
いつもの様に、父さんを見送らなかった事を。
今でも後悔しているのだろう、、
楽しそうに走り、学校へと向かう生徒達。
その中で、僕だけの足が重い。
帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい。
母さんと父さんが。
たまに、する"喧嘩"をした。
何処にでもある様な。些細な事だった。
勿論。内容を詳細に知っていた訳では無かったが。
話している内容からして。
互いの言い方や、話し方が、悪かった様だった。
その時のタイミングや、その時の調子で。
言葉の重さはより重く。
相手をいっそう深く。傷付けてしまう、、
それは、取り返しのつかない事へとも。
発展してしまう場合も、あるのだ、、
男子生徒1「泥棒!」
男子生徒2「泥棒野郎!」
男子生徒3「勝手に物を使われるぞ!」
男子生徒4「ちげえよ。
盗られる。
だろ??」
生徒達『アハハハハハハ』
学校に行かせるのだって無料(タダ)ではない。
教科書代や体操服。
上履きや、給食費等のお金が掛かっている。
隠された上履き。
落書きされた教科書。
汚れた、体操着。
「えー。それで、こうなって、、
お前。上履きはどうした?」
もう、何日も履いてなかったのに。
今になって。
担任はまるで、さっき気付いたかの様に話す。
「、、失くなってて。」
担任「そんな訳は無いだろう。
明日はちゃんと持って来いよ??
それに、、何だこの体操着。
お母さんは洗ってくれないのか??
まあ、例えそうだとしても。。
自分の着る物くらい。
ちゃんと洗えよ?」
生徒達『アハハハハハハ』
ただの憂さ晴らしがしたかっただけ、、
机の上に置かれた落書きされた教科書には、
一切。目を合わそうともしなかった。
僕は"学校で"虐められていたのだ。
誰も。助けてはくれなかった、、
僕の机の上に、ペンが置いてあった。
その時に自分の筆箱の中身を。
一度、確認すれば良かった。
ただ、それだけの事だったのだが。
僕は"それ"をしなかった。
自分の机に置いてあったそのペン。
当たり前の様に自分のモノだと思っていたからだった。
それから、周りの生徒が騒ぎ出した。
男子生徒4「俺のペンが無い!!」
男子生徒2「誰かが盗んだんじゃね??」
男子生徒3「誰だよ、、」
話は大きくなり。
担任は持ち物のチェックを始めた。
僕には全く関係の無い話だと思っていたから。
普通に、持ち物を広げたが、、
担任「お前。
何で、あいつのペンを持ってんだ??」
「えっ、、」
筆箱から出てきたのは、僕の持っていたペンと同じ。
彼が探していた、もうひとつのペンが出てきた。
男子生徒4「泥棒だあ!」
女子生徒1「泥棒、、」
男子生徒5「マジかよ」
女子生徒2「最低。」
「違うんだ!!!
僕は盗ってない!!
机の上に置いてあって、、
それで。。
僕のだと思って。。」
担任「言い訳は良いから。
まずはあいつに、ちゃんと謝れ!!」
教室に響く怒号。
「、、ごめんな、、さい。。」
男子生徒4「泣いて済むなら、、
警察なんて。要らないよ?」
母さんと父さんが喧嘩した理由。
母さんが父さんを見送れ無かった原因を。
父さんがあの日。
事故に巻き込まれた出来事を。。
全ての事を。つくってしまったのは、、
僕だった。
「ただいま、、」
母さん「お帰りなさい。
あらっ。
また体操服汚しちゃったの??」
「うん、、転けちゃって。」
母さん「怪我しなかった??」
「大丈夫。。あっ、それと。
上履き。新しいのを、買って欲しいんだけど、、」
母さん「上履き??
この間、買わなかったっけ??」
「かかとが痛くてさ、、」
母さん「成長期だからかな??
今度買いに行こうね??」
いつもと変わらない母さん。
だが。それは一本の電話で変化した。
学校に呼び出され。
母さんと僕は学校へと向かった。
担任「お母さん。
お子さんの事をしっかり把握していないと。
ましてや、盗みなんて、、」
担任は僕の理由(言い訳)を話す訳も無く。
「まあ、学校としては、
そんなに大きくするつもりもありません。
お父さんが亡くなられて、
少し気がおかしくなってしまっただけでしょう。
相手の保護者の方には、
こちらからきちんと話を通しましたので、、
お母さんの方からも。
帰ったら、息子さんと、きちんと。
話し合って下さい、、」
校長も。
僕の話を聞くつもりも無い様だった。
『すいませんでした』
母さんは何度も深く頭を下げた。
パシンッ!!
母さん「どういうつもりなの!!?
どうして盗んだの!!!
イケない事でしょ!!??」
僕は言い訳をするのも疲れてしまっていた。
誰も。
僕の話等。
聞いてくれる人は居ないのだから、、
女子生徒3「泥棒のご飯。
はいっ。」
男子生徒6「監獄飯!!」
男子生徒7「トッピング!」
給食の中に入れられたのは虫だった。
女子生徒4「気持ち悪い、、」
女子生徒5「あれ。食べるのかなあ??」
「これは、やめなさい??」
その時。
僕の前に立つ、ひとりの女の子が居た。
1度も話した事のない、転校生の外国の女の子だった。
女子生徒6「やめなよ、、
虐めれちゃうよ??」
女の子「これ、つまらない。
食べ物は、勿体無いはいけない。。
虫。可哀想。。
わかったら、しない。」
男子生徒4「まともに話せない女が。
調子こいてんじゃねえぞ!??」
女の子には、パンが投げられた。
パンは女の子の顔に当たり、床へと落ちた。
女の子は黙ってそれを拾うと。
投げた男子生徒の元へと行き。
「食べ物を勿体無いにした。悪い、、」
続けて何かを言った。
それは聞き慣れた言葉ではなかった為。
何を言ったのかは分からなかった。
だけど、一瞬。
その男子生徒の顔が歪んで見えた。
女の子は廊下から手を招いていて、
僕は虫の入った給食と一緒に、廊下へと出た。
「あり、がとう。。」
女の子「男の子は、泣かない。
これ。いりますか??」
何かは分からなかったが、僕は頷いた。
すると女の子は虫をスプーンで取って、
近くの草の中に落とした。
女の子は何かブツブツと唱えると、
僕の手を握って、教室へと戻って行った。
女の子「皆、お友達。
ご飯食べるです!」
皆は女の子から距離を置いていた。
皆。彼女の放った言葉が恐ろしかったのだろう、、
何せ。一瞬のあの出来事を。
皆見ていたのだから。
彼女の言葉を聞いた男子生徒は。
それから卒業までの間。一度も。
学校へは来なかった。。
あの時の事を今でもたまに話す。
それは、彼女(奥さん)と出逢った。
大切な記憶(物語)だったから。
ある時聞いた話しでは。
あの日言ったコトバは。
言ってはイケない虫の言葉だっただとか。。
それ以上は聞けなかった。
いや。聞かなかったのだ。
世の中には、知らなくてもいい"コトバ"がある。
僕は今日も。
奥さんと幸せな日々を過ごしている。
それだけで良いのだから、、
奥さんは、蟲使い? 影神 @kagegami
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます