『限』



静寂と暗黒に包まれた地球に向けて、宇宙の彼方から火柱が伸びる。

碧色の炎の柱は酸素や温度に左右されず直進し、そしてそのまま、地球に着弾する。



「『第二の終末兵器』とは核兵器の威力を数百万倍も上回る対惑星用の戦略兵器、『限』を指していてる。 これを地球に向けて発射することが、終末の第二段階だ」



地上から見ればその火柱は神々しいものに見えていただろう。

その景色はまるで、神の召喚。

大地を抉りながら拡大していく膨大な光。

暴力的に輝くその一直線は、夜空を二つに区切る。

数秒後、その直線に全てが飲み込まれた。


ほとばしる緑白い一閃に視界が圧縮された。

その情景は、人間では理解できない上位の存在が、大口を開いて空間ごと胃袋に収めようとしているようにも見えた。



「人類の歴史とは、突き詰めれば破壊スクラップ創造ビルドの歴史でしょう。 創って、より良さを求めて壊し、創って、より良さを求めて壊し、創る。 我々人類は、それでしか前に進めない。 それでしか愚かしさに気が付けない。 『限』の炎が全てをリセットしたら……、日本のサムライ達よ、貴方達が、地球をまた一から創り直すのです。 私たちも出来る限りのサポートはしますが、終末後の地球には人類が培ってきた文明の残骸しか残っていませんから、まずは食人によって飢えを凌ぐ日常がやってくるでしょう。 それは昨日は友好的であった隣人が刃物を持って寝込みを襲ってくるような、悪夢のような時代です。 それでも、最後の最後に武器を捨てることができた賢い貴方達に、はじめから世界を創り直して貰いたい。 汚染された水を飲み、毒の様な空気を吸い、確かに残った植物の種を育て、微かに残った人間の轍を守って欲しい」



ホーキングは天皇陛下と共に『方舟』の中に並ぶ日本国民全てに向けて続ける。



「本当に醜くて、本当に無駄なことは、人類同士で滅ぼし合ってしまうことだ。 しかし、破壊と創造でしか進化する方法を知らない人類に、争いは不可欠。 だから定期的な『食事』を行う。 争いの規模をリセットするために。 次の争いが不可避のものであるとしても、次の次の争いは、ひと回り小さいものに、出来る限り小さなものにしていくことくらいは可能なはずだからだ。


……我々、『トゥールスチャ』の仲間の一人がこんな言葉を残している」










『第三次は知らないが、 第四次世界大戦は石と棍棒によって行われるだろう』


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