『指向性太陽面爆発』


世界が、暗黒に包まれた。


文明という文明が、全滅した。


超大規模の太陽面爆発フレアの発生により地球に電磁波が到達し、世界中に電子機器EMP障害が発生したのだ。


地球上のありとあらゆる生活が中断され、原始的な炎のみが残った。





皇帝陛下の元に『トゥールスチャー』から通信が入る。


「地球に『指 向 性 太 陽 面 爆 発ルカの福音書12章49節』を下した。 もうじき『第二の終末兵器』に以て『食事』を開始する。 それまでに、我々の誘導する通りに『方舟』に乗りたまえ」


通信の直後、天皇陛下の眼前の空間に、黒い穴が開口した。

高さは2メートル、横幅は1メートル程の穴。

その純黒から、ステッキとハット、正装に身を包んだ青目の白人が浮かび出てきた。

彼が言葉を発すると、胸元の花飾りから人工音声で日本語が飛び出た。


「驚かせてすまない、私の名はスティーヴン・ウィリアム・ホーキング。 イギリスの学者だ」


それは、死亡したはずのホーキング博士の若き姿だった。


「これから日本の全国民をこの『ポータル』で『方舟』に招待する。 安心してくれ、そのための準備は既に完了している」


日本の上層部は彼に手招かれるまま、穴の奥へと歩を進める。

数歩、漆黒を歩くとその先には、完全なシェルターが待っていた。


「『方舟』とは人類全てを丸ごと移住させられる、『終末兵器』の炎を逃れるための月面有酸素隔離シェルターだ。 私は生前に『トゥールスチャー』の一員に加わり、ホーキング放射を利用したタイムマシンとポータルを制作した。 そして人類を大戦による滅びから救うため、研究を続けたんだ。 君たちは武器を捨てる勇気のある人達だ。 恐怖に怯えて銃を手に取る、愚かで暗黒の生命とは違う」


そしてホーキングは胸の花をスーツから剥がし、唇に近づけてこう言った。





「これより、暗黒の生命を浄化する『第二の終末兵器』を発動する」


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