第35話 一匹、深夜の勧誘活動。
もうだいぶ日常の一部として馴染んできた深夜の変化。
あずま袋を製作する作業が減って、そこに新たに加わったマリのお願い。しっかり者の彼女にも子供の頃からの憧れがあったことに感謝する。そしてそれを叶えられる可能性が自分にかかっているのだとあれば、張り切らないはずがない。
多少ポイントの使用は多くなるけれど、スマホ画面に映るマリの幸福値が上がっているのを目にすることが出来れば、大した問題ではなかった。そもそも人型になりたいのはわたしの願いであって、マリのものではない。最重要なのは守護対象者が幸せを感じることだ。
何をして欲しいのか。何をされるのが嫌なのか。彼女が教えてくれることが、次にわたしが差し出すべきもの。今回の場合は微力な回復魔法しか使えないわたしの代わりに、彼女の憧れを叶えてくれる協力者を募ることだ。
◆◆◆
₯▲√₹₪₪₰■
₣₱₪₷◆₪₪₷▲
₪₪₱▼₫₣₪■℘℘ 1400PP+
℘₪℘₣■■₪₪₰℘ 2800PP+
₫√₱▼▲▲₪₣℘◆ 900PP+
₪₣₣℘₪■℘!!
▶▶▶……₪₹₰■₪₷■2700PP₪₪ 5――、
◆◆◆
素材集めで張り切りすぎたマリは良く眠っている。起こさないようにソッと枕の下にスマホを押し込み、ベッドから飛び降りてリビングにはまだ行かない。窓辺に置いてある小瓶に用があるからだ。
すぐに見上げる程だった窓が腰より下の位置になり、出窓の腰かけ部分に置いてあるわたしのベッドの隣に用意された小瓶を手に、今度こそ部屋を出た。
小瓶を一旦テーブルの上に置き、いつもそうするように鏡の前に立つ。銀色の髪は肩を越して邪魔になってきたものの、商品にならなかった失敗作の髪飾りで纏めれば然程気にならない。
顔立ちから考えられる年齢は十五歳前後。輪郭から丸みが完全に取れたのに、どこかまだ子供っぽさが残っているのは不思議だ。肩幅の広さも胸板の厚さも足りていない。一つだけ喜ばしい部分を探すとすれば、身長はもうマリとほとんど変わらないところだろう。むしろ僅かに高いくらいだろうか?
マリは同性達の中では少々背が高い。そのせいで無自覚に自分よりも身長の低い者を守ろうとする。彼女のそういうところはとても好ましいが、同時に酷く無謀な癖だとも感じる。
この間もレティーがエドの店で高い場所の商品を取ろうとした時に、誤って落とした籠からレティーを庇った。あの時は怪我がなかったことに安堵したけれど、あれがもっと重いものだったらと思うと今でも背筋が寒くなる。
彼女が潰されそうになった時に、覆い被される背中が欲しい。
彼女が無謀なことをしようとしたら遮れる力強い腕が欲しい。
そのためにはもっとポイントを貯めなくては。そしてそのためにも、マリには毎日一分一秒でも長く幸福を感じて笑っていて欲しい。全部無力で落ちこぼれなわたしの
どこから触れるか分からない。そもそも違反や禁止があるのかすらも。でも上級精霊達は皆気まぐれだ。用心をするのに越したことはない。過去にわたしのように守護対象者を得た精霊達はどうしていたのだろう。どこかで出会う機会があれば是非ご教授して欲しいものだ。
そんなことを思案していたら、鏡に映る暗闇の中で極微かに黄緑と赤の光が揺れた。待っていた同族の来訪に期待が高まると同時に緊張が身体を強張らせるけれど、わたしの交渉にマリの願いの成就がかかっている。
暗闇で光る赤い瞳を鏡から逸らしてテーブルへと近付けば、小瓶の中に入った鈍色に輝く小石と赤みがかった小石の周囲で演舞が始まった。微弱な火と土の気配。癒しの力がある水属性のわたしが持っていない気配を引き当てられたことに、思わず頬が緩んだ。
「
静かに小さく語りかけた小瓶の中で、かつて〝忠太〟になる前だった頃のわたしと同じ、剥き出しの存在達がクルリと踊った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます