第23話 子猫の姉貴分
「がっ!?」
「おらっ……ごはっ!」
「うわあ!?」
「ごはっ!」
その姿は、まさに鬼神と呼ぶにふさわしいものだった。
金属バットを、ナイフを、鎖を、鉄パイプを……ありとあらゆる武器を手に数多くの不良少女たちが一斉に結衣に襲い掛かるも――全て、薙ぎ払われた。
「ちくしょう! ぐ!? かはっ!」
「が!? てめえ、バカ野郎! なんでわたしを殴るんだよ!?」
「わ、わりい! ――あっ!? がはっ!」
正面から挑めば当たり前のように迎撃され、後方からの不意打ちにも流れるように対応。
人数の多さから生じる混乱を利用し同士討ちも演出してみせ、ただの一撃たりとも結衣に攻撃を当てられない。
結衣との鬼ごっこで消耗している者もいるが……それにしても、差は歴然だった。
そもそも、本来であれば結衣はまだ病院のベッドで寝ていなければならない身だ。
にも関わらず、この圧倒的な強さ。
人数という戦力を削られるだけでなく、不良少女たちの戦意そのものも砕け始めていた。
秋山は、じっと結衣の姿を見つめたまま、戦線には参加しない。
他にも、数人の不良少女たちが、恐怖に呑まれ、あるいは、別の理由からその場から動けずにいた。
秋山への忠誠心や恐怖心によって結衣に戦いに挑む不良少女たちは、次々と悲惨な末路を辿っていく。
誰がどこから何人でどんな武器を手に襲い掛かろうと、結衣は無言のまま、全てを蹴散らしていく。
「……やっぱり、バケモンだ。あの人」
「ホントに入院してたのかよ」
「ありえねえ……」
恐怖だけではない。
結衣の戦う姿――拳の動き、体さばき、蹴りの鋭さ……まるでそのひとつひとつが芸術品に感じられて、誰もが魅入ってしまう。
「うあああああああごっは!?」
たったひとり、最後に残った不良少女が、悲鳴と共に金属バットを振り下ろす。
けれど、真上から振り下ろされた金属バットは嘘のようにあっさりと空を切り、コンクリートの大地をわずかに削り火花を散らす。
同時に、結衣の強烈な蹴りが真横からどてっぱらにぶち込まれ、そのまま吹き飛んで気絶した。
ぐらっ!
「「「「「「!?」」」」」」
あっという間に、十数人の不良少女たちが倒され絶望が確定した刹那――ふいに、結衣の身体が大きく傾ぎ、膝をついた。
「……っ!」
はじめて、結衣の顔色に焦りのようなものが生じたのを、その場にいる全員がはっきりと認識した。
少しの間、膝をついていた結衣は、やがて、ゆっくりとした動きで……否、不自然な動きで立ち上がった。
「……どうした、結衣? やっぱり、病み上がりで無理してんのか?」
さっきまで緊張に漲っていた秋山の表情が、和らいでいた。
同じように、ほっとしたような表情を浮かべていく不良少女たち。
「まあ、ちょっとな。気にすんな。どんどん来いよ」
事故の際、結衣に致命的な怪我はなかった。
それは、結衣の並外れた運動神経と反射神経がなせる受け身によるもの。
だがそれでも、全身を打ち、運悪く頭部にダメージを喰らった結衣は、病院で昏睡状態になることを余儀なくされ――それによって生じた身体への歪みが、今の結衣へと確実に襲い掛かっていた。
勝機。
それを見出した秋山と不良少女たちに、獰猛な笑みが浮かび始める。
そうだ。
そもそも、結衣は、とても楽しそうに喧嘩をする女。
それがどうだ?
今は、どこか必死な表情で無言のままただ戦い続けていた。
「お前ら、全員で行け」
「「「「「はい!」」」」」
秋山は、今この場において最適な答えを口にする。
やれる。
やはり、結衣も人間。
このまま数で押し切れば必ず限界が訪れて勝てる。
その思いが、不良少女たち全員に伝わり――一斉に襲い掛かった。
「おらあっ! ―ーあぐっ!」
「がはっ!」
「ああああ!」
ひとり、ふたりと、不良少女たちはあっけなく倒されていく。
しかし、さっきよりも結衣の動きが確実に悪い。
まるで、電池の切れた玩具のような印象を受けるその姿からは、隙だらけだった。
「ぐっ!」
がくっ! と、結衣がまた不振然に片膝をついた。
その隙を逃すわけもなく、容赦なく金属バットが振り下ろされる。
右手でそれを受け衝撃を受け流した結衣はごろごろと転がり、距離をとる。
しかし、追撃をかける背の高い不良少女の蹴りが結衣を襲い――それを見た結衣は、寝たままの姿勢でバネのように勢いよく身体を真横に動かし、蹴りを放つ少女の足のもう片方、地面で身体を支えるもう一本の足を蹴り飛ばした。
「あっ、ごばっ!」
同じようにコンクリの地面へ倒れた不良少女の顔面に、結衣は杭を打つように強烈な蹴りを叩きこんだ。
そうして、すぐさま結衣派立ち上がり――
「! がっ!」
突如、段ボール箱を投げつけられたことに一瞬気を取られた瞬間、左右から同時に仕掛けられた。攻撃をまともに受ける。
ひとりは、拳。
ひとりは、鉄パイプ。
反射的に鉄パイプの攻撃をいなすも、拳を腹にまともに喰らう。
「……っ!」
「……これで、ようやく終わる」
その一部始終を安全な場所から眺めていた秋山は、万感の想いが自然に口をついて出る。
これで、結衣は終わりだ。
これで、ようやく――。
結衣に殺到する数人の不良少女たち。
一人の不良少女が金属バットを大きく振りかぶるのがやけにスローモーションで見える。
あと、少し、あと一秒にも満たない時間で、結衣は終わる――。
「は!? あぶっ!」
「!? お、おい、お前何して――ぎゃっ!」
「「「「「「「!?」」」」」」」
だが、事態は、一瞬で変わった。
そのありえない光景に、秋山は血走った両目をいっぱいに見開いた。
なぜなら、あとほんの少しで結衣の頭に叩き込まれるはずだった金属バットが、真横から鉄パイプによって弾かれたからだ。
ついで、鉄パイプで金属バットを弾いた不良少女とは別の不良少女が、結衣を金属バットで殴ろうとしていた不良少女の顔面を殴り飛ばした。
その動きは、ひとりやふたりじゃない。
「……おい」
なぜか、結衣に攻撃を加えようとする不良少女たちを、それまで共に結衣に襲い掛かっていた不良少女たちが攻撃し、結衣を守っている。
「……おい、お前ら!!! 何やってんだよ!!!」
喉が切れるほどに、秋山は叫んだ。
ありえない光景が、目の前に広がっている。
「……お前ら」
呆然と、何が起きたのかわからずに自分を守る不良少女たちを結衣は見つめる。
「おかえりなさい! 結衣さん!」
「ウチら、ずっと待ってました!」
「ウチらは、結衣さんにつきます!」
裏切り。
そう、それは裏切りだった。
突如、数人の不良少女たちが裏切り、結衣の方へついたのだ。
ぽん。
「!?」
突然、隣から肩を叩かれた秋山は、びくりとしてそちらを見る。
そこには、チーム最初期から共に歩んできた不良少女、鮎川千咲がいた。
身長の高い鮎川は、自分よりも背の低い秋山を見下すように見つめていた。
「まあ、こうなるわな」
「……千咲、てめえ!」
「元々、結衣が戻ってきたらこうするつもりだったんだよ。お前には、リーダーは荷が重い」
元々、このチームは、結衣派、秋山派で別れていた。
結衣は、優しさとあたたかさによって慕われ、秋山は恐怖とカリスマ性による支配で慕われていた。
いわば、結衣は穏健派であり、秋山は過激派。
それぞれの派閥で、それぞれを慕う不良少女たちの溝は、実のところとても深いものだった。
結衣の事故により、結衣派の不良少女たちは実質的なリーダーとなった秋山に従うしかなかったが……もしも、結衣が戻ってきて争いになるようなら、結衣の方へつくと話し合って決めていた。
秋山が、チーム内の№2であることは間違いない。
秋山派の勢力も大きい。
結衣が不在では、チームの№3たる鮎川も動けなかった。
だが、その状況も終わりを告げた。
状況を見極めるために様子を見ていたが……結衣がやられそうになるとなれば、動かないわけにはいかない。
「……!」
「おっと、妙な真似すんなよ」
殺意をみなぎらせ、自分に殴りかかろうとする動きを見せた秋山を、鮎川は鋭い眼光で制する。
「見ろよ、この状況、下手すればお前もただじゃ済まねえぞ?」
「……!」
そこで、秋山は気付いた。
今、この場にて、意識を保ち立っている不良少女は……明らかに、結衣派の不良少女たちが多い。
そうか、とそこでようやく秋山は気づく。
なぜ、結衣が現れてすぐに鮎川たちが動かなかったのか。
それは、秋山派の戦力を削るため。
病み上がりとはいえ、結衣は化け物。
秋山の側近である須藤を倒した動きからも、それは明らか。
下手に動いて場を混乱させるよりも、秋山に気を遣い、率先して結衣に襲いかかる秋山派の不良少女たちを結衣に倒してもらえば、場を有利に進めやすくなる。
もし、結衣がやばそうなら、こうして助ければいい。
「……!」
怒りと後悔で秋山は頭がおかしくなりそうになる。
見誤っていた。
結衣がいない内に、結衣派の不良少女たちの心を変えようと苦心したつもりだった。
談笑の中で、結衣の悪口を言わせるところまでマインドコントロールをしたはずだった。
この鮎川も、表面上は親友のように秋山に接していた。
秋山の心理戦は、順調だったはずだ。
……だが、真実は失敗していたらしい。
どうやら、彼女らの見せた心変わりの様子は、全て演技だったようだ。
現に、思ったよりも遥かに多く、結衣派の不良少女たちが残っていた。
「バラしちまった以上、ウチらも後戻りはできない。わかるよな?」
鮎川は、ゆっくりと秋山に語り掛ける。
「……」
暴走しかける脳を強引にクールダウンさせながら、秋山は状況を把握する。
自分を慕う不良少女たちは、そのほとんどがコンクリの地面に横たわっている。
残る不良少女たちも、圧倒的に結衣派が多い。
完全に勝つことは、すでに不可能。
そして、逃げるとしても多大な犠牲を払うことになる。
「ひとつ提案がある」
「……なんだ?」
「結衣とサシで勝負しろ」
――その鮎川の提案に、秋山は息を飲む。
「もしお前が勝てば、ウチらはこれまでどおりお前に従う。だがもし、結衣が勝てば……その時は、結衣がリーダーに戻る」
「――は」
呆れるあまり、秋山は思わず声が漏れる。
「……最初から、それが狙いかよ」
「結衣も、それでいいか?」
「……ああ、わかった」
やはり、病み上がりの身体がつらいのか、明らかに疲弊した様子の結衣が、こちらへ近づきながらはっきりと了承の意を伝えた。
「悪いな」
「いや、助かったよ」
心からの感謝を伝えると、鮎川は申し訳なさそうな笑みを浮かべる。
結衣の状態は、明らかに悪い。
本当なら、今すぐに救急車を呼ぶべきだろう。
だが、この戦いは――結衣と秋山の間で決着をつけなければ終わらない。
それも、今この場において。
この機会を逃せば、おそらくもう、このチームは手遅れになる。
もしもの時は、何があっても結衣を守ると心に誓いながら、鮎川は決戦の場を整えた。
「……」
「……」
円形に、残る不良少女たちがぐるっと結衣と秋山を取り囲む。
まるで、相撲の土俵のように、円の中心で向かい合った結衣と秋山は、互いにじっと見つめ合う。
ちりちりと、再び火をつけられた一斗缶が静かに音をたてていた。
「……は、まさか、お前とサシでやり合うことになるとはな」
叶うなら避けたかったと、微塵も隠すつもりもなく、秋山はそう言った。
「わたしは、わくわくしてるな。実は一度、お前と全力で戦ってみたかった」
「戦闘狂が」
互いに、ジャブのように軽口を交わす。
次いで、訪れる沈黙。
それはまさに、嵐の前の静けさであり――やがて、一気に爆ぜた。
「らああああああ!」
「あああああああ!」
バゴ!!!!!!!!!!
クロスカウンター。お互いの顔面へそれぞれ一撃を入れる。
意識が飛びそうになるのをこらえ、続けざま、攻撃を放つ。
ドゴ! ガ! ブン! バゴッ!!! ドガ!!! ドガ!!! ドガ!!!!!!!!
「お前が! お前がずっと邪魔だったんだよ! 結衣!!!!!」
秋山が、血塗れになりながら叫ぶ。
お互い、一切攻撃をかわさない。
お互いの全てをぶつけ合い、お互いの全てを受け入れ、戦う。
「いつもいつも、お前はわたしの上にいた! 常に私の先を歩いていた!
お前がいる限り、わたしは一番になれない!!! 頼むから、さっさと消えろよ! 結衣!!!!!」
結衣と秋山は、幼馴染だ。
お互い、家庭環境に恵まれず、悲惨な子供時代を送っていた。
そのせいか、秋山はいつもいじめられ……それを、結衣が守っていた。
結衣は、強かった。
自分と同じようにひどい目にあっていても、笑顔を忘れず、子供の頃からみんなに好かれていた。
秋山も、結衣のことが好きだった。
いつも自分を守ってくれる結衣が、こんな自分のそばにいて友達でいてくれる結衣に、感謝していた。
家で虐待されていても、殴られていても、いじめられていても、どんなにつらいことがあっても、結衣がいるから、毎日を生きようと思えた。
優しい両親に愛情たっぷり育てられている普通の子とは違う。
結衣も、自分と同じ、ひどい境遇で苦しむ仲間。
結衣と一緒にいたい。
これからも、ずっと、一緒にいたい。
「あああああああああああああああああああああああ!」
でも、ある時、ふと思った。
同じ境遇なのに、同じ人間なのに、どうして、こうも違うんだろうと。
結衣だって、家では両親からひどい扱いを受けていると聞いた。
自分も同じような境遇だから、そのつらさがよくわかる。
だから、結衣と自分は同じだ。
なのに、結衣はいじめられない。
自分は、いじめられる。
なのに、結衣はみんなから好かれる。
自分は、みんなから嫌われる。
なんで?
どうして?
自分と、目の前の女の子は、何が違うの?
なんで、いつも結衣の方が成績がいいの?
なんで、いつも結衣の方が運動が得意なの?
なんで、いつも褒められるのは結衣なの?
なんで、先生は結衣を愛おしそうに見て、わたしを可哀そうな目で見るの?
なんで、「なーんだ、今日は結衣ちゃんいないんだー」て言われるの?
なんで、結衣が一緒じゃないと、誰もわたしと一緒に遊んでくれないの?
「結衣いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。蹴る。蹴る。蹴る。蹴る。蹴る。
全てを吹き飛ばすくらい強く。
何もかも壊すくらい激しく。
全部、全部、消えろおおおおおおおおおおおおお!
いつも、結衣が一緒にいてくれた。
だから、わたしはいつも『下』だった。
常に、結衣の『下』。
いつまでも、1番になれない。
どんなに頑張っても、2番で終わる。
永遠に、空を見ることができない。
まるで、いつまでも消えない岩が自分の頭の上にあるように。
「だから、お前をハメてやったんだああああ! お前が死ねば! わたしが1番上になれるからよおおおおおお!」
これまでずっと秋山はただ戦いを見ていた。
だから、体力は十分に残っている。
対する結衣は、元々満身創痍な上に、無理な喧嘩で激しく消耗している。
しだいに、秋山は押し始めた。
「どいつもこいつも、わたしを見下しやがる! いつまで経っても世界が変わらねえ! だったらどんな手を使ってでも上に行くしかねえだろ!? わたしを見下しやがったバカ共を、今度はわたしが見下すんだよ!!!!!」
ドン!!!!!!!!!
「「「「「「!!!!」」」」」」
秋山の全力の一撃が、結衣のみぞおちに見事にハマった。
勝負がついた。
誰もがそう思うほどの一撃に、見守る鮎川たちに戦慄が走り、残る秋山はの不良少女たちに希望をもたらす。
ドガ!!!!!!!!
「っ!? ぶ!!!」
だが、それも一瞬。
自分でも快心の一撃を放ったと油断した秋山は、結衣の拳に対応できなかった。
思いきり顔面に喰らい、そのまま吹き飛んだ。
「たく……お前は、ホントにバカやろうだな」
血が、結衣の口から垂れていた。
当然ながら、みぞおちは人体の急所のひとつであり、格闘技でもみぞおちを狙う技が作られているほどだ。
そこに、思い切り攻撃を喰らってただで済むはずもない。
本来なら、結衣はそのまま失神し、勝負はついているはずだった。
だが、結衣は倒れるわけにはいかなかった。
どうしても。
「いつまでそんなくだらねー、嘘ついてるつもりだ」
「あぁ? 何が嘘なんだ? おい?」
ぐぐぐっと、顔をあげ、コンクリの地面に手をついて秋山は立ち上がる。
「お前が1番になりたいってんなら、好きにしろよ。そんなもんいくらでもくれてやるよ」
「……てめえ!」
そういうところも、大嫌いだった。
自分が欲しくて欲しくてたまらないものを当たり前のように持っていているのに……まるで、ゴミのように扱うその様が。
「わたしが言いてえのはたったひとつだ……てめえ、いつまでそうやって自分を傷つけてるつもりだ!!!!!」
「――」
結衣の叫びが、その場にいる全員の心の奥深くまで届いたのは……そこに、結衣の途方もない想いがあるからだった。
「……なんのことだ?」
まだとぼけるつもりでいる秋山に、結衣は鋭い視線を向ける。
「ここへ来た時、言ったろ? わたしは病院のベッドで眠ってたけど……たまに、外の声が聞こえてたんだよ」
「――!?」
結衣の言葉に、明らかに秋山の顔色が一瞬で変わった。
そこには、激しい動揺が見て取れた。
「てめえ、まさか……」
「ああ。全部聞こえてたぜ。わたしが眠るベッドにすがりついて、わんわん泣いて謝ってるお前の声がな」
「――!」
両目を見開く秋山と、いったい何のことだ? といぶかしむ不良少女たち。
秋山派の身体はかたかたと震え、それでも、結衣の言葉は止まらない。
「お前はわたしをハメたんじゃねー……」
「……やめろ」
「……お前は、佐藤を助けたんだ」
「やめろおおおおおおおおおお!」
結衣の告白に、秋山は悲痛な叫びをあげ、不良少女たちは驚愕に目を見開く。
佐藤――それは、「秋山が捕まった」と結衣に知らせにきた不良少女だ。
気の弱い少女で、たまたま友人だった不良少女に誘われ、このチームに入った。
いつも眼鏡をかけて目立たない雰囲気の子だが、とても容姿の整った子だった。
結衣の事故以来、いつの間にかチームから姿を消しており、その消息は不明。
噂では、結衣をハメるために利用された後、証拠隠滅のために秋山によって殺された可能性があるとまで言われていた。
……だが、真実は違った。
あの日……眠る自分へ向けて、泣きじゃくりながら謝っていた秋山。
そして後日、同じように眠る自分の病室を訪れ、全てを話していった少女――佐藤。
彼女は、罪悪感で苦しんでいたのだろう。
だから、届かないとわかっていても、眠る結衣に全てを打ち明け、謝らなければ気が済まなかった。
「秋山、お前は……」
「それ以上、言うんじゃねええええええええええええええええ!」
夜の倉庫群に、秋山の悲痛な叫びが木霊した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます