第13話 ようやく賄いを作らせてもらえたんで張り切ってつくってみた

 さて、俺は学校では球技大会の練習などをしながら普通に座学の授業や調理実習を行ないつつ、パラディーゾのバイトも頑張ってる。


「キャベツの千切り頼むなー」


「りょーかいですチーフ」


 ”ザンザンザンザン”と包丁を使ってキャベツを千切りにする。


 チーフにはなんにも言われないが、少なくとも使えないとは言われないので合格点はもらってるんだと思う。


「相田くん、カルパッチョ用の鯛をおろしておいてくれるかい」


「はい、オーナー了解です」


 鱗をウロコ取りでエラやヒレの近くも取り残しのないように丁寧に取っておろす。


「うん、安心して任せられるようになってきたね」


「ありがとうございます」


「うん、そろそろいいだろうし、今日は賄いを相田くんがつくってみてくれるかな?」


「俺が賄いをつくっていいんですか?!」


 オーナーがニッコリ微笑んでいった。


「うん、ずっと見習い作業ばかりさせているのも無駄なことだからね。

 十分な経験を得たと思ったらステップアップさせないと」


「ありがとうございます、頑張って賄いつくってみます」


 さて、営業時間も終わるころ賄いを作りはじめようとした俺はメニューを何にするか考える。


 賄いは店にある材料で安価なものを使って作るのが基本。


 そしてパスタは貧乏人の味方ということもあり基本パスタが賄いのメニューになることが多い。


「やっぱり一番最初に食ったあれかな」


 あれというのは”絶望のパスタ”ことアーリオ・オリオ・ペペロンチーノ。


 チーフの手打ちパスタはホントうまかった。


 今の俺がどれだけできるかわからないけどあれにまずチャレンジしてみよう。


「にんにくは……当然あるよな。

 鷹の爪もあるし、オリーブオイルにイタリアンパセリもあると。

 流石に梅昆布茶とかはないか」


 まずは大鍋でお湯を沸かして塩を加えて、最後に炒めたりする分パスタを気持ち短めに茹でる。


 フライパンにオリーブオイルを敷いて刻んだにんにく、唐辛子をいれて火をつけ弱火で加熱して、にんにくに熱が通って薄いきつね色になったら、刻んだイタリアンパセリと俺が飲むために持ち歩いている缶入りの梅昆布茶を少しだけ入れる。


 で茹であがったパスタとゆで汁をフライパンに入れ軽く炒めながらオリーブオイルを回し入れて全体に絡めたら見栄え良くパスタ皿に盛り付け軽く粉チーズを振った。


 オリーブオイルと唐辛子とガーリックの混ざる独特のいい香りが皿から立ち上る。


「できました!

 アーリオ・オリオ・ペペロンチーノです」


 オーナーが出来上がったものを見ながらいう。


「ふむ、単純な料理に見えるからこそなかなか難しいけど出来栄えはどうかな」


 そう言って箸で口にするオーナーの次の言葉をドキドキしながらまつ。


「うん、いいね。塩加減や茹で加減もバッチリだ」


 オーナーはそう言って笑う。


「ふむ、塩加減に隠し味で入れてる昆布茶も悪くないな、うまいぞ」


 チーフも笑いはしないけど褒めてくれた。


「でしょでしょー、やっぱり私の目に狂いはなかったわね」


 そう言ってホクホクの笑顔で食べてる桜田さん。


「はあ、旨いってもらえるってやっぱいいですね」


 オーナーがニコリと笑っていう。


「そういう感想をいただくために俺はこの店をやってきたんだ。

 冷凍食品を一切使わないやり方が古臭いって言われることも有ったがね」


 そこにチーフが言葉を挟んだ。


「父さん、高い金をだして食べてもらうのに冷凍を出すくらいならコックはいらないよ」


 俺はウンウンうなずきながら言った。


「オーナー、チーフ、俺もそのとおりだと思います!」


 オーナーはうなずく。


「これからもやり方を変えていくつもりはないし、よろしく頼むよ、相田くん。

 休みが合わないとか少ないとかでやめていく人も多い業界だけどね。

 ああそれと先月のバイト代」


 俺は給料の入った袋を受け取りながらオーナーに頭を下げた。


「はい、これからも俺がんばります!」


 俺がそういうと桜田さんも嬉しそうだった。


「そうそうがんばれがんばれ」


 俺は桜田さんにも改めて頭を下げた。


「本当紹介してくれてありがとうな」


 軽く手を振りながら桜田さんがいう。


「いいのよいいのよ」


 いい友達を持って俺は本当に幸せだぜ。

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