第12話 球技大会の練習は結構楽しかったな

 さて、調理専門学校の場合だと一般的な高校・大学や高専のような国語数学のような授業はない。


 だが親睦を深めるための一泊二日の合宿的オリエンテーションとか球技大会・体育祭・文化祭のような行事はある。


 調理専門学校らしい築地などのような市場の見学などもあるらしい。


 後は洋食コースだと2年目にイタリア語かフランス語など中華コースだと広東語などの授業もあったりする。


 そういった就職先だとオーダーも外国語で行うことがあるらしいので接客のために必要だしな。


 俺は製菓製パンの菓子職人(パティシエ)やパン職人ブーランジェのコースなのでそういうのはないはずだが。


 で、今度の週末に球技大会があるのだ。


 高校などと違ってそんなにクラスがいっぱいあるわけではないのでソフトボールやバレーボールを老若男女入り混じって行うのだが、調理師学校は下は中学校卒業の15歳から上は定年退職したサラリーマンなどの60歳代まで幅広い年齢層の学生がいる。


 また男女比は全体だと男7割、女3割位が平均的な男女比らしい。


 最近だと寿司は女は握れないとかいう事もなくなりつつはあるけどやはり調理は基本は男性社会なのだよな。


 和食のクラスは女性がほとんどいなくて製菓製パンコースは比較的女子比率が高いけど。


 球技大会の行われる場所は多摩川の河川敷の野球グラウンドでソフトボールを行ない、大田区総合体育館でバレーボールが行われる。


 大田区総合体育館は京急の蒲田駅から近くバレーボール・バスケットボール・テニス・バトミントン・卓球・フットサル・柔道・剣道などが出来る設備があり、プロレス・プロボクシング・プロバスケットなどの興行もたびたび開催されてる割と大きな施設だ。


「うーん、球技大会でソフトボールに参加すると、多摩川のグランドまでは結構遠いよな。

 体育館でバレーなら結構近いけど」


 俺がそういうと桜田さんが笑いながらいう。


「な~にじじむさいこと言ってるの、で何に参加するの?」


「俺はバレーボールかな」


「ふーん、じゃあたしもバレーにしようかな」


「バレーなら全身ホコリだらけにならなくて済むだろうしな」


「それもそうよね」


 この学校のクラスは定員30名で1年はごちゃまぜだけど、2年だと調理師免許を取れる調理師のクラスはフランス料理専攻コース・イタリア料理専攻コース・日本料理専攻コース・中国料理専攻コースがある。製菓衛生師免許も取れるパティシエクラスは洋菓子コース・和菓子コース・製パンコースに別れ、後は食品衛生責任者が取れる経営クラスもある。


 まあ、1年のうちはごちゃまぜだから今は桜田さんと一緒だけど来年は別々になるだろうなな。


 黒板に参加希望の球技の名前を書いていき、バレーへの参加者が多すぎる分は希望でソフトボールへ移動してもらい、ソフトボール9人の2チームとバレー6人の2チームとに分かれた。


 でチーム同士の顔合わせもするわけだ。


「じゃ、みんなで頑張ろうぜ」


「おっけー、任せておいてよ」


「了解、了解」


「んじゃ、どっかでみんなで練習しておかないか?」


「あーすまん今週はバイトで無理だ」


「俺は大丈夫だぜ」


 そんな感じで8人がなんとか集まれる日を見つけて、4人ずつで分かれて練習することにした。


 その日はみんなで動きやすい服を持ってきて体育館で練習だ。


「おーっし、じゃあまずは準備体操と軽くストレッチからやろうぜ」


 高校のときの昼休みにバレーとかしたのがなんか懐かしく思えるな。


 あんときは準備体操なんかしなかったけど。


 準備体操のあと軽くランニングをして体を温めてから、ボールをもってキャッチボールから始めた。

 ちなみに俺は桜田さんとコンビだ。


「桜田さん行くよー」


「だいじょうぶよー」


「ほいさ」


 俺が桜田さんへバレーボールを投げ、桜田さんが受け止める。


「えーい」


 そして桜田さんから俺へボールが投げ返され、白いバレーボールを投げ合う間に体もほぐれてきた気がする。


「よしじゃあグーパーでチーム分けしようぜ」


「ん、手っ取り早くそうしようか」


 俺がそういうと桜田さんがグーに握った手を指さして見せてきた。


 私はグーにするから一緒にしろってことかな?


「ぐーぱーえす」


「ぐっとぱーち」


「グッチッパ」


「ぐっぱでほい」


「グーとぱーで合わせましょ」


 俺はそれに乗ってグーを出し、様々な掛け声とともにグーとパーがだされて何度かやり直した後でチーム分けが決まった。


「んじゃ、みんなで頑張ろうぜ」


「練習の試合でも負けたくはないわね」


 そんな感じで適当に試合形式で練習を始めたのだった。


 サーブ・レシーブ・トス・アタックという普通にやればつながるはずのものが、そもそもサーブがうまく入らなかったりしてなかなかうまくつながらない。


「うーむ、バレーのサーブってこんなに入れづらかったっけ」


「ちょっとやらないと結構難しいものね」


 そして俺と桜田さんの間のボールを譲り合ってコートへ落としてしまった。


「ありゃ、桜田さんとお見合いしちゃったな」


「わ、私とお、お見合い?!」


 桜田さんがなんか赤くなりながらそういう。


「かと言って両方ボールに突っ込んでいってぶつかってもやばいしね」


「そ、そうよね」


「間に落ちそうだったらなるべく俺がボールを取りに行くよ」


「わかったわ」


 そう言ってもなかなかうまくいかない。


 今度は俺も桜田さんもボールを取りに行って肩と肩で衝突してしまった。


「あいたた、桜田さん大丈夫?」


 俺は先に立ち上がって桜田さんへ手を伸ばした


「だだだだだ、大丈夫!」


 そういって俺の手に捕まった桜田さんが起き上がり、そんなことをやっていたら相手コートから声をかけられた。


「おーい、お前ら公衆の面前だ。

 イチャイチャするなー」


 笑いながらチームメイトがそう声をかけてくる。


「いやいや、別にいちゃついてないけどな」


「そそそ、そうよねー、いちゃついてなんかないわよねー」


 そう言いつつ桜田さんはなんで真っ赤になってるんだろう?


 ま、最後の方はなんとか形になって練習としては十分な成果を得られたとおもう。


 球技大会当日も楽しみだな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る