第2話 貧乏人のパスタだって決してまずくないのだ
さて、今日も今日とて昼ごはんは自炊だ。
「パスタは貧乏人の味方ってな、いや本当に助かるけど」
スーパーで買ったディチェコのパスタを開け、鍋にたっぷりの水を入れてストーブに乗せてお湯を沸かしお湯リットル当り、塩を小さじ2とオリーブオイルを小さじ2を加える
塩は麺への味付けのためでオリーブオイルは茹でている時に麺同士がくっつきにくくなるからだな。
「ホイさっと」
お湯が沸騰したらパスタをねじりながら鍋底に押さえつける様に入れる。
こうすると鍋に均一に広がってくっつきにくくなる。
そうしたらタイマーで6分セットして、フライパンをストーブにかけオリーブオイルとつぶして芽を取ったにんにくを入れて弱火で炒め、十分馴染んだらにんにくを取り出し、フライパンを回すように動かしてオリーブオイルをフライパン全体になじませる。
「それから卵焼き……卵を割り入れると」
常温に戻した卵を2つ割り入れパスタの茹で汁をレードルに半分くらい入れ、片方は黄身が半熟な状態で皿に上げもうひとつはフタをして蒸し焼きにして完全に熱を通して木べらで、目玉焼きをザクザクとつぶす。
”ピピピピ”
「お、茹で上がったか」
茹で上がったパスタをパスタレードルでフライパンに移し、茹で汁をもう一度レードルに半分くらい入れて、強めの中火にかけながら一分ほどよくかき混ぜ火を止めて、粉チーズをたっぷりと振って、もう一度かき混ぜてなじませる。
「うおっしできた」
出来上がったら皿に盛り付けて、半熟の目玉焼きと塩コショウを適当にふりかければ”貧乏人の麺料理こと”スパゲッティ・デル・ポヴェレッロ”の出来上がりだ。
ほのかに立ち上がる湯気とチーズの香りはなかなか食欲をそそる。
そんなところに桜田さんがやって来た。
「やっほー差し入れだよー。
おや、なんか今日は珍しく美味しそうなものをつくってる?」
桜田さんがスパゲッティ・デル・ポヴェレッロを見てそんなこと言った。
「おう、珍しくは余計だけど余りの食材とか業務用スーパーの食材でもこんくらいは作れるんだぜ」
「へーいいなー、私も食べたーい」
「ん、桜田さんこれ食べたいのか?
じゃあちょっと食べてみる?」
俺はシュルシュルとフォークにパスタを巻いて桜田さんに差し出す。
「あ……えっ、えーー!?」
なんか桜田さんが真っ赤になってるが……。
「あー、大丈夫、まだ口つけてないからこれ」
「いやいや、っていうかナチュラルに食べたいって言ったからって差し出してくるとか。
そんな相手がいるの?」
「ああ、そうだね、前はいたよ。
今はいないけど」
「今はいないって、彼女と……別れたとか?」
あ、なにか勘違いされてるみたいだな。
「ははは、もちろん違うよ。
俺の家族は姉さん一人に妹が二人なんだけど、一番下の小学校の妹がテーブルでおんなじ物食べててもさ”いーなーおいしそー、ちょーだい”って言ってくるからよく食べさせたたんだよ。
なんだか他人の食べてるものって美味しそうに見えるみたいでさ。
俺が家から出るって言ったらないちゃって困ったよ」
桜田さんがホッとした表情でいう
「そ、そうなんだ、彼女じゃないんだね」
彼女だからって食べさせてあげるとか難易度激烈に高い気もするんだけど。
「うん、残念だけど彼女とかじゃないんだよね。
で、俺の父さん結構いい会社の部長だからさ。
”ケーキ屋なんて不安定な職に就くより大学を出て会社員になったほうがいい”
ってここの学校に入るの反対されたんだけど、父さんに姉さんが言ってくれたんだ。
”洋ちゃんの作る料理は美味しいから大丈夫だよ”ってさ。
で、けっきょくは父さんも渋々認めてくれたけど、仕送りは最低限だから結構きついんだよね。
けど、やりたいことのためだし限られた金で工夫するのも結構楽しいよ」
「うん、ならばこそ私の家のトラットリアで働いて修行するがよい」
「なんか偉そう」
「ふふふ、私は雇い主になるのだから当然だよ」
そういや桜田さんはお嬢様なんだよな、あんまりそういう感じはしないけど。
「うーむ、それもそうか、ブルジョアめ」
そういった後パクっとパスタを口にする桜田さん。
「ふーん、これ悪くないね。
卵とチーズとにんにくだけでも美味しくなるもんなんだね」
「ほんとはアンチョビがあればもっといいみたいだけどな。
あと粉チーズじゃなくて炒めたパン粉だったりもするらしいけど。
さて、フォークの予備はあったかな?」
「あー、なければさ、こうすればいいよ」
そう言ってフォークを洗う桜田さん。
「洗えば大丈夫でしょ、で今日のシフォンは何かな?」
「今日はブルーベリーシフォンだよ」
「お、なかなかいい選択だよ。
はい、今日の差し入れはメンチカツだよ。
じゃいただきます」
そう言っていつもどおり紅茶でシフォンケーキを食べ始める桜田さん。
「ん、ありがたくありがたく」
そして桜田さんが何気なくいう。
「バイトの面接だけど今度の日曜の14時半で大丈夫かな。
ランチタイムが終わったあとの時間だけど」
「あ、うん大丈夫。
日曜日の14時半だね。
服装とかどうすれんばいいんだろ?」
「私服で大丈夫だよ。
「ん、了解、じゃあよろしくおねがいします」
「こっちこそよろしくね」
面接の日時が決まったか。
ちょっとドキドキするけど合格できるように頑張らないとな。
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