第5話調理実習
高校3年生の時、クラスが何班かに分かれて調理実習が家庭科の授業であった。
僕の班は、男子ばっかりで一人一人好きな調理をする事に決まった。
女子は可愛くアップルパイを計画していた。
僕は、調理実習の前日、鮮魚店へ行きある魚を買って翌日、学校に持っていった。
僕は、アンコウを1尾袋から取り出して鮟鱇鍋を調理し始めた。
50cm位の小ぶりのアンコウの口角から包丁を入れ、皮を剥ぎ、あん肝、内臓、骨、魚肉とタッパに乗せていき、鹿児島の白味噌、砂糖で味付けし、豆腐、ネギ、を入れて煮た。
本来ならば、みんなにアンコウの吊るし切りを披露するつもりであったが、道具が無くまな板の上で出刃包丁で捌いた。
家庭科の教諭が、
「私は長年、調理実習を見てきましたが、アンコウを捌いて鮟鱇鍋を作った生徒を見た事がありません。羽弦君はどこで調理法を覚えたの?」
「えっ。『料理の鉄人』と、本です」
と、答えたら先生は鮟鱇鍋を食べた。
昼休みになると、自分の班以外のやつらも鮟鱇鍋を食べて、僕を『鉄人』と呼んだ。
大学受験が近くなる、寒い季節に鮟鱇鍋は身に染みた。
人生で、鮟鱇鍋を何回か食べたが、自分で作ったのはこの一回だけ。
アンコウは捌くのは簡単だが、調理する場所が広くないと太刀打ち出来ない魚だからだ。
教師の間では、僕の変人ぶりが噂になり、彼女のいずみに、久保田先生は、
「羽弦が彼氏なら、先生は許す」と、言ったらしい。
今の普通科の生徒で、鮟鱇鍋を作った猛者はいるのだろうか?
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