第34話 俺、病人なんだけど

 ほどなくして......


「それじゃー皆さん。おつかれー!!」


 打ち上げが始まった。(何の?)


 一人ベッドで横になる猫実好和を横目に......。

「あの〜俺...病人なんだけど......」


 アミ店長お手製の鍋、通称『猫鍋』をつつきながら、急遽秋多が買ってきたお酒を飲んで賑う一同。


 つい先ほどはハヤオンの織りなす魔女っ子ワールドに戸惑いを隠せなかった秋多も、急遽実現した美少女ネコ娘達との会合にテンションが上がらないはずがなかった。

 しかも今回は、以前の合コン時は不参加だった金髪ツインテネコ娘ナルと正統派美少女ネコ娘ハヤオンがいる。

 秋多の鼻息は荒くなる一方だった。(そもそも友の見舞いで来たという事を忘れて...)


「ハヤオンさんは休みの日は何をしてるんですか??」


「休みの日?えーと」


「ちょい待てや!ハヤオンのプライベートに関する質問はマネージャーのウチを通してもらわなアカンで!」


「えっ、そ、そうなんですか?」

「当たり前田のクラッカーや!」


「じゃ、じゃあハヤオンさんへの質問は...」

「ウチの審査が通ってからやな!ほな早速始めるか!」


「あの、始める?とは?」

「そんなん審査に決まっとるやろ!」


「は、はあ」

「ほな審査にあたってまずは申請料一万円お支払いいただくで!」


「か、金取られるんですか!?質問するだけで!?」

「当たり前田のあっちゃんや!」


「ま、ままままた店長が暴走している......」

 もずきゅんがアワアワしながら呟いた。


「...しかも自分で料理を振る舞ってから言うことで拒否しづらくしている」

 ナルが呆れたように言葉を重ねた。


「や、ややややめさせた方がいいよね?し、しししかも、猫実くんのお友達だし」

 心配を口にするもずきゅん。


「そうね。ワタシが言うわ」

 ナルが頷いて店長と秋多に割って入ろうとすると、金髪ツインテネコ娘はギョッとした。

 なんと、秋多が財布から一万円を出してアミ店長に渡そうとしていたからだ。

 

「やめとけよ秋多。いくらなんでもオカシイぞ」

 さすがに柴井は秋多を止めに入っていた。


「止めるな柴井。確かにこれはオカシイが、そういう店だと思えばどうってことはない」

 秋多は妙に男らしい顔で答えた。


「ちょっとあなたバカなの!?」

 ナルは思わず面罵する。


「さ、さささサイテーですっ!!」

 もずきゅんは非難の声を上げる。


「ホンマやで!サイテーやな!」

 便乗するアミ。


「アンタが言うな!!」

 ナルともずきゅんと柴井がユニゾンした。


 なんやかんやワイワイ盛り上がる一同。

 そんな中、ベットから青年の絞るような声がこぼれる。

「あ、あの〜俺、病人なんだけど......」

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