第3話 フライトレーダー
8月12日。
今日は
普通なら
しかし、今日は副機長が機長席に座って操縦するのだ。
機長は、久しぶりに右側の副機長席に座る。
自分も以前は、この席で副機長をしていたものだった。
今日、自分の代わりに機長席に座るのは、自分より10歳若い後輩だ。
DC-8では機長をしていた人物である。腕は確かであろう。
今回の機体は、B-747SR400である。
お盆前ということもあり、乗客は500人以上乗っている。
航空機関士はエンジニア部門の教官をしているベテラン。信頼できる。
チーフパーサーは男性。副機長と同い年だ。
その他に、スチュワーデスが11人乗り込む。
東京発大阪行き123便は離陸した。
伊丹空港には、1時間弱で到着する予定。
機長昇格訓練としては、適切な距離と航路である。
副機長の操縦による離陸に問題はない。
安定飛行に移行し、
離陸してから20分が経過したころ、機体後方から衝撃音が聞こえ、客室高度警報が鳴り始めた。
オートパイロットは解除され、手動操縦となる。
「なんか爆発したぞ」
エンジンを確認する。
しかし、4発とも問題ない。
次に、着陸用の車輪を調べる。
やはり、問題なかった。
しかし、実際に警報は鳴っている。
123便は、緊急救難信号「スコーク7700」を送信する。
「
そのとき、機体が大きく傾いた。
機長は副機長に言った。
「
「戻りません!」
副機長が答えた。
機体は傾いたままである。
その時、航空機関士は機体のある異常に気が付いた。
「
「全部だめ?」
「はい」
油圧が下がっているということは、フラップなどに動力を伝えることができないということ。フラップの上げ下げなどの動作が行えない。
昇降舵や補助翼も動かすことができない。つまり、操縦することができないということだ。
あと、原因不明であるが、客室の与圧が下がっているため酸素マスクが下りてきている状態である。
機体高度を下げなくてはいけない。
「
機長は副機長に指示する。
航空機関士も同意する。
副機長が復唱する。
「
機長は東京
「緊急事態発生。当機は羽田空港に戻ることを要求する。高度は22000フィート(6700m)まで降下し維持する」
『
操縦が極めて難しい状況だ。
伊豆大島のレーダーサイトを頼ることにした。
「レーダー誘導を要求する」
『右旋回するか? 左旋回するか?』
「右旋回」
『了解。進路を
こうして、当機は羽田空港に戻ることにした。
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