第2話 墜落
米軍横田基地から123便へ、着陸受け入れ可能との無線が送信される。
123便は横田基地に返信した。
『現在、操縦不能』
123便は、羽田空港に着陸するのか、それとも、位置的に近い横田基地に着陸するのか。
東京コントロールは、123便に意向を確認した。
「123便、羽田に着陸しますか?」
『このままでお願いします』
横田基地からの無線を傍受する。
『こちら横田基地、着陸可能。123便、聞こえていたら機体識別コード5432を発信せよ』
「了解しました。スタンバイ」
123便は横田基地に着陸するのであろうか。
しかし、数分後、123便は千葉県木更津のレーダーサイトによる誘導を要求してきた。
横田基地ではなく、羽田空港に着陸するのだろうか。
「了解しました。羽田空港、
『
「了解」
操縦不能のまま、羽田空港に緊急着陸しそうである。
羽田空港の滑走路では、緊急着陸に向けての態勢が整いつつあった。
東京コントロールの所在地は所沢である。
着陸時に必要な通信は、着陸先である羽田空港の管制と直接やり取りさせるべきだ。
羽田管制と123便との通信のために、専用の周波数を使わせた方が良いだろう。
「123便、周波数を119.7に変えてください」
2回呼びかけるも、123便からは応答がなかった。
横田基地も、123便に再度、機体識別コードの送信を呼びかけている。
一方、羽田空港の管制も、123便に呼びかけている。
『羽田空港、横田基地、両方とも
『了解しました』
羽田空港管制が、さらに123便と交信する。
『
我々もそれが知りたい。
123便はどちらに着陸するのだろうか。
しかし、123便からの返信はなかった。
18時56分。
123便はレーダーから消失した。
航空自衛隊は、茨城にある百里基地から偵察機2機を
一方、東京航空局東京空港事務所は、レーダーからの123便消失の報を受け、防衛庁、警察庁、消防庁、海上保安庁に通報し、捜索を開始した。
19時15分。
飛行中の米軍輸送機が、山中に大火災を発見し、航空自衛隊に通報する。
19時21分。
航空自衛隊の飛行機も、山中の火災を発見した。
百里基地では、災害派遣要請がまだ出ていなかったが、基地司令の判断で救難隊を出動させた。
この後、救助作業は難航する。
地上からの救助隊が到着したのは、墜落から11時間以上も後のことであった。
乗員乗客500名以上が死亡。
機長、副機長、航空機関士、客室乗務員等は全員死亡。
生存者は、乗客4名だけであった。
機長の娘は、自分の父の死の悲しみに打ちひしがれていたが、
その後、世間からの激しいバッシングを受けることとなった。
「500人殺して娘は生きているのか」
そんな声に苦しめられた。
父は最期の最期まで、乗員乗客を守るために頑張ったはず。
そう信じて、前向きに生きようと努力した。
後日、飛行機と共に落ちてきたフライトレコーダーが解析され、
墜落時に父が、どのような行動を取っていたのかが明らかになった。
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