第22話「買い物に行こう」
「こんなものでいいですね」
「よし! それじゃあ、行こうか」
「はい」
ーー放課後
園芸部に顔を出し部長さんと二人で簡単に植物達の世話をしてから優真と花が待つ校門前へと向かう。
因みに黒澤達が何か仕掛けてくる事はなかった。
「おっ、いたいた。おーい!」
俺は校門前に立っている優真と花に手を振る。
二人も俺に手を振って返してくれる。
「花ちゃん、お待たせです……何をそんなにジロジロ見てるんですか?」
花が俺と部長さんの事を色んな角度からめっちゃ見てくる。
引くくらい……。
「お、おい。なにやってんだよお前」
「いやなぁ……お前と萌、二人並んでると妙にしっくりくるなぁってな」
「はぁ? なにそれ?」
「お似合いって事だよ。やっぱりお前達くっついたらどうだ?」
さぞ、当り前の様に口走る花に同意するかの様に優真がうんうんと頷く。
「ば、ばか、お前ら、部長さんに失礼だろが」
「い、いえ、私はそんな、逆に黒木君に失礼が」
とまぁ、急に落とされた爆弾によってなぜか俺と部長さんはタジタジになる。
「もう、変なこと言わないでさっさと行くぞ! そのアウトレットまではどうやって行くんだ?」
このままではいかんと思い、話を変える。
「あぁ、ほら、あそこのバス停から30分に1本アウトレット直行のバスが出てるんだよ」
優真が指さす場所には、これからアウトレットに行くだろう生徒たちが列を成していた。
「それは便利だな。俺達も並ぼうぜ」
話をすり替える事に成功した俺は、3人を伴いバス停に並ぶ。
そんなに待たずに来たバスに揺られ俺達はアウトレットへと向かった。
◇
「よしっ! いくぞ野郎共!」
アウトレットに着くや否や、かなりハイテンションになっている花は勝手に知ったる何とかと言った様子で足早に先陣を切っている。
「張り切ってるなぁ、てか、もういなくなってるし!」
既に何処かの店舗に入ったのか花の姿はそこにはなかった。
「二人ともわりぃ! あいつ放って置くと歯止めが効かなくなるから俺ちょっと行ってくる! 萌ちゃん、悪いけど零の服見て貰ってもいいか?」
「はい、私で良ければ」
「一段落ついたら連絡してくれ。あぁ! もうなんか買ってるし!」
ホクホク顔の花の右手には既に紙袋が握られていた。
「お前も大変だな……」
「慣れっこだよ
」
鍋なんてもう要らないだろと文句を口にしながら花の元へと駆け寄っていく優真。
「さて、俺達もいきますか」
「部長さんも寄りたい店があったら遠慮なくいってくれよな」
「はい、分かりました。あの……」
部長さんが何か言いたげ俺の顔を見る。
「どうしたの?」
「部長さんって呼び方変えませんか?」
「イヤだった?」
「イヤと言う訳ではないのですが、花ちゃん達と比べて何か壁を感じて……まぁ、花ちゃん達と私とでは黒木君との付き合いの長さが違うので私の思い違いかも知れませんが……」
「うーん、じゃあ、俺も優真と同じく萌ちゃんって呼ばせて貰うよ」
呼び方を変えるくらいなんて事ない。
それで部長さんが喜んでくれるなら尚更だ。
「はい! では、私達も行きましょう!」
それから俺は萌ちゃんと一緒にいくつかの店舗を周った。流行りのはの字も分からない俺は全て萌ちゃんチョイスで服を購入していった。
気が付くと既に日が暮れ、辺り一面が真っ暗になっていた。
一通り目的の物を買い揃えた俺は萌ちゃんとカフェタイムを取っていた。
「結構買ったなぁ」
「全部私が決めちゃって良かったのでしょうか?」
「うん、全部気に入ったから買ったんだよ。俺、服には無頓着だから助かったよ。ありがとうね」
「へへへ、それならよかったです」
はにかむ萌ちゃんと他愛もない話を交えている俺の視界にある人物が写り込む。
両手一杯にショッピングバッグを持った小夜子だった。小夜子は俺の姿に気付き明らかに不機嫌な表情を向けるがそんな事は気にしない。
「よっ、小夜子! お前も買い物か?」
「馴れ馴れしいぞ貴様ッ」
「こんばんは小夜ちゃん」
「なっ、萌! なんでお前がこんな変態と一緒にいるんだ!?」
もう、こいつからの変態呼ばわりは気にならなくなった。
「萌ちゃん、小夜子の事しってるん?」
「はい、幼稚舎の頃から一緒ですから。小夜ちゃん、黒木君は変態じゃないですよ。凄く紳士で素敵な殿方です」
萌ちゃんから称賛の声が。
嬉しい限りだ。
「そんな事はないこいつはーー」
小夜子が萌に反論しようとしたその時だった。
「お待たせ小夜子……へっ?」
小夜子が居るのだからと淡い期待をしていたのだがら、どうやらビンゴの様だ。
俺達の姿が写り込んだ霞住の双眸が驚きからか大きく開かれる。
「わかちゃん……」
「……萌」
先程の小夜子とは違う萌ちゃんの反応に、この二人の間には何かがあると自然と思わせられる。
漂う重苦しい雰囲気に俺は傍観するしかなかった。
「……行きましょう小夜子」
「はい、お嬢様」
踵を返す霞住。
そんな霞住の背に向けて萌ちゃんが言い放つ。
「私、気にしていないですから! 私、昔みたいにわかちゃんと!」
萌ちゃんの言葉に霞住は一瞬足を止めるのだが、返事をする事なくすぐさま再び歩き出した。
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いつも読んでいただき、ありがとうございます。
更新が遅れてすみません。
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