NEEDY GIRL OVERDOSE 櫛森あれん

@Talkstand_bungeibu

NEEDY GIRL OVERDOSE

一度でも他者のぬくもりを知ってしまうと、決して孤独に戻ることはできない。

それはたとえるなら、自ら糸つむぎの針に指を刺す痛みを味わいたいと思うものがいないのと同じである。


「あたし、処女すててくる」

そう言って放課後の教室を飛び出した次の日、貴女は登校してこなかった。それどころか家にすらいなかったし、なんならすでにこの世にもいなかった。どこまで飛び出していくんだよ、なんて不謹慎なツッコミを入れてしまうほど、呆気なく貴女は死んでしまった。

あたしは貴女のそんなアホなところを愛していたし、なんならずぅっと一緒にいるものだと信じきっていた。十年、二十年、四半世紀、三十年、四十年、半世紀…、ずぅっと。よぼよぼのババアになっても、きっとこいつアホだと思いながら過ごすんだと思っていたし、たぶんどっかの並行世界とかではそうなってると信じている。

あたしは、貴女という半身を失ったせいで、身体が半分壊死したみたいに動かない、何も感じない、そんな謎の症状を背負う羽目になった。半分死んで、半分生きてる。ある意味、ハーフだよねと、また不謹慎ジョーク。

なんやかんや、貴女がいなくなって、たった十日で嫌になった。何がって? 全部が。

半分生きていることも、半分死んでいることも、夜眠ると毎回貴女のことを夢に見るのも、朝ご飯がハムエッグトーストなのも、全部、嫌になってしまった。

貴女も知っていたと思うけど、あたし、ともだちが貴女しかいなかったの。三十人弱が押し込まれた四角い箱の中、知らない人間ばかりなのはこたえるわ。

孤独は毒薬、猛毒だわ。つらくてしんどくて、何してなくても涙が出てきて吐きそうになる。神経にまで達するんだから、致命的よね。

もういいかしら?

まだだめかしら?

そう思いながら、あと何年過ごすのかしら。

あたしは今日も貴女のいない教室で孤独に過ごすの。貴女って、常用してると中毒になるのね。やばい薬みたい。

また貴女と話したいし、触れ合って笑いたい。

悲しみは毒、貴女に中毒、あたしはバカみたいな痛い女。病んで病んで、いづれ死ぬのかな?

貴女が恋しい。


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