第9話 真実の可能性
あの貴族の家を苦労して辞した後、アシェの奴がギルドのサブマスターのナキホクロンが怪しいと言い出した。確かに内部犯の疑いは強かった。だが事件から間もない段階でギルドの誰にもその痕跡がなかったのだ。だからこそ外部にまで手を広げて考えようと俺はした。
「アニードさん、ギルドに行きましょう。返り血を浴びなかった方法も仮説ができました。それも調べたいですが、胸騒ぎがします。取り返しのつかない事態になっていなければいいのですが」
アシェはそう俺に言うと急ぎ足になった。置いて行かれそうになり慌てて俺も追いかける。そんなに慌てる事態なのか。何を急ぐんだ。
そもそもだ。そのナキホクロンがナイフの鑑定を貴族から請け負っただけで犯人扱いできるわけない。そのナイフが使われたことすらまだ確定していねぇんだ。
「僕達が持ち込んだ呪いです。何故か先ほどから嫌な予感がするのです。何か起きているのかも」
詳しく聞くと、ナキホクロンが宝石の呪いを受けているはずという。
呪いを受けた奴は人が変わったように宝石を守ろうとするそうだ。最初はショーラがやられたことは前に聞いた。僅かな手がかりだがナキホクロンが鑑定士ハムエーンを殺した犯人の可能性もあるという。
俺達を犠牲にして貴族の相手をさせている間にアシェは執事から話を聞いていた。その時にナキホクロンが怪しいと思ったようだ。
しかし俺とは頭の回り方が違うアシェでもナキホクロンを問い詰められるほどには絞り込めてないようだ。可能性を潰して回るほど時間が無いからまずは急げという。
やれやれ、今日の酒は旨いか不味いか。どっちになるのか。ため息が出るぜ。
「アニードさん、私は先に行くわね。急ぐなら私が一番早いわ。アシェが何か起きるかもって言うなら急がなきゃ」
ショーラが走りながら消えていった。おいおい、隠密を使ってギルドに入るつもりかよ。町中でのスキル使用を見逃さなきゃならない俺の気持ちを考えろや。
「ちったぁ鍛えたらどうだい。先に行くぜ」
ケッタまでもがショーラを追いかけて行っちまった。鉄製の胸当てに長剣ぶら下げて何であんなに速いんだ。
「急ぎましょう。二人が暴走しないか心配です」
そっちかよ。
それで何があるんだ、そして放っておくとどうなりそうなんだ。俺はそうアシェに聞いた。
「まだ分かりません。ですが、誰かがナキホクロンさんに手を出したら」
出したら?
「死人が出るかも知れません。手にしている呪いの宝石を護るために」
尋常じゃない。俺も走ることにした。
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